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カラープレデター   作者: 和銅修一
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チェリーピンク①

「はぁ……」

 光り輝く豪邸の一室。彼女はある人を思いながらため息をこぼした。

「どうしたんですか姉様?」

 そこに扉を開けてある少女が入ってきて、それに気づき彼女はピンク色のクルクルツインテールを横に振り、妹を見つめる。

「蓮香、ノックぐらいしたらどうですの」

「でも姉様、柊先輩のことで悩んでそうだったので気になってしまったんです」

「な! あんなポンコツのことなんて考えてません。あなたは部屋に戻ってなさい」

 霧香はツインドリルを回して怒りを表にする。

「わかりました。ではおやすみなさい姉様」

「ええ、おやすみなさい」

 蓮香はそっと扉を閉めて自室へと帰っていった。

「はぁ……」

 そして再びため息をこぼす。

 今日、転校生から真さんと知り合いだと聞いて胸がチクリとしたがそれ以降は何ともなく四宮 銀九の従姉妹と言うシグレはとてもいい人で話も合う。

 だけどほんの少し、ほんの少しだけ違和感があったことを憶えている。

 彼女は一体何者なのだろう? 真さんとはどんな関係なんだろう?

 ベッドに潜ってもそんな自問自答が続き、なかなか寝付けなかった。




「じゃあ、行ってくるよ」

 パソコンの起動音が響く櫂音の部屋で三人が見守る中、真はこの家の飼い猫である目の前の猫の灰色の毛並みにそっと触れる。

 そして猫の鋭い目に吸い込まれてヴァイスワールドへと乗り込んで行った。

「大丈夫かしらまこちゃん」

 部屋の主である女性は頬に手を当てて心配する。

「大丈夫だよ。真は強いからね」

「ここでやられるわけないわ。でないと私が助けた意味なんてないじゃない」

 彼女らはここで、猫を見つめながら待つしかないのであった。




「ここに来るのも久しぶりだな」

 桜通り。

 七百メートルほど続く道でその道には桜の木が立ち並んでいる。小学校への通学路だったのでよく憶えているが、今通っている高校とは逆方向なのでもう半年ほど来ていなかったがこの世界で来ることになるとは夢にも思わなかった。

「にしても(いびつ)だな」

 桜は満開に咲いていて綺麗なのだが、この世界の空には色がなく少し不気味だ。

 そもそも春でもないのに桜が咲いているところが奇妙だ。

 だが真は前に進む他ない。これは試練だ。そう言い聞かせて桜並木を歩く。




「気をつけないよ。あんたに死なれたら私が困るんだから」

 銀九に挑戦状のことを事細かく伝えた後、自分の部屋に戻って休んでいるところシグレが来た。

「なんだ? そんなに今回の相手は強いのか」

 やけに心配するシグレは見ていて心配になる。

「強いというよりも厄介なのよ。私とは種類が違う色を使うから」

「種類が違う? それは一体どういう風に違うんだ」

「そうね、簡単に言うと能力が違うのよ。私の赤やオレンジは単純な攻撃型能力だけど、あいつのピンクは相手に幻を力があるわ」

 つまり今日の昼休みに襲ってきた幼体の色怪はその相手が創った幻だったのだ。

「何か対策はないのか?」

 突破口が欲しい。なんせ真は今まで自分一人で戦ったことはない。つまり今回はデビュー戦となるわけだ。

「そうね……色の違いを見極めて攻撃をかわすしかないわね」

「違い? 色に違いなんてあるのか」

「あるわよ! いい、これを見て」

 両手の人差し指を立てて、棒状の色エネルギーを形成した。

 同じ赤色だが何かが違う。そう……濃さだ。色の濃さが全く違うのだ。

「色エネルギーは濃さで決まるわ。濃ければその分能力が強くなり、薄ければその分本来の力よりも弱くなるわ。つまりこの濃さを見極めてどれが幻か判断すればいいの」

 簡単な話のように言うが初心者に近い真には少しばかり難しい気がする。

「これからその練習するわよ」

「え⁉︎ これからちょっと休みたいだけど」

「それはちゃんとノルマをクリアできたらね」

「そ、そんな〜〜〜〜〜」

 シグレによる特訓は二時間ほど続き、実質三時間ほどしか寝ていないまま戦場へと向かうことになった。




 どれほど歩いただろう? 五十メートル、百メートル? どちらにしろ先は長い。

 手には道中にあった花壇のレンガの赤色を拝借して構えている。

「準備は万端……」

 あとは迎え撃つのみ。だがこれは意外と精神を削られる。

 いつ来るかわからない。今かもしれない。そんな妄想が自分の頭の中で駆け抜けて自分で自分を追い詰めていた。

 そしてその時は来た。

 ピンク色のエネルギーを纏い、幼体がワラワラと現れた。その数は軽く十を超えていた。しかも今回はそれぞれ刀を持っている。鞘が木でできているような刀だ。

「いや、これは幻だ」

 真はフォームを崩すことなく歩く。

 そんなことは御構い無しに色怪たちは次々と斬りかかる。

 しかしその刃が肉に触れることはなく無残に散って行った。

 色エネルギーでできた幻。様子見として送ってきたのだろうがこの程度ならば真は動じない。

 これもシグレの指導があってこそだ。特訓がなければ今頃、慌てふためいていたところだ。

 だけもわかる。あまりにも小さい色エネルギーの数々を。どうやら幻術には大してエネルギーを使わないようだ。

 それならそれでわかりやすい。シグレの話によると成体の色怪は体内に大量の色エネルギーを貯めてそれで生活をしているらしい。

 だから外ではなく内にエネルギーがある者を探せばいい。

 幻は桜の花びらのような物体にエネルギーを纏わさせているので外側に色エネルギーが集まっていているので区別ができる。

「これならいけるかもしれない」

 流れるように消えていく幻の中でそう感じた……が、急に脇腹に痛みが走る。

「いっ!」

 手を当てて確かめてみるとそこは赤く染まっていた。またもや血だ。

「甘い、本当に甘いですね。こんなのに王の素質があるとは思えませんね。何で赤はあなたみたいなのについたのかしら?」

 そこに立っていたのは幻なんではなく、形のある本物。霧香と似ているようなでも違うピンク色のストレートの髪をもつ女性が立っていた。

 赤は話の内容からしてシグレのことだろう。

「お前が挑戦状を送ってきた奴か?」

「そうよ(くず)、あたしはあなたが王にふさわしい男かどうか確かめに来たんだけど……この調子じゃあ他の王と同じ結果になりそうね」

 期待など鼻からしていないような顔をしてよく言う。しかし……

「他の王?」

「知らないのあなた他にも王がいるって」

 コクコクと二度頷くと彼女はため息をこぼした。

「いい、今は複数いる王の素質を持つ者の中から世界の王を決めているの。そんな時にあんたが出てきたから大騒ぎになったのよ。それぐらい察しなさい屑」

「あの〜〜、えっーとでは何でまだ王が決まってないんですか? 僕なんか無視してその中から決めればいいじゃないですか」

 既に脇腹のダメージより精神的ダメージが大きい真は腰を低くして聴いてみる。

「それはその色怪たち全員に問題があるからよ。それがなかったらもう決まっていたでしょうけどね」

 問題、それを詳しく問いただすのは忍びないのでやめておいた。

「だけどあんた問題はないけどそれ以上に欠点があるわね」

「欠点……ですか」

 緊迫の戦いをしていたはずがお説教タイムになっている。

「まず根性と気合が足りないわ。それに今、あたしの幻を見極められなかったように予期せぬ事態に対する行動がないのよ」

「行動か……よしわかった」

 そう呟くと真は手に持った赤色エネルギーを頭に叩きつけていた。

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