25品目:戦力把握
小説を閲覧いただきありがとうございます。
感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。
どうぞよろしくお願いします。
店の方へと戻った私は、カボックさん達の所へ合流する。
準備が整ったことを告げて、作成してきたアイテムを見せると、
3人はとても驚いていた。やたらと褒められてしまい、頭をぐりぐりと撫でまわされる。
調合で作り過ぎた分を渡すと、さらに感謝されてしまって、
シーラさんに思いっきりぎゅーと抱きしめられてしまった。く、くるしい。
自分は、少しでもお役に立てればと思っただけだなんだけど。
「うっし。じゃあ、そろそろ行くぜ!」
カボックさんの合図に皆が頷く。
ふう、ようやくシーラさんの腕の中から抜け出せた。
両親に見送られながら、私たちは店を出る。目指す先は、南瓜公園だ。
店を出る時、お客の相手でよれよれになったアリアが、
助けを求めるような視線を投げかけてきたが、スルーした。きちんと罰を受けないと駄目だよ。
***
「うわーなっつかしいなぁ」
南瓜公園のゲートを前にして、シーラさんが歓声を上げた。
「本当にいつぶりでしょうかね」
シーラさんに続いて、マイルさんも感慨深げゲートを眺める。
「俺らがペーペーの頃だから……何年も前になるな!」
「3人は最初からずっと一緒に活動してるんですか?」
なんだか長い間一緒にいるような雰囲気だったので、私は思わずそう聞いてみた。
私の問いに「うんにゃ、違うぜ」とカボックさん。
「最初は俺とシーラの2人だったんだ。マイルの奴は中央で講師をやってたからな」
そういえば、そう言ってたね。
「そうそう。2年前に南瓜公園の実地調査の護衛をしてほしいって依頼を受けて、
それで当時の依頼人だった、この学者先生と知り合ったの」
「まぁ色々ありましてね。その依頼から2人と交流を持ちまして、
今のような3人パーティーとして知られるようになったんです」
人生どんなことが起こるか、分からないものですねとマイルさんはしみじみそう言った。
「じゃあ、さっそくパーティーを組もうぜ。今日はお嬢ちゃんがリーダーになって、
俺らにパーティー申請してもらう。んで、俺らはそれに加入する、でいいよな?」
カボックさんの提案に全員異論はない。私も了解ですと答える。
「じゃあ、くぅーねるちゃん。パーティー申請のやり方を教えるから、
僕たちに申請を送ってほしい」
私はよろしくお願いしますとお辞儀をして、マイルさんから説明を聞いた。
パーティーメニューを開いて、パーティーを結成。続いて3人に申請を送った。
すぐに3人がパーティーインしてきて、準備が整う。
「じゃあ、パーティーを組んだところで、お次はお互いの戦い方を確認しておきましょうか。
お互い言える範囲でいいから、自分の戦闘スタイルを答えてちょうだい。
私達は知ってるけど、くぅーねるちゃんは初めてだからね」
シーラさんの言葉に、カボックさんがじゃあ俺からいうぜと名乗り出た。
「俺は見ての通りの前衛だ。獲物はこのバトルアックスで、ガンガン攻める戦いをするぜ。
あとは、大声で敵を集めたり、威圧で敵をスタンさせたり出来るな」
ふむ。大体予想通りの答えが返ってきた。
「あとは初級のモンスターテイムが使えるぜ。戦闘じゃちと役には立たないが、
探索面では、かなり助けになるだろう」
おっと、これは意外な能力が。シーラさんがくすくすと笑って、
「こいつ、でっかい図体して小動物に懐かれやすいのよ」
「た、体格は関係ねぇーだろが! ふん、俺は心が優しいから懐かれるんだ。
動物ってのはそういうのが本能的に分かるのさ。良い人間か悪い人間かがな」
俺からは以上だとカボックさんが答え終わる。お次はシーラさんが答える番だ。
「私も見た感じで分かるかもしれないけど、隠密からの奇襲スタイルで戦うわ。
防御は紙だから、カボックにはがんがんオトリになってもらってるわね。
探索面では、罠解除とか宝箱開封とかはお手の物って感じ。
まぁ、今回は森の中だから、あまりそっちはお役に立てないかもしれないわね。
でも、危機察知の能力で敵の接近と大体の位置ぐらいは把握出来るからね」
シーラさんの能力を使えば、無用な戦いは避けていける。
特に探索においては便利な能力を持っている。パーティーに1人は欲しい人材だ。
シーラさんが終わり、マイルさんが答える番が来た。
「僕は職業は考古学者で、戦闘職ではありません。
なので、自他等に認めますけど戦闘は全然です。一応武器は銃を扱います。
主に、パーティーのブレインとして、後方からの支援を務めていますね。
戦闘を客観的にみて、攻めのタイミングや回復の指示を行っています。
魔弾を少々扱っているので、魔法モドキのようなこともできますよ」
銃!? 後方支援型とは思っていたけど、銃なんだ。
銃って扱いづらいけど、なんかロマンがあっていいよね。
しかも、魔弾も扱えるなんて、マイルさん中々やるじゃない。
「マイルは物知りだからな。シーラが識別できねぇ毒草だとか、痺れキノコだとか
を回避するのに便利だ。森の中ではマイルの知識が役だってくれるだろう」
「くぅーねるちゃんと同じ調合も出来るから、いざというときは
現地でアイテムを作り出せるわ」
なんだかんだ言っていても、2人ともマイルさんの能力の高さを認めているようだ。
というか、最初からマイルさんと知り合う機会があれば、毒草を食べてぴくぴくしなくても済んだのにな。……耐性手に入ったからいいけどさ。
さて、最後は私の番となったわけだけど。
正直、3人の話を聞いていたら、自信が無くなってきたよ。
いや、この中で一番お荷物なのは仕方がないことだけど。
自分のプレイスタイル? うーん。良く分からないけど、素直に答えるか。
「私はどんな敵でも食べるというプレイスタイルです」
私の言葉に3人は興味津々に私を見つめる。別に普通だよ?
というか、3人だってイーターマンなんだから、食べるくらい出来るでしょうに。
「主に接近して敵を食べます。
さらにスキルで範囲化して、多くの敵を同時に食べたりします。
武器はペティナイフです。食べきれなかった敵の対処に使ってます。
投げるスキルを持っているので、ナイフを投げれば、多少の遠距離攻撃は出来ますね。
あとは、このブローチのスキルで、敵全体に墨を吐いて隙を作ったりです。
マイルさんと同じで調合持ちですけど、まだまだ初心者です」
自分が出来ることを全て話して、3人の反応を待つ。
特に目立つ特技もないので、返答に困ってしまうかもしれないが……。
私がじっと返事を待っていると、カボックさんが切り出す。
「嬢ちゃん……アンタすげーなぁ」
え? 何が?
思いもよらぬ返答に私は疑問符を浮かべる。カボックさんに続いてシーラさんも、
「私も驚いちゃった……すごいわ、くぅーねるちゃん」
何か褒められてる? えっと褒められてるんだよね?
「ほほう。食べるに特化しているとは! すばらしい……中々貴重なサンプルですね」
ま、マイルさん目が怖いです。サンプルって言わないで。
というか、3人共なんでそんなに褒めるの?
食べるなんてイーターマンだったら、当たり前に持ってるスキルじゃないの?
訳が分からないため、私は3人にそのように聞いてみた。すると。
「そりゃ、食べるは持ってるけどよぅ……それを戦闘に使うイーターマンって、
いないんだぜ?」
カボックさんが少し困った顔をしてそう言った。シーラさんも同じくような顔をして、
「何でも食べられるって言っても、味覚は一般的な人間と変わらないのよ?
食べ物以外の物を食べる気は……ちょっと、ねぇ」
ないわーみたいなことを言われてしまった。
ええーー!? イーターマンなのに!? 食べないの!?
両親はむしろ食べて食べて食べろーみたいに言ってきたのに……。
ショックを受けた私に、すかさずマイルさんがフォローする。
「私たちの祖先は、食べるスキルに抵抗はありませんでした。
時代が時代でしたからね。敵に追われ、迫害を逃れ、草や木の根を齧り飢えをしのぐ。
食べるのスキルは重宝したわけです。
ですが、安全な国を得て平和を掴みとった今は、食べるスキルを使う者は減っています。
私達の祖父の世代は、食べるスキルこそ迫害されてきた元凶であるとし、
使ってはいけないと言われてきたそうです。
今の時代で、食べるスキルを自在に行使出来るイーターマンは数えるほどしかいないでしょう」
そんな歴史があったなんて……。
イーターマンだから、食べるスキルは使えて当たり前。使って当然。
そんな風に勝手に思っていたことを私は反省する。
思えば、その思い込みが他種族からの迫害に繋がっているのではないか?
イーターマンだから、食べる者であると。
現状は、そうではないというのに……。




