10品目:探索準備
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「ありがとうございましたー。またお越しくださいね♪」
お姉さんに見送られて、私はカフェを後にする。味は文句なし、お腹も大満足である。
ただ、結局カボチンが何なのか教えてくれなかったんだよね……ぐぬぬ。
「南瓜ですよね?」とお姉さんに確認したけど、「カボチンはカボチンです♪」の一点張り。私は正体を解明するのを諦めた。
これから南瓜公園に行くのだから、自分の目で確かめればいい。
「味は普通の南瓜だったけど。何が違うのかな?」
それも、これから行けば分かるか。それより。
「うう。結構出費しちゃった……」
まだ防具も回復アイテムも買ってないというのに、残金は残り700ジュゲム。スキルスクロールも欲しいから、ギリギリだ。
いや、何かを削らないといけない。
幸いだったのは、武器だけは引換券で購入できるので、武器なしでトライという無謀な挑戦だけは、避けられるということだった。
防具もすっぴんではない。一応レア装備であるブローチが付いてるし。
そうすると買うべきものは……。
「最低ラインの回復アイテムとスキルスクロール。あと安い防具があったら買うかな」
で、自販機の前に来たわけだけど、やっぱりぱっと見た感じは。
「現実の自販機と変わらない……けど品揃えが……シュールだ」
あの良く見るジュースの缶やペットボトルの見本が並んでる段があって、
同じような配置で下の段に剣や籠手の見本が、さらに下には、
鎧や胸当て見本が展示している。
「とりあえず、パネルを起動」
動作もやはり普段から良く見知っている自販機と一緒だった。
パネルを押したら、ミニモニターと入力パネルが表示される。
「とりあえず武器の引換からか。調理人、武器っと」
キーワードをトントンと入力すると、すぐさま装備可能な武器一覧がずらっと並ぶ。
「皿、フォーク、スプーン……前作と調理人の武器は変わらずか。
武器っていうか食器? 機材?」
プレート、ケーキフォークは投擲武器。
ペティナイフは接近武器。小ぶりの包丁でダガーみたいに使える。
投げナイフとして使ってもいい。
サービススプーン、ポテトマッシャーは殴打武器だ。
メイスとか棍棒みたい使う。
サービスフォークは矛、中距離武器。フォークだって言わなかったら、
見た目はトライデントっぽい。
「無難にペティナイフかな?」
消化促進のスキルにより、STRが強化された私は
どの武器でも装備可能だったんだけど。
「おおっと……これじゃあ武器を振るっていうより、
私の方が振り回されるわ」
試着で仮具現化したサービススプーンやサービスフォークを握ってみた。
重さは問題ない。装備も出来る。けど、私の身長には大きすぎた。
むぅ、ここでミニキャラが仇になるなんて……。
ということで、扱いやすそうなペティナイフ10本セットを交換した。
防具はカボチンエプロン(300ジュゲム)とストロベリースカーフ(100ジュゲム)を購入。
「うーん。ポーションが1本で150ジュゲムか。ちょっと高いし、
今の私の体力で100ポイント回復は無駄だね」
なにせヒットポイントは20しかないのだ。過剰回復しても意味がない。
「ということで、こっちの小分けにされたミニポーション(20ポイント回復)にしよう。5本入って100ジュゲム。回復量は同じだし、無駄なく使える。
しかも50ジュゲムもお得!」
何か主婦って感じがする。いいぞ、私! れっつ、せつやくぅーねる♪
……そもそもカボチンとお姉さんの誘惑に釣られなきゃ、とかツッコミはナシで!
「残りは200ジュゲムか。さて何のスキルが良いかな」
斬撃系のスキルと投擲系のスキルが欲しいが、200ジュゲムでは買えるものは限られる。
「『拾う』と『投げる』を購入っと」
拾うは採取系の、投げるは投擲の最低スキルだ。どちらも値段は100ジュゲムで買える。
この1つ上のランクにすると値段が150ジュゲムとなり、スキルが1つしか買えない。
「けど、スキルは使い込むとランクアップしていくし、
地道にやっていくつもりだからこれで問題ないね。それにアタッチメントスキルが付く可能性を考えると、1からこつこつ上げても損はないはず」
そう割り切ると、私は買ったばかりの装備とスキルを装着した。
「そして出来上がったのがこちらになりますよっと。『ALLステータス』」
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キャラネーム:くぅーねる(女)
種族:イーターマン【Eaterman】
ステータス一覧
LV:5
JB:調理人(見習い)
HP:20
MP:7
SP:10
STM:∞
STR:10
VIT:8
DEX:10
INT:6
メインスキル一覧:★食べるLv2 ★無限の胃袋Lv3<付属:消化促進Lv1>
拾うLv1 投げるLv1
装備一覧
武器:ペティナイフ(×10) (ATK:3 斬)NEW
頭:見習い調理人の帽子 (D:1 MD:1)
首:ストロベリースカーフ(D:2 MD:1)NEW
体:見習い調理人の服 (D:1 MD:1)
腕:なし
腰:カボチンエプロン (D:3 MD:1)NEW
足:見習い調理人の靴 (D:1 MD:1)
その他:素魚のブローチ (D:5 MD:15)NEW
総合:ATK3(×10)
:DEF13
:MDF20
装備品スキル:墨煙幕 水耐性(弱)
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これでようやく他種族のLv1のステータスにはなったよ。はぁー良かった。私は装備の最終確認をしながら、南瓜公園に向かう。
何度も何度も見直しを行い、大丈夫だと自分に言い聞かせる。
「うう……久々の戦闘だ……不安しかないよ……律子のばかーあほー
親友が困ってる時は傍にいてよー。何のための相棒なんだよ……」
別に律子が悪い訳ではないけど。完全な私の八つ当たりだけど。
今の私が揃えられる最高の装備を装着。スキルも大丈夫。
ここから先は、私自身の腕が問われる番だ。
腕に自信があるかと言われたらNO。
腕に自信がないから前回は安全に余裕持って、相手とレベル差を付けて攻略していた。
だけど今回はそれが出来ないのだ。でもやらなきゃならない。
「私は……やらなきゃいけないんだ!」
そう、全ては料理の為に。
「あれが南瓜公園か」
目の前に管理端末と南瓜公園フィールドへ続くゲートが見える。
オレンジ色の木々が生い茂り、空は不思議な紫色をしていた。ときどき空に黒い鳥? いやコウモリかな、が飛んでいる。
雰囲気がハロウィンパーティみたい。南瓜だからかな?
「おおーなつかしいなーこのゲート。それとこの管理端末」
ゲートの前までたどり着く。
まずは落ち着いて、ゲート傍に設置してある管理端末を使い復活ポイントを設定した。
これで死んでもここからスタートが出来る。
ちなみにこの管理端末は、カミウタ運営チームのお決まりの安心設定で、
フィールドやダンジョンの入口には必ず設置している。
復活ポイントの設定と金庫や倉庫などのサービスを利用している人は、
この端末から各種サービスへとアクセスすることが可能だ。
私も自宅の倉庫へとアクセスすることが出来る。なんか不思議だけどね。
そこはゲームだからってことで納得する。
運営チームの慈悲の心を無駄にしないためにも、復活ポイントは忘れずに設定するのがカミウタのお約束ってやつ。
突入の準備は出来た。あとは一歩踏み出すのみ。
「カボチン捜索隊出動ー!」
ん? お父さんのお使いで来てるだろって? 細かいことは気にしない気にしない。
こうしてようやっと私のフィールド探索が始まろうとしていた。
9/21 22:23 INTの値がおかしいとの指摘があったので修正しました。
誤INT5→正INT6