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カラープレデター   作者: 和銅修一
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クリアネスレインボー②

「ったく……シグレのやつ、あんなに殴らなくたっていいのに」

 糸鵜川たちの試験的な戦いを終えて、次の朝。その話をしながら銀九と登校しているところなのだがいつもとは違ってシグレと柑奈がいない。

 柑奈は日直の仕事があるからだが、シグレは何の理由もない。

 ただ単に怒っているだけだろう。こんな時はそっとしておくに限る。

「でも、それは真にも非があるんじゃなない? 確かにシグレさんは少し怒りっぽいけど、理由なしにそんなことする人じゃないよ」

「いや、でも流石にこんなに殴ることはないだろ。痛くてしょうがない」

 頬をさするが、それだけでピリッとした鋭い痛みが走る。

「はい、はい。愚痴言ってないで学校行くよ。僕たちは学生なんだからね。勉強が本分さ」

「勉強だけじゃないだろ。それに俺は王だのなんだのって忙しいんだ。それに……」

「それに、何さ?」

「三納寺さんが去り際に言ってた、橙色に気をつけろって、いうのが頭から離れないんだ。これから何か大きなことが起きそうで」

 何でも知っている彼女。

 その彼女ならこのあと起こることも分かっているはずだ。ならあの言葉には何か意味があるに違いない。

 多分、彼女なりの忠告。

 だが、なぜ詳しいことを教えてくれないのかまでは分からない。

「橙色って、要はオレンジ色なんだろ。ならオレンジ色の王に気をつけろってことなんでしょ。ならそれに注意すればいい事なんじゃないのかな?」

「オレンジか……」

 何回か色エネルギーとして使ったことあるが、あれに特別な力はない。ただ破壊力があるだけの色。

 そんな色に注意が必要だろうか?

 こちらには多くの仲間と王としての力がある。一人ぐらいなら簡単に返り討ちにできるだろうが、なぜか心の中がざわめく。

「だ、大丈夫さ。僕も何もしてないわけじゃない。毎日特訓して新技を編み出したんだ。どんな色怪が来ても真を守ってみせるさ」

 真の落ち込んだ顔を見て、どうにか元気付けようといつもより明るく振る舞う銀九。

 そんな彼女の姿を見て、自分の不甲斐なさに苦笑した。

「ふっ。ありがとな銀。頼もしい限りだぜ。だけど絶対死ぬなよ。俺はそんなこと望んじゃいなからな」

 真の本気な眼差しに、恐怖すら感じた銀九だったがそれは直ぐに見慣れた優しい目に戻る。

「で、でも。僕はもう足手まといになりたくないんだ。死ぬ気で真を守るよ」

「だから俺なんかの為に命なんてかけるなよ。そんな大した人間じゃないんだよ俺は」

 銀九は自分のことを足手まといと言ってるが、真も自分のことを足手まといなんじゃないかと不安に思っている。

 助けられてばかりで嫌になる。もし、自分のせいでみんなに何かあったら自分を許せないだろう。

「そんなことないさ。僕は昔からの付き合いだから分かるよ。みんな真の周りに集まる理由とかね。自分を誇りに思ってよ。僕はそんな真が好きなんだから」

「おま、好きって?」

 銀九は一瞬、呼吸をするのを忘れていた。

「ち、ち、違うよ。人としてだよ、人として。べ、別に男としてじゃないから勘違いしないでよ真」

 銀九は耳まで真っ赤にして、手を振って全力で否定した。

「だ、だよな〜。銀が俺のこと好きになるわけないよな〜。すまんな俺の勘違いで。確かにお前は恋愛とかは興味なさそうだしな〜」

「ちょ、そこまで言う? 僕だって一応女子なんだから恋愛の一つぐらい……」

「いやだってお前、昔からモテて何回も告白されてたけど全部断ってたから恋愛自体に興味ないのかと思ってな」

 銀九は男っぽさを感じられるが時々見せる女らしい笑顔がいいと小学校から有名で、小学校の卒業式には三人同時に告白してきたが断って、中学校の卒業式でも似たようなことがあったほどだ。

 だが告白してきた人に問題があるというわけではない。聞いたところによると、サッカー部のエースストライカーや野球部のキャプテンなど女子に人気が高い人もいたらしい。

 それでも銀九はことごとく断るので、恋愛などには興味がないのだと決めつけていたが彼女の様子からしてそうではないのかもしれないと思ってきた。

「断ってたのはその人が好きじゃなかったからだよ。僕には好きな人が……」

 銀九はそこで口を(つぐ)む。

 思わず、このまま本当のことを言ってしまいそうだったからだ。

「あ、柊先輩」

 そこで一人の見慣れた生徒と出会った。

 クラス委員長、霧香の妹である蓮香だ。

「あれ? 蓮香ちゃん。こんなところで会うなんて珍しいね」

「そうですね。いつもは姉様と一緒に登校しているんですが、今日は忘れ物してしまって一回家に取りに戻ったので姉様には先に行ってもらって私はこうしていつもより遅く来ているんですよ柊先輩」

「そうなのか。蓮香ちゃんが忘れ物なんてのも珍しいな。今日は雨が降るかもしれないな」

 笑って見上げる空はとても青く澄んでいて、雲はまだらにしか存在しない。

「何言ってるんですか? 今日の降水確率は十%ですよ。降るわけないじゃないですか。遂に脳みそが壊れてしまいましたか、ご愁傷様です」

「ちょ、冗談なのになんでそんなこと言うの?」

 いつもはこんなのじゃないのに今日に限ってなぜか蓮香は機嫌が悪く、まるで桜のような罵倒を真顔で連発してくる。

「だって、その……柊先輩がその人とイチャイチャしてたじゃないですか」

「イチャイチャって……」

 さっきまでの銀九との会話が聞かれていたようだが、あれはイチャイチャに入るのだろうか?

 イチャイチャとは無縁で、彼女いない歴=年齢の真には分からない。

「だって、好きがどうとかって話してたじゃないですか。完全にイチャイチャです。リア充て奴なんですか?」

「違うって、さっきはこいつに好きな奴はいるのかって聞いてただけなんだ。勘違いしないでよ」

「へ〜。で、結局誰が好きなんですか四宮先輩」

 この二人は真を通して既に知り合っている。

 凄く仲がいいというわけではないが、銀九の方は蓮香を気に入ってる。

 素直じゃないところが可愛いそうだ。

「ぼ、僕はその……秘密だよ。それより蓮香ちゃんはそういう人いないの?絶対モテるでしょ」

「確かにモテそうだな。大人しい女の子が好きっていう人もいるし、需要はあるだろうなあ〜」

 改めて蓮香の全体を見てみると、それなりにスタイルが良く小柄で可愛い。

 人気は出るだろう。

「需要とかやめてください柊先輩。なんか変態っぽいですよ」

「な! へ、変態……」

 人生で二度目の変態呼ばわり。

 前回は変態から変態と呼ばれたのでかすり傷程度て済んだが、今回は妹の親友でもあり、後輩だ。

 ダメージは相当なもので真は膝をついた。

「蓮香ちゃん。流石に変態は酷いよ。きっと真なりに蓮香ちゃんを褒めてるんだよ。だから許してあげて」

「ん〜……そ、そうですね。褒めてくれているのなら悪い気はしませんし、四宮先輩がそこまで言うのならそうします」

「ありがとう銀九ちゃん。じゃあ、行くよ真」

「あ、ああ」

 真はなぜかモジモジしている蓮香とそれをなだめてくれた銀九が先に行くのを追いかけて行ったが、その背後で目を光らせている二人には気がつかないでいた。

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