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37品目:南瓜王カボチンヘッド2

小説を閲覧いただきありがとうございます。

感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。

どうぞよろしくお願いします。

『かぼは南瓜じゃあなぁいよぅ? 南瓜じゃあないけぇど、カボチンだよ!』


 枯れ木の上でゆらゆらと漂っていたカボチンヘッドがかぼかぼと笑いながら、

私の方に向かって飛んできた。

 やっぱりこっちに狙いを定めてきたか……。

 私は自分をおとりにするためその場から駆け出し、カボチンを皆から引き離す。

 

『南瓜じゃあないよぅ♪ カボチンだよ♪』


 カボチンヘッドは逃げる私を嘲笑うように、のんきに鼻歌を歌いながら追尾してくる。

 南瓜じゃないなら、南瓜王なんて名乗るなよと内心で悪態を吐く。


「マイルーー! あれを投げてやれ!!」

「了解です! シーラさん!!」

「わかったわよ!!」


 私とカボチンの周りを取り囲むように、かしまし組が全速力で駆ける。

 カボックさんが何か合図をすると、3方向から袋のようなものが飛んできた。

 それに見覚えがあった私は急停止。バックステップでカボチンヘッドから離れた。

 袋はカボチンヘッドに命中し、ボフッという音を発てて大量の粉をまき散らす。

 かしまし組が投げた袋は、私が自作して渡しておいた『粉塵袋』だ。

 小麦と胡椒、それに粉っぽい植物を混ぜ合わせて作った特製の嫌がらせ爆弾である。


『かぼかぼ!? へっくち! へっくち!!』


 近距離で粉塵袋をぶつけられたカボチンヘッド。

 その大きな口で遠慮なしに粉を全て吸い込んでしまったため、

はげしくくしゃみを繰り返す。

 顔に似合わず、とても可愛いくしゃみをするなぁ。

 カボチンヘッドの動きが止まったのを見て、私は素早く道具袋からロープを取り出す。

 ただのロープではない。これも私のお手製の代物だ。


「『炎を纏いし蛇よ。敵を締め上げろ! フレアサークルロープ』」


 カボチンヘッドに向かって、ロープを鞭のようにビシッと振るいながら、

効果発動となる言葉を唱える。

 言葉に反応したロープが炎に包まれると、うねうねと蛇のようにくねりながら、

カボチンヘッドの身体に巻きつく。

 巻き付いたのを確認して、手を放すとロープはさらにカボチンヘッドを締め上げた。


『へっくち! ああぁぁあづいぃぃぃ!!!』


 ぐるぐるにロープで締め上げられて上に炎で焼かれるカボチンヘッドはもだえ苦しむ。


「わぁ、これは中々エグイ攻撃だ」


 いつの間に移動したのだろうか。カボチンヘッドの頭の上にルゥリヒトが乗っていた。


「でも、おかげで隙だらけだね!!」


 刀身の装飾が赤く輝き、鋭い殺気放っている長剣を、カボチンヘッドの頭部に

思いっきり突き刺した。

 容赦のない一撃を食らい、カボチンヘッドは叫び声をあげる。


『かぼあああああぁぁぁ!!』


 エグイのはどっちだ。脳天に直接突き刺すような人に言われたくないわ。

 カボチンヘッドの身体が地面へと転がる。

 巻き込まれる前に、ルゥリヒトは剣を引き抜いて器用に地面に着地した。


「皆さん! 出来るだけ遠くに離れてください!!」


 マイルさんが叫ぶ。私たちはマイルさんに従いすぐにカボチンヘッドから遠ざかる。

 すれ違い様に、後方から何やら瓶が数本カボチンヘッドに向かって投げられた。

 がちゃんと音がして、カボチンヘッドに向かってぶつかると、

 フレアサークルロープの炎が勢いを増す。もしかして油かな?


「『秘められし炎の力を解放する! フレアマジックボム!!』」


 カボチンヘッドの身体に油が付着したのを確認すると、フレアマジックボムを

投げて追撃する。爆発と共に油で勢いを増した火がごうごうと燃え上がり、

カボチンヘッドを焼き尽くしていく。


『ひいぃぃぃぃ! ああああづいぃぃぃ! かぼあぁぁぁ!!!』


 火だるまになりながら、悶え苦しむカボチンヘッド。


「まだまだっ!! うおおおおっ!!」


 カボックさんが雄叫びをあげながらカボチンヘッドへと走ってゆき、

炎のバトルアックスをフルスイングする。

 カボチンヘッドの正面をずばっと切り裂き、枯れ木の方へ突き飛ばした。


『うぎゃぁぁ! か、かぼの顔があぁぁぁ!!』


 切り裂かれた顔面を手で覆いながら、呻くカボチンヘッドに向かって、

無数の刃物が飛ぶ。シーラさんのスティレットだ。


『ひっ!?』

「そこで大人しく貼り付けられてなさい!」


 ダーツのように正確に投球されたスティレットは、カボチンヘッドの身体を

枯れ木へと縫い付けると、マイルさんがカボチンヘッドへと近づき、

近距離で散弾銃を放ち、カボチンヘッドを枯れ木に固定した。

 そこで、全員がカボチンヘッドから離れて様子を伺う。


「どうだ?」

「……手ごたえはありました。ダメージは確実に与えてるでしょう」


 カボックさんの問いにマイルさんはそう答える。だがその表情は硬い。

 マイルさんだけじゃない。全員が怪訝な表情でカボチンヘッドを見つめている。


「『エネミーフォーカス』」


 ルゥリヒトが短剣を引き抜いて、スキル名を唱える。

 長剣とは違い、青い光を放つ短剣でさっと空を切ると鞘へと戻した。

 なんか敵を調べるスキルっぽいけど。

 青い光と共に、宙から紙が生成されると、ルゥリヒトの手の中に納まった。

 紙を見つめながら、ルゥリヒトが口を開く。


「体力は確実に削れてる、しかも残りあとわずかだ。

これなら炎の継続ダメージで勝手に死んでくれるだろうけど」


 じゃあ、ダミー相手に戦ってるとかではないのか。


「…………ダミーではない? 全部本体となると」


 ボスイベントに良くある、「実はそいつは分身だ。この通り本体は

傷一つ追っていないぞ! ふははははー」な展開ではないんだね。


「気をつけて! さっき戦ったのは分身ではないけど、次の本体が生成される!」


 ルゥリヒトが全員に注意を呼び掛けると、カボチンヘッドから炎が消え去る。

 ぱりぱりぱりと南瓜顔にひびが入る。


 ぱり……ぱりりりりりりり。


 ぼろぼろと崩れ落ちる南瓜の残骸。その中から何かが出てきた。


『かーぼちぃぃん♪ あたらしぃぃぃかぁおだよぉぉぉ♪』

「アウトでしょ! 何言ってるのこの緑南瓜!」


 古い南瓜を脱ぎ捨て、さきほどよりやや小さくなった南瓜が新たに出現した。

 色もじゃっかん薄くなっている。

 なんだか弱くなってるように見えるけど?


「これ、見た目はあれだけど、さっきより強化されてるから。気をつけて!」

「やっぱまだ終わってなかったか! わかったぜルゥ坊!」

「うえ、倒したら強化して再生する系なの? 面倒ね」

「まぁまぁ、ペースを乱さないように頑張りましょう」


 ボスが再生されたというのに、パーティーメンバーは思ったよりも余裕があった。

 もちろん、私も平気である。と安心しかけていると、


『かぼかぼかぼ!! かぁぼの友達を食ったやつぅぅ! かぁぼが食べてやるぅぅぅ!!』


 ちょ! やっぱり私を狙ってくるの!?

 緑南瓜の友達なんて知らないってば!!


「俺がヘイトを稼いでも意味がないぜ!!

あの南瓜頭、強制的にくぅーねる嬢ちゃんだけに狙いを定めてるぞ!!」

「そうすると、くぅーねるちゃんにはオトリになってもらうしかないですね」


 くっそー、やっぱりそうなるよね。

 幸いステータスは強化されているので、逃げ続けるのは問題ない。

 何段階まで再生するか分からないけど、最後は食ってやるんだから!


「大丈夫ですっ! 私が引き付けますから! 皆さんで削ってください!!」

『おっおっ? 鬼ごっこ? かぼかぼかぼ! かぼが鬼ー、お前は餌だあぁぁ!!』


 アリア戦で鍛えた逃げの技術を舐めるなよ。

 私はあの南瓜め、最後に絶対喰らってやると自分に言い聞かせて、今は逃げに専念する。

 私とカボチンヘッドの壮絶な鬼ごっこが始まった。

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