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13品目:無限の中に隠された罠

小説を閲覧いただきありがとうございます。

感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。

どうぞよろしくお願いします。

 南瓜公園という名の、ハロウィン風味な森を探索すること1時間。 


「まずい。完全に迷った……」


 私は迷子になっていた。

 いや、フィールドマップってタウンマップと違って、一部分しか表示されないじゃない?

 だから奥へ進むには方向感覚に自信がある人か、マッパー系のスキルを持っている人が

いるべきなんだよ。だから、私が迷うのは至極当然で、べ、別に方向音痴じゃないから!

 

「なんてツンデレっぽく言ってみたけど、それで状況が良くなるわけもないのよね……」

 

 あー、欲を出すんじゃなかった。入口付近でうろうろして小金を稼いで、

きちんと地図を買ってから、奥へ散策すればよかったんだ。


「イモワームと小ネギカモは名前からして敵ドロップっぽいし、キャロラインの根だけでも

確保しようとしたのが失敗だったなー」

 

 スローイングラット事件で戦闘はお腹いっぱいだったから、採取に専念しようと

思ったんだけど。それが裏目に出たようである。

 さきほどから同じ木ばかりが続く。うん、ここさっきも通った。

 時刻は午前1時36分。そろそろダイブアウトして仮眠を取らないとまずい。

 しかし、ダイブアウトは安全エリアでしか行うことが出来ない。

 せめてフィールド内の安全エリアを見つけることが出来れば、簡易アウトして

中断することが出来るのに。

 メニューからリタイアを押すことで、フィールドの外へ出ることは出来るが、

死亡扱いとなってしまうためしたくないのだ。 


「はぁーちょっと休憩」


 近くの木陰で木を背にして休みたかったが、

ネズミの件で木には近づかないことにしている。しかたなく、その場で腰を下ろした。


 ぽこぽこぽこ。ぽこぽこぽこ


「ん?」


 私は妙な気配を感じて、すぐ立ち上げると武器を構える。


 ぽこぽこぽこ。ぽこぽこぽこ。


 近くで地面が盛り上がった。よく見ればあちこちで奇妙な土の盛り上がりが出来ている。

 まるでモグラが通った後みたいになっていた。


 ぽこぽこぽこ。ぽこぽこぽこ。


「……」


 こちらからは手を出さない。じっと相手が出てくるのを待つ。


 ぽこん。


 盛り上った土の中から、ジャガイモが顔を覗かせた。ジャガイモ? え?

 

 きょろきょろ。ざっざっ。

 ぽこぽこぽこ。ぽこぽこぽこ。


 辺りを見渡すジャガイモ。私と目(?)があったが、特に慌てた様子もなく、

「んー。ここじゃないべ。もっと奥さ掘っていくっか」とでも言うかのように再び土へと戻る。土を掘り返しながら、別の場所へと去っていった。

 私は武器を解除する。これ以上戦闘する気はないので、追いかけはしない。

 あれがたぶん……イモワームだろう。

 自立移動するイモが他にもいるわけないし。(いたら怖いよ)


「やれやれ、命拾いしたわ。こちらから攻撃しないと襲ってこないタイプで良かった。

想像以上にジャガイモでびっくりしたけど」


 ものすごく……ジャガイモでした、本当に。

 虫要素が皆無だった。ただの「掘り進むイモ」だ。ただのって言うのも変だけど。

 

「小ネギカモの方も、おとなしいモンスターだといいな」


 さて、立ち上がっちゃったから探索を再開しよっか。

 出口、もしくは安全エリアを探す。それで今日はアウトしないと。

 再び足を動かし、前へ前へと進む。こっちが正しいかはわからない。

 

 ぐるるるる。


『>おんちゃんだおん。

満腹度が低下してるおん。何か食べるおんおん!!』


「あー、リアルじゃなくて、こっちのお腹の音か」


 リアルのお腹も減る頃だな。アウトしたらカップラーメンでも食べて寝よう。

 おんちゃんに言われて、あわてて満腹度を確認する。

 ずっと歩き通しだったためか、満腹度がごっそりと減っていた。

 スローイングラットで食いだめしておいたけど、流石にそれも底を尽きたらしい。

 心なしかイーターマンは満腹度が減るスピードが速いような気がする。どうなんだろう?

 満腹度が一定値を下回ると、ステータスが下がり「空腹」のバッドステータスが付く。

 さらに下回ると、もっとステータスが下がり、「飢餓」に変化。

 満腹度が0になってしまうと、「餓死」するそうだ。


「うわあ、餓死だけは嫌だ。ここでもリアルでも……」


 あわててきょろきょろと辺りを探す。最悪の場合は木に近づいて、

ドン栗とスローイングラットを食べるという手がある。

 おや。あちこちに妙な形をした草が生えてるな。種類もけっこうある。


「じゅる……食べれるかなぁ。ぱく」 


 私は近くの草を引っこ抜いて、口に詰める。

 サラダ食べ放題だと思えば意外にいけるのでは? ドレッシングはないけど。

 

「ぱく。しゃくしゃくしゃく……苦い、えぐい」


 なんて言ったって、草だし! 野生の味と香りがする。ワイルドだぜー。


『>「草?」を識別したおん。「草?」は「雑草」だったおん♪』

「なんだ。雑草かぁ……。はい次」


 さっきまで食べていた雑草を投げ捨て、次の草を口に入れる。


『>「草?」を識別したおん。「草?」は「ただの道草」だったおん♪』

「なんだ。道草かぁ……。雑草と何が違うの。はい次」


 味も雑草と大差ない道草を投げ捨て、次の草を実食。


『>「草?」を識別したおん。「草?」は「野草」だったおん♪』

「なんだ。野草かぁ……。だから雑草と何が違うのさ! はい次!!」


 どれもこれも雑草ばかりじゃない! ハーブとかそういうのは生えてないの?

 見た目でわかんないなら、鼻を使おう。ハーブならいい匂いがするはずだ。

 くんくんくん。すんすん。すーはーすーはー。……ヤダ、なんか変態くさい。


「おお? なんかこの葉っぱグレープっぽい匂いが……」


 見た目はシソの葉みたい。だけど匂いはグレープなんだよね。

 いくらなんでも、これが雑草なわけないよね。


「ぱくり…………味がしない……」


 これはこれでがっくりくるなぁ。なんなのこの葉っぱ。


「ぱくぱくぱくぱく。ごくん。苦くないけど、味もない。ぱくり」


 腹を満たすためと割り切って、私はシソグレープの葉(仮名)を摘む。

 そういえば、識別の効果はまだかな?


『>は……「はっぱ?」を、し……識別したおん…………』


 あれ。元気ない? どうしたのおんちゃん。結果は何だったの?


『>……結果を聞くおん?』


「そりゃあ、聞きたいな。何だったの。もしゃもしゃ」


『>「はっぱ?」は……「死相の葉」だったおん』


 シソ? やっぱシソなんだ…………。え、死相? 何それ物騒な名前。


「どんな効果があるのか……な……?」


 なっ……なんか、身体の力がどんどん抜けていく……なに、これ。


『>状態異常「猛毒」を感知したおん! 体力が残り少ないおん!

早く解毒しないと、命の危機だおん!!』


「も……もうどくって……」


 視界が滲む。駄目だ、意識が……。

 薄れる意識の中で、私は体力ゲージが0になるその時を、何も出来ずに見ているしかなかった。


 ***


「んー。ここは……」


 意識を取り戻した私は南瓜公園の入口に立っていた。

 どうやら、私は猛毒で死んでしまい復活ポイントに戻されたらしい。

 記念すべき初死亡。原因は毒死。まさか戦闘以外で死ぬことになるとは。


「ちょっと無限の胃袋だからって、過信し過ぎたわ。無制限に何でも食べれるけど、

状態異常を無効化するとは書かれてないもんね」


 無限の中に巧妙に隠された罠だ。真の敵は自分の中にあり、か。


『>くぅーねるの復帰を確認したおん。新着情報があるおん。確認するおん?』


 んー。ちょうどいい区切りだし、今日はここでダイブアウトしよう。

 情報は……次にインした時でいいや。


『>わかったおん。ダイブアウトの発動を確認したおん。お疲れ様でしたおん。

また遊びに来てほしいおん♪』


 おんちゃんに見送られて、私はVRからダイブアウトした。

 現実のベッドで目覚めた私はVRCヘッドを外して時計を確認する。


「うわー、外が明るくなってる。5時って……2時間しか寝れないじゃん」


 自業自得ですけどね! あー、お腹減った。

 私はベッドを抜け出して、軽くカップラーメンを食べたあと、再び布団へと潜り込んだ。

 当然、この日は大遅刻してしまい、律子から「いやー臣も廃人の仲間だねぇ」と

からかわれたのは言う間でもない。

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