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40品目:南瓜公園の探索完了

小説を閲覧いただきありがとうございます。

感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。

どうぞよろしくお願いします。

 ショックから立ち直った私は色々と気になったことを聞いてみた。

 なんで不遇職と言われる写真家にしたのかとか。

 わざわざカメラを剣の形状にしたのかとか。

 写真家を選んだのは「え? リアルの趣味だからだけど?」と普通の回答が返ってきた。

 剣の形状にしたのは、「見た目で勘違いされた方が都合がいいから」らしい。


「前にプレイしてたゲームで不遇職に絡んでくるウザい奴らがいてさ。

 ああいうのは、もううんざりだから、そういった人たち避けってわけ」


 人間、良くも悪くも見た目が第一印象だからねとルゥリヒトは苦笑した。

 私も他人事じゃないな。これから中央に行った時に、不遇種族イーターマンだ

なんて知られたら、どんな厄介事に巻き込まれることやら。

 ルゥリヒトみたいに、今のうちから何か対策を考えとこう。


「失礼。私も話に加わってもよろしいですか?」

「ん? ああ、いいよ」


 武器の形状に関して、何やらマイルさんが興味を持ったようだ。

私たちの雑談の輪に加わってくる。学者魂が騒いだか。

 じっとルゥリヒトの剣を見つめると、マイルさんが口を開く。


「これは……中央の外装装備の技術を使っているんですね。

 でも、剣として機能しているようにも見受けられます。

 外装装備そのものに殺傷力はなかったはずですが?」


 外装? ああ、見た目装備のことか。武器にかぶせて使用するすると、

その武器の見た目だけを変化させてくれるっていう。

 たとえば、「ピコピコハンマー」という外装装備があって、

それをバトルハンマーに合成してやると見た目はピコピコハンマー、

性能はバトルハンマーその名も「凶悪なピコピコハンマー」的な武器が完成する。

 ただ、マイルさんの言う通り、外装装備はあくまで見た目を変化させるだけなので、

剣の外装を杖に着けても、杖で物が切れるようにはならない。


「本物の剣も合成してあるよ。それで最低限の斬撃能力を与えてやって、

あとは斬撃系のスキルと合わせればいいってわけ」


 ……えっと、普通の剣+カメラ+外装の剣で、ルゥリヒトの武器になるの?

 普通の剣+カメラの工程が気になるんだけど。どうやってくっ付けたのさ。


「ほほう。それでいて、カメラ本来の能力も有していると?」

「そうだね。詳しくは企業秘密だよ。

 おかげでこのカメラ……完全に僕専用武器になってるんだよね。

 他の写真家が手にしても、装備は出来るけど使えない代物さ」

「それは色々困るのではないですか?」

「そう? 不便を感じたことはないよ。特にデメリットもないし。

 ああ、強いて言えば市場に出しても売れないぐらいか」


 自分から話を振っておいたのに、私はすでに話につけなくなってきた。

 これ以上専門的な話に突入しないで欲しい……。

 というか、あれだね。何気にマイルさんとルゥリヒトって話が合うよね。

 あれか、お互い趣味に突っ走るタイプだからか。


「おーーい! お前らそろそろここから出るぞーー!!」


 待ちくたびれたのか、カボックさんとシーラさんが魔法陣の前に立ち、

私たちが来るのを待っていた。

 やった、これで話から逃げられる! カボックさんナイス!


「あ、はいはい!! 今行きます! すぐ行きます!」


 私はあわててカボックさんに返事をすると、


「か、カボックさんたちが待ってるので、早く行きましょう!」

「おや、ずいぶん話し混んじゃったみたいだね」

「え? わ! ちょ、ちょっと待って下さいよ!!」


 マイルさんは大慌てで走り出すと、足をもつれさせながら

カボックさんたちの所に合流した。私とルゥリヒトも魔法陣の方へ向かう。


「良かったね。カボックさんが助け舟を出してくれてさ」


 ルゥリヒトが私にしか聞こえないくらい小さい声でぼそっと指摘する。

 や、やっぱりバレてた……。私は「ナンノコトデスカ」とつい棒読みで返事をしてしまう。


「やれやれ。くぅーねるちゃんから聞いてきたのにな」


 ううう。そ、そうだけど。そんなあからさまに肩を落として、

悲しいなーみたいな顔するの止めてー!!


「……ぷ、くくく」


 わ、笑われた。こいつまた私をからかったな?


「この混沌鍋め」

「ごめんごめん。くぅーねるちゃんは弄りがいがあるからね、つい」


 つい、じゃなーい! しかも、さりげなく頭なでなでするな!

 なんて言い合いをしているうちに、魔法陣前に到着した。 


「よし、全員着いたな。んじゃ、帰るぞ」


 全員が魔法陣へと足を踏み入れると、魔法陣が起動して、

目の前の景色が移り変わっていく。

 転送が完了すると、そこは南瓜公園の入口前、管理端末が置いてある場所だった。


『>エピソードクエスト:「最初の一歩」が更新されたおん。

依頼人に報告すると完了だおん。

『>クエスト:「パーティに参加して料理の材料を採取せよ」を完了したおん』


 お、システム「おんちゃん」から通知が来てる。なんてね。

 やれやれ、やっとこれでエピソードクエストが終わるわ。

 もはや色々あり過ぎて「最初の一歩」どころか10歩くらい進んでるような……。


『>くぅーねるの脳波に乱れを感知。睡眠の兆候を感知したおん。

ダイブアウトして休息をとることを強く推奨するおん』


 うーん。クエストを終わらせるとこまでやりたかったけど、

ステータスの確認やら、ボスドロップを受け取ったりと色々やることがある。

 ここで一旦ダイブアウトして、まとめてやった方がいいかな。


「えっと、私そろそろ限界なので、アウトしてもいいでしょうか?」


 私はパーティーメンバーを呼び止めると、ここでパーティーを解散しても

いいか尋ねる。ルゥリヒトは「僕もアウトして休憩しようかな」ということで賛成する。

 ちなみにNPCはこういうゲームの仕様的なことを言っても、

違和感を感じないように設定されていて、私が「ゲームからダイブアウトするね」と

言っても、休憩するから寝るわ程度の認識だ。


「おう! ずいぶん長い冒険になっちまったからな。ゆっくり休めよ!」

「すごく楽しかったわ。また一緒に冒険しましょう!」

「今度はくぅーねるちゃんの食べるについて、もっと深く調べさせてくださいね!」


 かしまし組も特に異論はなく。ここでパーティーを解散することになった。

 大手を振りながら、街へと戻っていく3人を見送る。

 そうだ。ルゥリヒトにお礼言っておかなきゃね。私はルゥリヒトの方に向き直る。


「じゃあ、ルゥリヒトさん。今日はどうもありがとうございました。

 おかげでシークレットボスを倒すことが出来ましたし」

「もとは僕が持ちかけたことだからね。こっちこそ、申請許可してくれてありがとう」


 ルゥリヒトの言葉に「いえ、どういたしまして」と返事をして、

道具袋からホームキーを漁る。


「それじゃあ、僕は行くね。またどこかで会えるといいな」


 最後だからと言わんばかりに、私の頭をなでなでするととルゥリヒトは

その場から立ち去った。私はむすっとしながらホームキーを起動する。


「だから、子供扱いするんじゃありません! ……全くもう」


 自室へと転送した私はすぐにベッドへと潜り込んで「ダイブアウト」した。

 長くかかった南瓜公園の探索もこれでようやく終わりである。

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