57品目:襲撃のむすめ3―Attack to the rice ball―
小説を閲覧いただきありがとうございます。
感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。
どうぞよろしくお願いします。
「シャルルさん!!」
私たちは必死にシャルルさんに連絡を取ろうとメッセージを飛ばすが、
一向に繋がらない。幸い死んではいないようだが。
今まさに敵と交戦中で返信も出来ないほど、激戦を繰り広げてるのだろうか
と嫌な想像ばかりが膨らむ。
シャルルさん…………どうしよう。どうすれば。
「はぁ。らしくないわね、くぅーねる」
「アリア……」
黙って見ていたアリアが口を開く。
「しゃんとしなさい。あの女の娘がそんなんでどうするのよ」
「そうは言っても、どうすればいいっていうの?」
「どうするもこうするもないわ」
無責任なアリアの発言に私はアリアを睨み付ける。
しかし、アリアは私の怒りをまっすぐに受け止める。その顔はすごく真剣だ。
「貴方は食べることだけ考えてなさい」
そう言ってアリアは私の身体を抱き上げる。
あ、抱き上げるって言っても、姫抱っことかそーいうのではないよ。
米袋を担ぎあげる感じで持ち上げられました。ええ。
それよりも、アリア。私を持ち上げて一体何がしたいの?
「さ、ご主人。命令しなさいよ。私は貴方の召還ペットで貴方はご主人」
「命令って……何を命令すればいいのさ」
戸惑う私にアリアは眉間に皺を寄せた。
あーこいつ本当に察し悪いなーって顔だ。悪かったね、察し悪くて。
「全く本当にしょうがないわね!
いい? 私に一言おにぎりまで連れてけと言えばいいのよ! さぁ、早く!!」
「はいっっ!! わ、分かりました! おにぎりまで連れて行って! アリア」
「それでよし」
アリアに脅され、半ば強制的に言わされる形でアリアに命令を出す。
出したのはいいけど、どうするつもりなの?
心配する私を余所に、アリアは満面の笑みを浮かべたまま、クロードさんとシトリンさんの方を向く。
「ということで、そこのエルフとハーフのエルフ。
ダークエルフの小娘はくぅーねるにまかせなさい。
貴方たちはここを死守して各地区の守りにでも専念してなさい」
一方的にそれだけ告げると、アリアは私を抱きかかえたまま、猛スピードで城壁を走り出した。
「ちょ、まっ!! アリ、アッーーーー!!」
「黙ってないと、舌を噛むわよ!!」
そんな無慈悲な……。あ、遠くでクロードさんが引き留める声が聞こえるけど、ごめんなさい!
アリアを止めるのは無理です。非力な私を許せ。
ガンデカイワ亜種(普通の奴よりずっと早くてしつこい奴)とのカーチェイスで
鍛えたアリアの健脚が唸る。周りの景色を置き去りにして、どんどん前へと進んでいく。
目指す方向は赤の区画方面、シャルルさんがいる方だ。
私はアリアにしがみつき、必死に声を張り上げた。
「ちょ! アリア!? 赤の区画に行くなら転送陣がっ!!」
「ここから走っていって勢いでもつけないと、あのおにぎりには届かないのよっ!!」
じゃあどうやってあそこまでいくのか。
まさかとは思うけど、あそこに飛び移る気!?
無茶だって! シャルルさんみたいに飛び道具もないんだよ!?
「ふん。ダークエルフの小娘を見てひらめいたのは癪だけど。
私にだって、あれくらい余裕よ。見てなさいっ!!」
一番おにぎりに近い城壁付近にちょうどよさそうなでっぱりがある。
アリアはあそこから勢いをつけてジャンプして、おにぎりに乗り込む気らしい。
この速度じゃあもうアリアを止められない。
「頼むよ、アリア!!」
「ふん。行くわよ!! 『集え! 我が眷属!!』」
でっぱりから身を投げるように高くアリアが飛び上がった。
魔力を帯びた言葉と共にアリアは植物の種子をおにぎりに向かって放つ。
おにぎりに種子が食い込む。その種子はアリアの魔力を吸い取り急成長した。
おにぎりの一角に巨大な花が咲く。その花から植物の蔦が伸びて、アリアの方へと伸びる。
「もう少しっ!! 届きなさいよぉおおおーーーー!!」
アリアの方からも蔦を伸ばす。蔦と蔦が絡まって即席の長い命綱が完成した。
そのまま、おにぎりの方へひっぱられる私たち。
「お、おい! あいつらおにぎりに直に殴り込んでいったぞ!!」
「あの大食いのお嬢ちゃんだ!! はは! さすがだな! 待ち切れずに食いに行きやがった!!」
「私たちも負けてられないわね。さぁ、おにぎりを蹴散らしましょう!!」
遥か下の方で奮戦しているプレイヤーたちから歓声が上がる。
いいぞ! 頑張ってこい!! 今の技もう1回やって!!!
そんな応援まで飛んできた。
嬉しいけど、こんな命がけの空中ブランコは二度とごめんだわ。
「さ、さぁ。付いたわよ。くぅーねる」
「うん。ありがとう。アリア」
勢いよく花へダイブした。アリアが私を地面に下ろす。
ようやくおにぎりへと乗り込めたか。いやー地面に足が付くって大事だね。
花は私たちを受けとめたあと、萎れて枯れてしまった。
君たちもありがとね、名もない花さん。
「わー、見事に米だー」
「そりゃあ、私たちおにぎりの上にいるんだもの」
さっき足が地面にって言ったけど訂正。
周囲に広がる真っ白な雪原にも見えるこの物体。その正体はお米だ。
私たち今、ごはんの上に立ってる。しかも炊き立てほかほかだ。
辺りにはうっすらと湯気がかかり、熱い。
「これ、全部食べていいんだよね? アリア」
ちょっと、イベントが大掛かりになりすぎて忘れてそうだが、
これ大食い大会なんだよね。つまり、辺り一面の米を食い尽くしてもいいってことだ。なんて至福!! ご褒美!!
「いいけど。全部食べたら私たち下に落ちるわね。あのシャルとかっていう子も」
「あ……」
そうだよ。全部食べたら真っ逆さまじゃん!!
つまり何、あれか!? 適度な足場だけ残せってこと!?
大食いに来て、食べ物を残すとか屈辱的すぎるっ!! 許せませんな!!
「アリア―、何とかならない?」
即席空中ブランコが出来たアリア先生なら、何かいい方法が思いつくのでは?
「貴方ね……。
うーん。さっきの花を改良して、クッションみたいにするとかかしら……」
「よし、それでいこう!!」
「ちょ! 安全は保障しないわよ!?」
いやーさすがアリア先生だー。これで懸念材料はなくなったね!
いざ、実食ーーーー!!
「はぁ。シャルって子の安否確認。忘れないでよね」
食べるを発動させて辺りの米をえぐる私にアリアはそう忠告する。
「あ、う、うん。もちろん確認するよ」
いやだなぁ。忘れてたわけじゃないよ。あははは。
「忘れてたのね」
はて、なんのことでとしょうか。あはは。あはははー……。
***
くぅーねるたちがおにぎりに突撃した頃。青の区画にてある変化が起きていた。
クロードいわく、広範囲攻撃の使える魔法使い系ジョブがいないため、不利に陥りやすいと睨んでいた場所だ。
彼の予想通り、現地のプレイヤーたちは徐々におにぎりたちに押されていた。
「聞いたか!? 例の大食いっ娘がおにぎりに侵入したって!!」
「そうみたいでござるな。いやはや、食い意地だけでなく肝っ玉も据わってるとは恐れいったでござる」
「そのお嬢ちゃんにためにも、負けられないんだけど。
うちらじゃあ、ちょっと厳しい状況ねぇ」
なんで戦士系ばっかで集まっちゃったんだろう。
その場にいる全員が口には出さないが表情がそう物語っていた。
「高レベルフィールドボス用のメンツだもんなぁ。集団戦には不向き過ぎる」
「唯一の例外といえば、あいつでござるな」
ござる口調の侍が向けた視線の先にはローブを身にまとった青年がいた。
銀髪に赤い目をした魔導士っぽい格好の青年である。
少々幼さの残る顔立ちにモノクルを掛け、優等生という印象を周囲に与えていた。
腰には盾に使えそうな大きくて分厚い書物をぶら下げている。
彼は1人で爆弾やアイテムを駆使して、難なく戦闘をしている。
「謎の凄腕ソロプレイヤーか。プレイスタイルは……錬金術師、か? 初めてみるが……」
「錬金術師って、公式が生産と戦闘が両立できるってジョブだって言ってるやつでしょ?」
「けど、実際はどっちつかずで外れジョブでござる」
「なんだって、いいさ。今注目すべきはあいつが使ってる爆弾。
あれを量産してもらって、全員で蹴散らせばいいんじゃないか?」
「なるほど。広範囲魔法の代わりってわけね。よし、交渉してみましょう」
戦士組がそのような話をしている頃、噂になってる錬金術師の青年は目の前の敵にうんざりしていた。
「はぁ。数ばかりでつまらん」
数が多いだけで歯ごたえがなさすぎる。
爆弾を投げて処理しているが、もはや作業ゲームとなり果てていた。
彼のレベルを考えると、仕方がないのかもしれない。
実際、その数値を知ればどうしてここにいるの? と首を傾げられるほど高レベルのプレイヤーだった。
そんな彼がなぜ、ここにいるのかといえば。
「あの男が、予定していたダンジョン攻略を断ってまで関わろうとする
プレイヤー。そいつがこのイベントに参加してると聞きつけたんだが、
見つからないな」
どうやら、探し人がいるらしい。
「珍しい種族。ピンク。大食い。これだけで探すなんて無茶だろう。
しかし、あいつは意地でも名前を割らなかったし、くそ……」
確かにピンクの髪色のアバターは結構いるし、珍しい種族だっている。
大食いも、まぁ食べる人は食べるだろう。
1人。ものすごく当てはまりそうな我らがイーターマンがいるのだが、
気のせいだ。
「大体、どれも情報をぼかし過ぎじゃないのか。種族なら、ヒューマンならヒューマンと答えろよ。なんだ珍しい種族って!!
しまいにはピンクで大食いだと!? ふざっけんな!!!」
青年は八つ当たり気味に周囲のおにぎりを焼き払う。
「……帰ったら覚えてろよ。ルゥリヒト」
「おおーい」
青年の周りにおにぎりがなくなったところで、さきほどの戦士パーティーの男がやってくる。
「ん? なんだアンタは」
「アンタ、錬金術師だろう? 生産はできるよな?」
そうだが、どうかしたかと尋ねる青年に男はさっそく爆弾作成の依頼を持ちかける。青年はめんどくさそうに渋るが、男は頼むっ!! と頭を下げた。
「なんだって、そこまで俺に頼むんだ」
こんなつまらないイベント。むしろ早く終わってほしいと青年思っている。
「大食いのお嬢ちゃんの勇士を無駄にしたくねぇんだ」
「……『大食い』だと?」
思いもよらない単語に、青年は思わず男に聞き返していた。
(もしかしたら、例のプレイヤーかもしれない)
思わぬ朗報に青年は口の端を持ち上げる。
男は青年が乗り気になったと勘違いし、必死に交渉を続けた。
このままだとこの区画が危ないこと。
ピンクの大食い少女が決死の覚悟でおにぎりに殴り込んでいるのに、
自分たちはここを守るしかないこと。
守るしかないのに力不足でここが制圧されそうになっていること。
(ピンク。大食い。2つはクリアしてる……)
「頼むよ。俺たちのせいでイベント失敗にはしたくないんだ!!」
「貴方の爆弾があれば、私たちも広範囲でおにぎりを殲滅できるわ!!」
「この通り、お願いするでござる!!」
(残りは種族か……)
「なぁ。1つ聞きたいんだが、大食いでピンクのプレイヤーの種族ってなんだ?」
「へ!? それと、依頼となんの関係が?」
「ぜひ知りたい。知っていたら教えてくれ。依頼なら、ほら。これを持っていけ」
青年はおもむろにポーチから大量の爆弾を取り出し、地面にばらまく。
「これだけあれば足りるか?」
「じゅ、十分すぎるぜ……」
「で、例のプレイヤーの種族は?」
「種族か……それが分からないんだよなぁ」
わからない? どういうことかと青年は問い詰める。
「よく考えてみると、謎なのよねあの娘。見た目で勝手に獣人かドワーフって勘違いしてたけど」
「確かに。獣人も良く食べるでござるが、あの量はすこし異常かもしれぬな。
もしや、あのウサギ耳は装飾品か何かではないでござろうか?」
「え、じゃあ耳をとると……幼女ってことになるけど。そんな小さい種族って……ドワーフ?」
「「「ううーん」」」
脳筋戦士たちが必死に悩んでいるところ悪いが、錬金術師の青年は実にスマートな思考で彼らの情報を整理し1つにまとめていた。
(幼女……つまり幼い体格ということか、それで大食い。
しかし、ドワーフは別に珍しい種族ではないな。残るは……)
しばらく考えて、青年はああ、そうかと答えを導いてしまった。
(イーターマン【Eaterman】だ)
『>皆のシステム音ちゃんだおん! 久々の投稿だから忘れられてないか作者は不安だとか言ってるおん。自業自得おんおん。おんちゃんも久々の登場なのおん。最近、アリアに出番とられてイジけてるとか、そ、そんなんじゃないんだからねっ!! ……なんだおん!!」




