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29品目:くぅーねるinあんだーぐらうんど

小説を閲覧いただきありがとうございます。

感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。

どうぞよろしくお願いします。

「こりゃーすげー。巣っていうよりも1つの村だぜ」

「す、す、すばらしい!! モグーラパンの住処に案内されるとは!!

これは、希少な体験ですよ!! ぜひともレポートに纏めなければなりませんね」

「も、もこもこが……あちこちにもこもこ……うふふふ」

「モグ風ラパンケーキ、モグモグラタン、モグーラパンバーグ……じゅるり」


 私たちが訪れたのは、地下深くにあるというモグーラパンの住処。

 なんで森の中から一転して、地下にいるのかと言えば、

モグーラパンの話を聞いて、なんとかしてやりたいというカボックさんの意見を

尊重してのことだった。


 ***


 話は遡ること数分前。

 何が出来るかは分からないが、何かお手伝いをしたい。

 詳しく話を聞きたいのだが、とモグーラパンに告げると、

元気よくもぐもぐと返事が返ってくる。

 カボックさんの翻訳によると、地下の住処に案内する、そこで祖父に会って欲しい。

 詳しい話はそこでするとのことだった。

 モンスターの根城に行くなんて、何かの罠じゃないのかと思ったが、

カボックさんはそんなことはねぇ、あいつは何かをたくらむような目はしていなかったと主張。

 どことなく説得力のあるその言葉に、シーラさんとマイルさんはじゃあ行こうかと即答する。

 私は良いのかなぁと思いつつも、もしも罠だったら、その時は

モグーラパンのバイキングコースが堪能出来ると思い直し行くことに合意した。


「もっぐもっぐ!」


 カボックさんの背中から降りたモグーラパンは元気にもぐもぐ飛び跳ねる。

 身体をふるふると震わせ、どこからともなく、赤い飴玉のようなものを取り出し、

私たちに差し出す。私たちがそれを受け取ると、


「もっぐん! もっぐん!」


 あ、これはカボックさんに言われなくても、なんとなく意味が分かった。

 この飴玉を食べろ、と言っているのだ。

 カボックさんは疑いなくぱくりと飴玉を食べる。私は毒があっても平気なので、

速攻でぱくり。最後にやや間を置いて、シーラさんとマイルさんが飴玉を口に含んだ。


「うえ……ニンジンくさい」


 見た目に反して、辛味を存分に含んだ生っぽいニンジンの味がする。


『良薬っつーのは、昔から苦いのがええってじっちゃんが言ってたんもぐ。

堪忍してくれよもぐ』

「それはいけません。いかに良薬といえど、飲まないことには効果は発揮できません。

我々調合する側は、飲みやすさも考えて薬を調合しないといけませんよ。

 薬の効果も大事ですが、患者にこれなら飲める続けられるというやる気を持たせるのも大事です。

 病は気からといいますしね」

『はー、うちのじっちゃんに聞かせてやりてぇーもぐなぁ。

 そりゃ苦いだけよりは飲みやすい方がええもぐ。兄ちゃんええこというもぐ』


 カボックさん翻訳が急に高性能になったような……。

 まるで、マイルさんとモグーラパンが本当に会話しているように聞こえる。


「し……」


 何やら口をぽかんと開けて、シーラさんがモグーラパンを凝視している。

 どうしたんだろう?


「しゃべった!!」

「はい?」


 意味が分からず思わず聞き返すと、


『そら魔物ですから、普段から喋りますもぐよ。

姉ちゃんたち、人間にはモグーラパン語が理解出来なかっただけですもぐ』


 鼻をひくひくさせて、モグーラパンが流暢に言葉を話していた。


「しゃべった!! ……じゃなくて、もしかしてさっきの飴玉の効果?」


 私がモグーラパンにそう尋ねると、こくりと頷く。


『じっちゃんに作ってもらった翻訳の薬もぐ。

じっちゃんはモグーラパン族の医者で、王様の薬もじっちゃんが用意してるとこなんもぐ』


 それじゃあ、そのじっちゃんとやらとうまく交渉できれば、キャロラインの根を

分けてもらえるかもしれないな。

 ん? なんか、カボックさんがぷるぷると震えながらモグーラパンを見つめてるけど?


「おおお!! こりゃ、すげー。モグーラパンたちの言葉が分かるぞ!!」

「ええっ!? 今までわかんなかったんですか!?」


 私は思わず大声を上げて聞いてしまう。あんなに真剣に対話してたのに?

 シーラさんも信じられないという目つきで、カボックさんを睨んでいる。

 ちなみにマイルさんは、モグーラパンとの対話をメモに纏めるのに必死で

全く話を聞いていない。


「あー、今までのはなんとなくこんな感じのこと言ってるかなってのを

伝えてただけだ。マイルでさえわかんねぇモグーラパン語を俺が話せるわけねぇだろ?」

『かなり正確に伝わってましたもぐよ。あんさんは何か安心する気配がしよるもぐ。

もしかしてテイム持ちのかたもぐか?』

「大したもんじゃねぇが」

『いやいや、かなりのもんですもぐ。

テイム持ちの方はエルフとか獣人ほどじゃないもぐけど、

なんとなく魔物の言葉が分かる方が多いもぐって、じっちゃんが言っとりましたもぐ』


 そんな効果があったとは。テイマー系のスキルを持ってる人がやけにモンスターと

意思疎通出来てるように見えるのは、その場のノリや想像などではなく、

スキルの効果でなんとなく言ってることを理解できるからなのか。


『それじゃあ、そろそろ住居にご案内してもよろしいもぐ?』

「おう。頼むぜ。つっても、どっから行くんだ?」

『ちょっと待つもぐ。今、住居まで繋ぐもぐから』


 モグーラパンがそう告げると、ぴょーんと一際高くジャンプする。

 そのまま身体をぐるんぐるんと高速回転させ、勢いよく頭から地面に突っ込んでいく。

 

 ――ぎゅるるるるるる!!


 それはまるでドリルのようだった。

 耳をピンと尖らせ、ざざざざざーと地面を掘り進む。

 すぐにその姿は見えなくなって、地面にぽっかりと穴が開いた。

 しばらく待っていると、掘る音がピタリと止まり、穴の中から声がする。


『今繋ぎましたもぐ! 長く持ちませんから早く穴ん中入って下さいもぐ!!』


 私たちは顔を見合わせると、意を決して穴の中へ飛び込んだ。

 視界はすぐ暗闇になり、落下の浮遊感が襲う。

 それもほんの少しの間で、すぐに明かりが見えてきた。

 なんで地下に明かりがと思っていると、ぽすんと地面に着地した。


「ここ、本当に南瓜公園の真下なの?」


 明かりの正体はすぐに判明した。

 無数に生える茸。それに地面から生える巨大な鉱石が光源だったのだ。

 地下はまるで洞窟のように、とてつもない広い空間が広がっていた。


「厳密に言えば違いますね」


 同じく地面に着地したマイルさんが若干よろめきつつ解説してくれる。


「力のある魔物は空間をゆがませて、自分たちの暮らしやすい場所を作り、

そこを巣にする傾向があります。我々冒険者が攻略しているダンジョンというのは、

実はそうやって出来た魔物の巣なのです。

 ここも本来の南瓜公園とは微妙にずれた位置に存在していて、物理的に掘っても

見つからないでしょう」

『兄ちゃん流石やもぐ。ここは王様がこさえてくれたモグーラパンの住処もぐ。

普通の人間が穴を掘ったって絶対にみつからんもぐよ。

 モグーラパンが掘った穴から入らんとたどり着けんようになってるもぐ』


 幻想的な空間をしばらく見とれた後、モグーラパンの先導されて、

私たちはモグーラパンの住処へと足を踏み入れたのだ。


 ***


 一際広い空間に出たと思ったら、飛び込んできたのは巨大な地底湖。

 その地底湖を中心にして、周りの壁に穴を開けて居住スペースが設けられていた。

 あちこちから、もぐもぐと言う鳴き声とふわふわの毛玉が見える。

 入口に見張りのモグーラパンが立っていて、こちらを発見すると、

歯をむき出しにして警戒する。


『番兵に事情を説明してきますもぐ。少々お待ちを』


 そう言ってモグーラパンが見張りとなにやらもぐもぐと会話を続ける。

 

『お待たせしたもぐ。モグーラパンの村へようこそもぐ。

さっそくじっちゃんのところへ案内するもぐ』


 モグーラパンに連れられ、村の中に足を踏み入れる。

 周りのモグーラパンたちは、ここに人間がいるのが珍しいのか、

こちらの様子をこっそり伺ったり、なにやらもぐもぐと内緒話をいていた。

 地底湖の傍にある1つの穴の前まで案内された。

 穴の周りには乾燥した草や実が干されている。

 何かを熟成させているのか、良い匂いのする樽が設置されている。

 明らかに他の穴とは雰囲気が違う。恐らくここがそうなのだろう。

 

『着きましたもぐ。ここがじっちゃんの……そして私の住居になりますもぐ。

おおーい! じっちゃん! お客さんをお連れしたもぐーー!!』


 モグーラパンは大声でもぐーもぐーと叫ぶ。

 中からしわがれたモグーラパンの声がする。たぶんじっちゃんなるモグーラパンだ。


『こりゃ! 大声を出さんでも聞こえ取るもぐ! 早くお客人を中に入れるもぐ!!』


 モグーラパンはわかったもぐーとこれまた大声で叫ぶと、


『さぁさぁ、入ってくださいもぐ!』


 どうぞどうぞと穴の中へと案内した。

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