23品目:実はとんでもないモノたち
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マイルさんの爆弾発言から復活した私は、まじまじとアリアドネの香糸を見つめた。
まさか、そんなに重要な物だったなんて……。
ただのキラキラ光る水に見えて、実はとんでもない代物だったんだね、コレ。
「お母さんは本当にそそっかしいな……」
お父さんはあきれた様子でお母さんを見つめた。
「ち、違うわ! そ、そうだ。実際に使って見た方が、
実感出来るかなと思ってあえて言わなかったのよ!」
本当に? なんか「今思いつきました!」って感じがバリバリ漂う言い訳だけど。
こんな見え見えな嘘に騙される人なんて……いたわ。
お父さん何感心しちゃってるの! 騙されちゃいけないって。
それがお母さんの策略なんだからね。
「実際に……それはいい考えだねお母さん」
「そ、そうでしょ!」
駄目だこりゃ。そんなだからお母さんの尻に敷かれるんだ。
「くぅーねるには真に胃袋が満たされた時、
南瓜公園の奥へ抜ける方法を教えると約束していたしな。
まさかこんなに早く成長するとは、お父さんも思ってなかったが」
早いかなぁ。私的には色々あって、ずいぶん遠回りした感じがするんだけど。
物語で例えると、6話分くらいかかった気がする。
なんで物語で例えてしまったのか謎だが。はて?
「よし、ここは1つかしまし共にも協力してもらうとしよう」
「「「え?」」」
お父さんの突然の提案に、カボックさん、シーラさん、マイルさんが
それぞれ疑問符を浮かべている。
協力って、一体何をさせる気なんだろう?
「くぅーねる。お前は外の世界にあこがれていたな」
「う、うん」
お父さんの問いかけに私は肯定する。
……そうだった。吟遊詩人が語るプロローグでそんな風に言ってたっけ。
外への憧れに満ちたなんとかかんとかって部分だな。
いやー、すっかり忘れてた。
「かしまし共は、こんなのでも外の世界を知っている冒険者だ」
「こんなのって酷い言いぐさじゃないの!」
「おうおう! 全くだ!」
「ちょっと、2人とも! マスターが大事な話をしてるんだから、静かに!!」
……確かにどこか残念な感じがするよね、この3人。
でも、外の世界を知る冒険者か。
それは貿易馬車の護衛を請け負ったことがあるってことだね。
そして、それを請け負うことが出来るのはほんの一握りの先鋭だけ。
この人たち、実はとんでもない実力者なんだ。
「個々の実力はまだまだ甘い部分もあるが、それでもかしまし共がうまくやっている理由。
それは、パーティーの相性がいいからだ」
パーティーかぁ……絶賛ソロプレイな私にはずきんとくる言葉だよ。
別に嫌いじゃないんだよ? 前作はむしろ生産組で
積極的にパーティー組んでたくらいだし。
こんなに長い間、ソロプレイだなんて逆に珍しいんだよ?
『>くぅーねる、ぼっちおん?』
わーわー! だからぼっちじゃないもん! セントラルに行ったら律子がいるもん!!
「個人の力が強いのは大いに結構だ。独り者を貫くのも個人の自由だろう。
だが、最低限のマナーとしてパーティでの冒険の仕方を覚えておいたほうがいい。
こういうことを教わる機会はないだろうしな」
『>エピソードクエスト:「最初の一歩」が更新されたおん
『>クエスト:「料理の材料を採取せよ」の内容が変更されて、
クエスト:「パーティに参加して料理の材料を採取せよ」に更新されたおん。
達成条件に「パーティを組んで冒険する」が追加されたおん』
おおっと、久々のクエスト更新だ。
内容から察するに、かしましトリオと一緒に南瓜公園に行けってことだろう。
「へぇー。くぅーねるちゃんも外の世界に行ってみたいの?」
シーラさんが意外と言った様子で聞いてきた。
「はい。色んなところに行って、美味しいものをいっぱい食べたいです」
「がっはっは! 外は面白れぇーぞ! ちとキツイこともあるがよ。
美味いもんも、もちろんある!」
私の返答にカボックさんはたいそう満足したようで、「まぁ食え!」と
肉料理を追加注文してくれた。
マイルさんがこめかみを押さえている。なんか、ごめんなさい。ごちそう様です。
「危険なことが圧倒的に多いですよ? 楽しいことばかりじゃありません」
「学者先生は心配性ね! 人生は刺激がなくっちゃ駄目なのよ!」
「ちょ! やめてくださいっ! いた、痛いです!!」
べしんべしんと良い音がマイルさんの背中から聞こえる。
うわー、あれ痛そうだなぁ……。
し、シーラさん加減してあげて下さいね?
「よーし。じゃあ、代表のカボック」
「おう! なんだ?」
お父さんが改まってカボックさんを呼ぶ。
「君たちに依頼がしたい。内容はくぅーねるをパーティーに入れて、
南瓜公園を攻略することだ。
ついでに、南瓜公園の奥へ抜ける方法も教えてやってくれ。
現役の冒険者から教わった方がいいだろうしな」
「協力してほしいことってのは、その依頼のことかい」
「そうだ。お前にしては察しがいいな」
今までの騒いでいたのが嘘のように、真剣な面持ちで悩むカボックさん。
伊達に冒険者をやってるわけではないと言ったところか。
彼らにとって私は素人同然で足手まとい。
パーティーに入れて攻略してほしいと言ったが、実質私のお守りをするようなものだ。
この依頼のリスク、パーティーメンバーへの負担、それに見合う報酬なのか。
そういったことを、色々考えてるに違いない。
私は出来る限り足手まといにならないように頑張りますから、どうかお願いしますと
言いかけて、カボックさんが、
「攻略っていうからには、ボスも倒しちまっていいんだよな!?
南瓜公園の奥へ抜ける方法を教えるってのは、つまり最深部のボスを狙うってことだろ?」
……。
…………。
はいぃぃ!? な、なに言ってるんだこの人!!
何がどうして、そういう答えに行きついたの?
すっかり言葉を失っている私をスルーして、カボックさんはがはがはと豪快に
笑いながら、話しを進める。
「どうせやるなら、シークレットボスを狙うぜ!
アリアドネの香糸もあることだしな! がっはっはっは!!」
またシークレットボスか! もういいよ! シークレットは十分です!!
というか、シークレットってこんなにぽんぽん転がってるものなの!?
全然隠れてないじゃない! 秘密っていうからには、少しは忍びなさいよ!!
「いいわね! あそこのボスは倒したけど、シークレットはまだだったわ。
倒しそこねて、今じゃ行く機会もなかったわ。
良かったわねマイル。南瓜公園のシークレットボス退治よ。
アンタ行きたい行きたいって言ってたじゃない」
攻略って何もボスを倒さなくてもいいと思うんだけど!!
そ、それに私はお父さんのお使いの材料が揃えられればいいんだって!
マイルさん! 貴方が最後の頼みの綱です! どうかこの2人の暴走をっ!
「素晴らしい!! 南瓜公園の貴重なサンプルを取れるんですね!?
ぜひ行きましょう! くぅーねるちゃん、これは滅多にないチャンスだよ。
一緒に行きましょう。もちろん、君の安全はしっかりと守りますからご安心を」
流石、かしましトリオ。
暴走する時もチームワークが良いって何なのさ……。
ね、困るよねおんちゃん。
『>全くだおん』
……良く考えてみれば、おんちゃん自身が一番のシークレットだったりしない?
『>お、おん!? 考え過ぎだおん! くぅーねるはシークレット病に
かかってるだおん!』
何なんだそのシークレット病って……。
だって、うおっちっちといい、アリアといい。ほんと碌な事がなかったじゃない。
『>そ、そんなことないおん! おんちゃんは良いシステムなんだおん!!』
おんちゃんとツッコミあっているうちに、
かしましトリオはお父さんからの依頼を受けてしまった。
ただし、私の安全が優先で、仮にシークレットボスと遭遇しても
深追いはしないで、もしもの時は逃げることと、お父さんがしっかりと釘を刺していた。
遭遇した時点でアウトなんじゃないかな、と思いつつも、
今回は1人ではないと自分に言い聞かせる。
こうして、私、カボックさん、シーラさん、マイルさんの4人パーティーで、
南瓜公園の攻略に向かうことになった。




