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カラープレデター   作者: 和銅修一
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シグナルレッド ③

 シグレは悪くない。

 シグレはただ、敵である色怪を倒しただけで何も悪くない。

 確かに今の赤い血のようなものが体中に飛び散った姿を見るといかれた殺人者みたいだ。

 だが、何度も言うがシグレについているのは血ではなく、倒した色怪が食べた赤色のエネルギーが液状となって体内にあったものである。もし色怪が紫色を食べていたら宇宙人みたいな血になっていただろうし、明るい黄色を食べていたらこの現場も少しマシになっていただろう。

 しかし、今回の敵の色怪は全員、赤色を主食とする、つまりシグレと同じシグナルレッドと呼ばれる色怪だ。これからもこんな光景を見ることになるだろうが、慣れるしかない。

 真はただ、彼女からあまり離れずに後ろからついて行った。




「なぁ、王は特殊な力が備わってるって言ったけど俺はどんな力があるんだ?」

 一行に色怪が現れないので自分も何かできないかと、シグレに聞いた王についての話を思い出しそんなことを聞いてみた。

「そうね、私に頼り切りじゃあこれからが大変だし教えておいた方がいいわね」

 そう言うとキョロキョロ辺りを見渡し安全を確認した後、しゃがんで下に敷いてあったタイルを触った。白とオレンジの二色となっている。

「いい? 私たち色怪は色を食べることしかできないけど王は色を支配できるわ」

「支配? それは一体どういう能力なんだ」

「実際にやった方がわかりやすわ。このオレンジ色に触れてみなさい」

 真としゃがんで言われた通りにオレンジ色のタイルに触れてみた。するとそのオレンジ色は球体となり浮かび上がった。

「な……こ、これは」

「これこそが王の力。色をエネルギーとするのではなく、力への変換する能力よ」




 まるで色はスワイプされたかのように思うがままに動く。なので真は勝手にこの力をスワイプ能力と名付け、球体となったオレンジ色をサッカーボールのようにして遊んでいた。

「凄いなこれ。でもこれでどうやって攻撃しろって言うんだ? お前みたいにこれを腕とかにはでいないぞ」

 頭の中で腕の形をイメージするがウネウネと動くだけで至って変化はない。

「それは単に慣れてないだけよ。しかもその状態の色にそんなこと必要ないわ。攻撃するには普通にそれを相手に投げればいいの」

「それだけか?」

「それだけ」

 真っ直ぐな瞳でコクリと頷かれたので取り敢えず目の前にあった家に投げつけた。

 オレンジ色の球体は一定の速度で飛んで行き、家に当たると弾けて辺り一体に衝撃を伝えて衝撃の中心になった家の一階は粉々になり支えを失った二階は落ちてきて連鎖的に家は全壊した。

「色にはそれぞれ能力があるわ。オレンジは力ね。他にも幾つか能力があると思うから考えて使いなさいよ」

 真は口をあんぐりと開けたまましばらく動けなかった。軽い気持ちで投げたのにこれだ。家の人に申し訳ないというより今壊したのは真の家だった。




「おい! どうしてくれるんだよ俺の家」

 膠着(こうちゃく)状態から我に戻った真はボロボロになった我が家を指した。まるでそこだけ津波や地震にあったかのように見事に壊れている。

「なに言ってんの、それあんたが壊したんじゃない」

「た、確かにそうだがこんな風になるなんて思わなかったんだよ」

「も〜五月蝿(うるさ)いわね。この世界で何か壊れてもあっちの世界じゃあ何の問題もないわよ。だから少しは黙ってなさいよ」

 頭を抱えて鬱陶(うっとう)しそうに吐き捨てた。

「そ…そうか。いや〜よかった、よかった」

 真は心の底から安心した。もし元の世界で家が壊れてて、それが自分のせいだと妹にばれたのなら恐ろしいことになるからだ。詳しくは口が裂けても言えないが。

 と、そんな真とは違いシグレは神妙な顔をしていた。

「お、おいどうしたシグレ」

 その緊迫した雰囲気に気づいた真も気持ちを引き締める。

 一応ここは戦地だ。いつどこで色怪が現れて襲ってくるかわかったものではない。

 精神を集中させて足元のオレンジを球体にして、何かに備える。

 シグレの様子からして何かヤバイということだけはわかった。だから今さっき使ったばっかの技でも頼りたくなる。

「やばいのが来たわよ」

 ザクザクと進んでくるその姿には少し見覚えがあった。先ほどの色怪と同じように服、髪は黒、肌は白なのだが頭に乗っかったリボンは赤色だった。

「か、柑奈なのか……」

 そうその姿はまるで真の妹、柊 柑奈のようであった。

「惑わされちゃダメよ。あれはただあんたの妹の形に似せているだけの色怪よ、本物じゃないわ」

 そんなことはわかっいる。だが、頭でわかっていても体は自然と震えてしまう。これは相手が色怪だからだろうか、それとも愛する妹の姿をした怪物が恐ろしいのだろうか。

 今の真にはどちらかなどわからなかった。だが一つだけ確かなのはこの世界ではやらなければやられるということだ。

 最初に動いたのはやはりシグレだ。一気に距離を詰め、蹴りを顔面めがけて放つ。もちろん色エネルギーを纏った状態でだ。

 色怪はそれを左手で防いだ。

「なっ!」

 シグレが驚くのも無理はない。今まで戦ってきた色怪はこれほど強くなかった。

 だがこの偽妹の色怪は色エネルギーの量の桁が違う。真でもわかるような威圧感がある。

 危険察知して距離をとった。

「ブラッドタイタン」

 巨腕をエネルギーで作り上げ殴りにかかるが色怪はジャンプでよけた。そしてそのまま落下したスピードを利用して蹴りをいれにかかった。

「このっ!」

 左腕で防ぎそのまま吹き飛ばそうとしたが、タイミングを掴まれて避けられてしまう。

「幼体がこんな動きするなんてあり得ない。もしかしてこの幼体、共食いを…」

 共食い、つまり偽妹は他の色怪を食べて大量のエネルギーを我が物したのだ。

 結果はこの通り成功されている。

「またか、俺はここで何もしないでいていいのか」

 信は手を握りしめる。この手は色を操れる手だ。守ることができる手だ。

 オレンジ色をスワイプして自分の手元へと置く。

「ダメよ、あんたは動かないで」

 シグレが叫ぶ中、真は思いっきりオレンジ色を色怪に投げた。だがジャンプでよけられてこちらに向かって来て蹴りを入れられた。

「がっは!」

 肺の中にあった空気が全て抜けて骨が(きし)む音がした。しかも赤い血まで吐き出していた。

 止めを刺そうと振り上げた足。赤色エネルギーが集中してとても今の真には耐えられそうになかった。

 動くこともできないので目をつむった。振り下ろされた足は体ごと飛ばされた。

「ちょっとあんたに死なれたら私も困るんだからちゃんとしてよね」

 意識が朦朧(もうろう)とする中、なんとかまた助けられたんだと理解した。

 そして自分の目の前で広がる血の赤をスワイプしてシグレの目の前へと突き出した。

「シグレ……俺はこんなことしかできないごお前は強い。強さを罪として考えないでくへ。それのおかげで俺は生きていられるんだから」

「あんた……わ、わかったような口聞くんじゃないわよ。でもこれだけは素直に受け取っておくわ」

 シグレは真の血の色をエネルギー化した球体のものを吸って食べた。

「ブラッドタイタン」

 膨れ上がる力。赤き巨人は腕だけでなく、脚、体全てが揃い中心にシグレが立っていた。頭と首がなく不気味な巨人だ。

「これで終わりよ」

 シグレは雄叫びをあげてブラッドタイタンで大ジャンプをすると腕をクロスさせて色怪の元へと飛び込んだ。

 途端、赤が飛び散り辺りに舞う。

「綺麗だなぁ」

 悠々と立ち尽くすシグレに感動しながら真の意識は消えた。

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