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カラープレデター   作者: 和銅修一
28/33

イエローボルト①

「さぁて、第一試合はシグレちゃんの勝利で終わり次は第二試合はライリちゃんとロブちゃんとの戦いになるのですが、実況の真ちゃんはどちらが勝つと思いますか」

「このノリまだ続けるの?」

 てっきり、一度っきりのものだと思っていた真は意表を突かれた。

「もちろん! で、どっちが勝つと思う?」

「それはロブだろ」

 ここで仲間を選ばなかったら、それは外道だ。それに間近でロブの技を見ている。

 あれが当たれば誰が敵でも怖くはない。

「本当にそうですか?」

 それを知ってか知らずか、糸鵜川(いとうかわ)はニヤニヤと笑う。

「どう意味だよそれは」

 彼が笑うとなんだか不安になってきてしまう。

「まあ、見てのお楽しみってことで、二人の対戦場所は東館の廊下。教室とかに入ったりしたらアウトだから気をつけてね」

「ろ、廊下?」

 さっきは西館丸々使って戦っていたのに、急に範囲が狭くなっている。

「そう廊下。あそこなら不意打ちもできないし隠れることもできないら、いかに工夫して攻撃するかが鍵になってくるね」

 攻撃の方法、タイミング。どれも難しい。

 色怪だからといって試すことに手を抜かないようだ。

 とことん試す。

 そんな策略があるのだと分かる対戦場所だ。

「正面で勝負か。範囲攻撃できる方が有利だな」

「確かに場所が狭くなって範囲攻撃が当たりやすくなってるけど、どうなるかはやってみなきゃわからないよ」

 糸鵜川はモニターを見ながら楽しそうにそう呟いた。




 東館。

 ここは教室、職員室、図書室しかない四つの中で一番寂しい館だ。

 それに今回は廊下で戦わなくてはいけない。さっきとは違って地味な感じがする。

 だけどわがままは言ってられない。

「真さんの期待に応えなくちゃ」

 気合を入れて廊下を歩いて行く。もちろんライリを探すためだ。前回と同様に離れたところで試合が開始されている。

 館の端っこの近くには階段が一つずつあり、それを使って二階、三階へと歩く。

「いたな。これでやっと戦えるってもんだな」

 ロブが訪れた三階にはライリが待ち構えていた。

「え〜と、あなたがライリさん?」

「そうだ。なんか文句がるのか」

「いえ……なんでそんなに男っぽい喋り方しえるのかな〜と思っただけです」

 言動が男っぽすぎて、ロブは戸惑ってしまった。

「ふん、そんなことか。女だからと甘く見られたくないからだ。さぁ、かかって来い。先手は譲ってやる」

「え? でも……」

「ええい、こんな戦い早く終わらせたいんだ。早くかかって来い!」

「は、はい」

 ライリに促されて廊下を走って距離を詰める。

「アウアウェーブ!」

 ロブの得意技。当たったものを鈍足にする水の波がライリに襲いかかる。

「遅い、遅い」

 しかし、それは後ろに飛んで距離をとられてライリには届かず床に当たる。

「ならもっと近づけば」

 パシャリと自分で濡らした床を踏んだ。

「キャウ!」

 すると突然ロブの足元がビリビリとした。

「早さこそ美学だ。早ければ早いほどその分時間を得する。時間っていうのは金では買えない。早さはそれを手にできる。これほど美しいものはない。あんたも早く倒してやる」

 ライリが宣言する時のロブは自分の足の様子を確認していた。

 すると、少し焼け焦げていた。

 彼女の宣言がハッタリではないと身を持って知ることができた。




「おい、ライリっていう()は一体何をやったんだ? ロブの足があんなにもなってるぞ」

 一瞬の出来事でライリが何をしたのか見えなかった真は隣の糸鵜川に怒り気味に質問した。

「あれはライリちゃんが操った雷がロブの攻撃で濡れた水を伝達してロブちゃんに当たったんだろうね」

「雷を操れるのか」

「そう。自分の色エネルギーで雷を作ってるんだ」

 自分の色エネルギーで作ったものは操れる。

 それはシグレの巨腕やロブの水がそれを証明してくれている。

「でも、当たったらビリビリしそうだな」

「ははっ! 可愛い考えしてるね真ちゃん。でもね毒を持つ生物が自分の毒が効かないようにその色怪が作り出したものではダメージにならないんだよ」

「そうなのか。それは知らなかった」

「でも、これだとロブちゃんに勝ち目はないかな〜」

「な!」

「だってそうだろ? 水が雷にどうこうできるわけないからね」

 確かに一方的に負けるなもしれない。だが自分の仲間の勝利を信じるとシグレのおかげで大事なことが思い出せたんだ。信じ続ける。

 今の真にはそれしかできないから。




「どうだ? (しび)れるだろ」

 ライリは足を抱えたロブに語りかける。

「はい……ですがこんなことでは負けてられません。真さんが期待してくれているんだから」

 足の痛みに耐えながら、立ち上がる。

 目の前は自分で撒いた水が見えない壁として立ちはだかる。一歩でも踏み出せばまなビリビリの餌食となっしまう。

 だけど今いるところではアウアウェーブが届かない。ならばとロブは数歩下がる。

「アクアスラッシュ!」

 手を水平にして空を斬る。その勢いで色エネルギーを飛ばして水の刃となってライリを襲う。

「ボルトガイン!」

 ライリはそれを色エネルギーで作った雷を風のように動かす技で弾き飛ばそうとしたが水に纏わり付いただけで勢いは止まらずそのままライリを攻撃しようとする。

 だがそれはライリの素早い動きによってよけられる。

「さっきの水と違って、なかなか鋭いな」

 頬にかすってできた傷から血が垂れる。

「どうしたんですか。その程度なら直ぐに終わらせますよ」

 有効だと分かったアクアスラッシュを連発する。

 ライリはそれを避けることしかできない。

「もう降参したらどうです。この技だと手加減できませんし」

「敵の心配をするより自分の心配をするんだな」

 余裕の笑みを浮かべるライリに少し怖気ながらも水の刃を次々と放つ。

 だがその時、雷が落ちた。

 廊下でだ。

 その廊下の天井から落ちた雷は正確にアクアスラッシュを貫いて相殺した。

「天雷。地面から天井まで色エネルギーを流して、貯めておいたのだ。その技は刃の部分だけにエネルギーが集中していて、他は甘かったからな」

「そこに気づくのもですが、ピンポイントでそこを全部に当てるなんて流石ですね」

 敵ながら称賛に値する。だがそんな暇などない。

 ここで勝って、真さんを楽にしてあげないと。

 ロブの肩にはいつもより力が入る。

 そして徐々に彼女の周りを水が覆い始めて、全体を包み込んだ。

「なんのつもりだそれは。それではわた……俺の攻撃を食らったら痺れて動けなくなるぞ。それとも雷が怖くないというのか」

 この状態でさっきのような雷攻撃を受けたら、水を伝わって中まで来てしまう。

 そんなことロブも承知の上。

 だが対策はしてある。勝つための対策。

「水面連華。押して参ります」

 つま先と膝の向きをライリに向けて、中国拳法のような構えを取った彼女に隙の一文字はない。

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