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カラープレデター   作者: 和銅修一
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イエローボルト②

「へぇ〜、水面連華を使える色怪がいるなんてね」

 モニター越しで構える彼女を見ながら糸鵜川は驚きを隠せないでいた。

「知ってるんですかあの妙な構えを」

「うん。あれは昔、水王が生み出したとされる奥義だよ。今もなお誰かがその奥義を残す為に引き継いでいると聞いたけど、それがまさかあの()だったなんてね。驚きだよ」

 昔のことは聞いたことはないから彼女が一体何者でどんな力を持っているかは知らないが、仲間であることには変わりない。

 得体の知れない奥義であっても真の目には頼もしく見える。

「でも、あれって溺れたりしないんですかね。周りを水なんかで囲んで」

 見ているこちらが苦しくなってきそうだ。

 だが糸鵜川はため息をついて、呆れたように首を横に振った。

「は〜、学習力が無いね。流石無王だよ。学習能力ゼロ男だよ〜」

「そこまで言うか!これでもクラスの真ん中より……」

 少し上の十位に入るか入らないかぐらいなのだが口は広げられた手のひらで止められた。

「あ〜、そういうのいいから。僕はね、一位だとか最下位だとかは差別とかみたいで嫌いなんだよ。それに一回説明したことぐらいちゃんと覚えてよね」

 スッと画面に指差した。

「確かにこれは色エネルギーでつくられた水だよ。だけどねこれはロブちゃん自身がつくってる。ヴァープちゃんの毒と同じで自分には何の害もないのさ。だから色怪同士の闘いでは相手の力を利用して倒すなんて間接的でない限り不可能なんだよ」

「なら俺たちみたいな王同士だとどうなるんだ?」

「王は色を操って力を引き()り出してるだけで、ロブちゃんやライリちゃん達みたいに生み出してるわけじゃないから理論上は可能だよ。僕はやったことないけどね」

 ならば、何かの役に立つかもしれない。

 今度は忘れないように胸にしまった。

「じゃあ、彼女たちの闘いをここから温かく見守ってやろうか」

 真への説明を終えた糸鵜川はそっと椅子をモニターに向けて実況マイクのスイッチを入れた。




「水面連華……。何かと思えば水を体に纏われただけではないか。そんな技など通用せんぞ」

 叫びながらライリは自分の体全体に電気に変えた色エネルギーを直接流し込んだ。

「やられる前にやる」

 一歩前に出た。

 と思ったら、既にロブの目の前まで近づいていた。

「雷速迅。脳の電気信号を色エネルギーで行ったわ」

 そうすることによって、通常ではあり得ないほどのスピードが出せる。

 これを使って一瞬でロブの目の前まで移動してきたライリは間髪を()れず左拳に電気を流して、素早く殴りかかった。それに体内だけでなく、表面にも流してだ。

 咄嗟に後ろに退いたロブだったが少しかすってしまった。

「これで水を通して電気が……」

 だが、ライリに向けて水の拳が飛んできた。

 まだ雷速迅の効果が少し残ってるライリは何とか予想になかった攻撃を(かわ)させた。

「な、なぜだ。確実に当たったはずだ」

 当たった。

 から、雷を纏わせた攻撃の電気が彼女の体を貫いているはずなのだがその彼女は何事もなかっように立って、反撃までしてきた。

「これが第三の型、連玉水(れんぎょくすい)です」




「先輩ならどうしてロブにライリっていう()の攻撃が効かなかった、何でも知ってる師匠から聞いてるんじゃないですか?」

 彼はその師匠から聞いた様々な話で、とても物知りになっているからあの連玉水という型がどいうものなのか知っているかもしれない。

 あれは傍から見ても仕組みが一切分からなかった。

「う〜ん。まあ、いいけどそんは難しいことじゃないよ。あの周りの水は全て玉の形をしているんだよ。名前の通りにね」

「玉?」

「そう玉。とても小さな玉が離れて彼女の周りを守っているんだ。確かこれはライリちゃんみたいな電気系統の技に対策だったのかな〜。色エネルギーが流れ込んできたらその部分だけ引き剥がして、自分への攻撃を無効化する。絶対防御の型だよ」

 要はロブは電気が流れた水だけを瞬時に取り除いていたのだ。

「絶対防御……」

 急に彼女の背中が大きく見えた。




「連玉水。理屈は分からんがいい技だ。なら一気に決着をつけよう。チンタラしてるとあの変態が実況を始めてしまう。ああ、いった説明くさいのは嫌いでな。種明かしならいつでもできようて」

「確かにそうですね。私もその意見に賛成です。闘いが早く終わるに越したことはないですからね」

 というのは建前で内心では、この水面連華がどこまで持つかが心配だからだ。

 修行では四、五分は持ったけど今の状況を考えると一分か二分と考えるのが妥当。ここは頑張らなきゃ。

 ロブは頬を叩いて目の前の敵に集中する。

「では行くぞ」

 またもや雷速迅で接近して攻撃するライリ。

 だが、当然の如く連玉水で無効化。ロブにダメージはない。

 それを確認したところでライリは後ろに飛んで距離をとったと思ったら電気の風を放った。

 ボルトガイルだ。この決めれれた狭い足場では到底避けきれない。

「第二の型、面守壁(めんしゅへき)

 ならばとばかりに手で床を叩いて色エネルギーを水の壁として出現させて、飛んできた雷は全て水の壁に流れていった。

「それぐらいは予想の範囲内だ」

 水の壁が引くとそこにはライリがいた。

 そして一発、電撃の右ストレートを放つが咄嗟(とっさ)に後ろに下がったロブには当たらなかった。

 連玉水は色エネルギーと集中力を多く使うので、できるだけ使うのは避けたかった。

「そうでると思っておったぞ」

 不気味な笑みを浮かべてライリは床を思いっきり蹴った。

 その足には黄色のエネルギーが纏わり付いていてそこから流れるように天井に達すると、ロブの頭上に集結した。

「ボルトガイルはこの為の布石よ。落ちろ天雷!」

 彼女の叫びと共に落ちる色エネルギーの塊。

「第一の型、水点(すいてん)

 それに対応するために指先に水を集めて一点に集結させて、出来上がった点のような水の玉で突いた。

 天雷はその中に包まれるように入っていき、(じき)に水もその中身を消えた。

「成る程、これでも駄目か。ならばこれは提案なのだがお互い、一番火力のある技を打ち合って決着をつけるのはどうだ。これなら回りくどいことはせんでいいだろう」

 彼女らしい提案で、少し不安ではあったがロブはその提案を受けるしかなかった。

 もう色エネルギーが残り少ないわ。流石に技を連発しすぎたみたいね。

「わかったわ。合図はどうするの?」

「話の分かる奴だ。そうだな合図はお前がやってくれ。どんなタイミングでもこちらは構わん」

「そうですか……なら、一、二の三で行きますよ」

「うむ」

 ライリはその場で仁王立ちして頷いた。どうやらかなり自信があるようだ。

「では、一……二の……三!」

 出すのが早かったのはライリ。

「ボルトアルク」

 体の周りを球体の色エネルギーで囲んでそれを弓代りにして黄色い矢を放った。

 その矢はとても鋭く、空気を切り裂いて音を鳴らしてロブに向かって一直線に突っ込んで行く。

「第四の型、華放月開(かほうげっかい)

 ロブは手のひらから色エネルギーでつくったバラの花に良く似たものを出した。それはまだつぼみだったが一瞬で開いて、そこから水の光線が勢い良く溢れ出て雷の矢に激突して爆発した。

「これで決着がつくと思ったのだが、どうやら予想よりタフな女らしいなお前は」

 変わらず、仁王立ちしているライリは立ったロブを見つめながら苦笑いした。

「私も……あなたは口ばっかの人だと思ってましたけど違うようですね。さっきの技からは色んな執念が伝わってきました。余っ程、練習してきたんでしょうね」

 これこそが真剣勝負。終わった後は、お互いを認め合える。熱き物語です。

 学校中に配置されたスピーカーから糸鵜川の実況が痛いほどに響き渡る。

「でも、これって勝敗はどうなるんでしょう?」

 ロブは指を顎に当てて、首を傾げた。

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