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5品目:這いよる混沌鍋

小説を閲覧いただきありがとうございます。

感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。

どうぞよろしくお願いします。

 「さぁて、ステータスでも確認しておこうかなぁ。……いい加減、現実を見よう」


 ここVR内だけどね!

 ごちそうにありつく前に、私はステータス画面を開いた。

あえて、見ないふりをしてきたけど、いつかは見ないといけない。だったら、楽しみの前にさっさと終わらせたほうがいい。

 私はくぅーねるのステータス画面を起動した。


---------------------------------------------------------------------

キャラネーム:くぅーねる(女)

種族:イーターマン【Eaterman】

ステータス一覧

LV:1

JB:調理人(見習い)

HP:3

MP:2

SP:5

STM:∞

STR:3

VIT:1

DEX:5

INT:2

メインスキル一覧:★食べるLv1 ★無限の胃袋Lv1

---------------------------------------------------------------------


「さ、さんって……。3? 30とかの間違いだったりしない?」


 私はHPの少なさに思わず絶句する。これじゃ、3発喰らったらアウトだ。

 しかも被ダメが1っていう計算だし。3以上だと即死です、本当に。

 ちなみに★付きのスキルは種族限定スキルで、メインスキルからはずすことは出来ない。


「落ち着けよ、私。戦闘プレイしていくわけじゃないんだ……はぁ。

よーしよし、おちつけー目指せ非戦闘プレイ、ひっ・せん・とうっ・ぷれいっ!! 

……はぁ」


 私だって何も対策を考えていないわけじゃない。不安要素ばっかりだけど!

 これでも過去作経験者。めちゃめちゃ安全プレイしかしてなかったけど!

 色々やり方は考えてる。……と思う。やばい、自信なくなってきた。

 

「はい。おまたせ! 朝ごはんにしましょう」


 私が混乱している間に、朝食の準備が出来たようだ。

 お母さんが大鍋を両手で抱えている。

 大鍋が豪快にテーブルの真ん中へと置かれた。お父さんが朝刊を脇において、テーブルを見る。


「おお鍋か! 今日は朝から豪華だね、母さん」

「ふふ。店に出す新作を思いついちゃって」


 お母さんの言葉に、私もお父さんも目の前の新作とやらに釘づけになる。


「それは楽しみだ。どれ、店の料理長としてしっかりと味見しないとな」

「お父さんもくぅーねるも冷めないうちに召し上がれ」

「じゃあ食べようか、くぅーねる」

「うん。いただきます」

「いただきます」


 両手を合わせて仲良く合掌すると、お母さんが鍋のふたをあけた。


「題して、『這いよる混沌鍋』よ」

「「おおー」」


 私もお父さんも鍋の中身を覗き込み、歓声を上げた。

 そこには何もなかった。そういうと語弊があるかもしれない。でも何もなかったのだ。

 鍋の中は、黒い水面が泡をぷくぷくと浮かべるだけで、

鍋の具らしきものは見当たらない。


「闇鍋っていう料理があるんだけど」


 お母さんの説明に、お父さんがごくりと息を飲む。


「あのスリッパとちくわが一緒の鍋に入るという伝説の料理のことかい、母さん」


 いや、流石にスリッパは入らないんじゃ……。

せいぜい入っても、ちくわとポッキー(袋ごと)じゃないかな?


「流石父さんね! そう、その闇鍋を私なりにアレンジしてみたのよ」

「なるほど……だけど、母さん。

鍋のスープは確かに真っ黒で雰囲気が出てると思う。しかし、肝心の具はどこに行ったんだい?」

「それは、これで確かめてちょうだい」


 そういってお母さんは、お玉をお父さんと私に差し出す。

すくってみろということらしい。


『>ミニゲーム「混沌から救え」が発生しました。説明を聞きますか?』


 え? ええ!? イベント?

 あーそっか。そういえばゲームしてる最中なんだっけ。この家族に溶け込んでて、ここがゲームだってことをすっかり忘れてたよ。あはは。

 えっと、説明は初回だし聞いておこうかな。「はい」を選択っと。


『>鍋に食材アイコンが表示されるので、タイミングよくお玉ですくってください。

上手くいくと、美味しいものがすくえます。失敗すると……?』


 失敗するとどうなるの!? と聞こうとして、そこで説明は途切れてしまった。

 3、2、1のカウントダウンでミニゲーム「混沌から救え」が開始した。


「ほいっと。うりゃっと、そりゃっと」


 調子よく掛け声を出しているように見えるかもしれないが、実は結果はさんざん。

 なんか△とか×が表示される。これはもしかしなくても……失敗?


「あら、ちゃんとすくえたのね!」


 お母さんの声で、ミニゲームが終了する。お皿には山盛りの鍋の具が盛られた。

 私がきちんと鍋をすくえたのを見て、お母さんがお褒めの言葉を送ってきた。

 見た感じ、特に変な物はない。もしかしてセーフだったのかな?


「それじゃあ、「「「いただきます!」」」


 お母さんも席に着いて、3人仲良く朝食に手を伸ばす。


「どんどん食べてね!

残さず食べたら、ご褒美にバターフライスティックをプレゼント~」


 バターフライスティックきたーーーーーーっ!!!

 私はその場で立ち上がり、万歳をしたい衝動をぐっと堪えてフォークを動かす。

 もうこれは絶対に完食するしかない!!

 まずは、楕円形の物体に手を付ける。すっかり黒いスープを吸ってしまっているが、かすかに天ぷらの衣の部分が残っていた。思い切ってがぶりとかぶりつく。


「……いも天?」


 ほこほこしたサツマイモの甘味が口に広がる。

咀嚼し2口目を口にいれるがやっぱり、いも天だ。


「くぅーねるあったり~! 昨日の夜ご飯のあまりを入れてみたわ!」


 あ、そうなんだ。鍋に天ぷらが入るなんてどうかしてるけど、ちゃんとした食べ物が入っていたのでほっと胸を撫で下ろす。鍋の具じゃなくて、単品で食べたかったけどね!

 お父さんが当たった物は、昆布だった。えっと、鍋のダシかな? ツッコミに困るけど、こちらも食べれるもので良かった。

 だが、安心するにはまだ早い。皿の中にはあと6つ具材が残っているのだから。

 お次はこぶし大サイズの丸っこい塊が出てきた。じゃがいも?

私はためらいもせず、塊にがぶりとかじりついた。


「硬っ!!」


 ガキンと音がしそうなくらい硬い……何これ? 口の中でもごもごと動かしながら舌で転がす。

 徐々に溶けて小さくなる塊。すごーーーく硬い飴?


「あら、ミスリルに当たったのね! どう? スープが染みこんでいて食べやすいでしょ?」


 そっかミスリルだったんだね、うんスープが染みててちょうど…………ってミスリル!?

 え? え? ミスリルってあれでしょ。

ミスリルソードだとかメイルだとかの……あのミスリル?

 私が戸惑っていると、お父さんが悔しそうな顔で私を見つめた。


「なんだなんだ。くぅーねるばっかり当たりでお父さん悔しいなぁ。

お父さんなんてなぁ……ただのクリスタルだぞっ!?」


 ただのクリスタルって、だからなんで鍋にクリスタルが入るのよ……。


「ちなみにお母さんはダマスカスなのよーうふふ。お父さんってば本当に運がないわね」


 だ、か、ら! な、ん、で、鍋に鉱物が入ってるの?

 そしてナチュラルに食べてるよこの夫婦。

 いや、私も咀嚼しちゃったりしてるけどっ!!

 平気で鉱物をぺろっと食べちゃうあたり、さすがイーターマンだ。

 ……私もだけどっ!!


「な、なんだって!? 母さんまでずるいぞ!!

ダマスカスは父さんの好物なのにっ!!」


 お父さんはとても悔しそうにがっくりとうなだれてしまった。

 鉱物が好物って……お父さん寒すぎますよ。さすがイーターマン(2回目)。

 うなだれていたお父さんだったが仕切り直すように、新たな獲物を皿から物色する。


「ほほう。この形状……イカリングとみたぞ」


 お父さんは輪っかのような物を摘み上げ、しげしげと見つめながらそう言った。

 確かに、形も大きさもイカリングっぽい。いも天が入っていたんだからイカリングが入っていても不思議はないね。食べ物以外って可能性もあるけど。

 私も自分の皿を見つめ、四角いさつま揚げっぽいものをチョイスし、口に運ぶ。

 お父さんもイカリング(仮)にかぶりつく。


「今度は何が当たったの?」

「「……甘い」」


 そのままお互いもぐもぐと咀嚼。食べ物だったのはありがたいけど、これって……。


「ドーナッツ」

「クッキー」

「あら嫌だ」


 お母さんは「おやつに食べるお菓子を間違って入れちゃったわー」とあたふたしている。私とお父さんは黙って消化作業を進めた。

 これも美味しいんだけど……出来れば単品で頂きたい代物だった。

 そのあとは、ところてん、チーズ入りちくわ、沢庵が当たった。

 どれも鍋の具とは微妙にずれていて、惜しいというかなんというか……。

 お父さんのほうも似たような感じだった。お母さんは割愛。

 そして残る最後の1つは……。


 もぞ……もぞぞ。


 な、なんか動いてる!?

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