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カラープレデター   作者: 和銅修一
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ヴァイオレットパープル②

「さて、僕が変態ということがわかったところで、これから第一回戦ヴァープちゃん対シグレちゃんの試合を始めます。実況は変態と言われてたこの糸鵜川(いとうかわ) (みのる)です。そしてゲストは無王の柊 真ちゃんで〜す」

「なんだよこれ……」

 真は椅子に座らせられていた。目の前にはマイク、そしてモニターがある。

 ロブと糸鵜川の色怪は後ろで黙って、その二人の王を見つめている。

「学校には監視カメラを設置してあります。ていうか僕がこの戦いのために一人で設置しました。ヴァープちゃんに手伝ってもらうおうとしたけど断られちゃって……」

「そんなことどうでもいい! これはなんなんだよ」

 何も聞かさせずに座らされて意味がわからない。

「いやだな〜。実況だよ、実況。戦いを盛り上げるためのものだよ」

「そんなこと言って、あんた楽しんで……」

「お〜と、何やら動きがあったようだ」

「くっ」

 この人は何を言っても無駄なような気がする。

 だから今は目の前にあるモニターでシグレの勇姿をみる他ない。

 モニターに穴が空くほどに見つめた。




 ヴァープとシグレはそれぞれ相手を探していた。

 というのも、彼女らのスタート地点は離れているようになっているからだ。これは奇襲、待ち伏せ、罠。どんな場面でも冷静に対処できるか試すために糸鵜川が決めたものだ。

 しかし、ヴァープの衣装では歩きづらく、なかなか前へと進まない。だが西館は四つの館の中で一番狭いところだ。すぐに出会うはずだと階段を上る。

「待ってたわ」

 すると、廊下で堂々とシグレが立ち構えているのが発見できた。

「隠れて様子を見て、隙ができたら攻撃するようにした方がいいんじゃないかしら」

 シグレが待ち構えるのを予期していたかのようにアドバイスをするヴァープ。

「うるさいわね。私はそういうまどろっこしいのは嫌いなのよ。それにあんただって隠れてないじゃないの」

 服装もそうだが足音を立てながら歩いていては隠れる気が無いと見える。

「それは私もまどろっこしいのは嫌いだからよ」

「そう、気が合うじゃない」

「そうね。なら気が合う同士ということで一つ、お願いがあるのだけれどもいいかしら?」

「何よ」

「あなたのおっぱい揉ませてくれないかしら?」

 一瞬、場が凍りついた。

「揉ませてくれないかしら?」

「ちゃんと聞こえたわよ!」

 インパクトがありすぎて一生、脳裏から離れないと思うほどだ。

「なら揉ませてくれるのね」

「そうは言ってないでしょ。あんたはなんでそう揉みたがるのよ。一応、女でしょ」

「女だからよ。女だからおっぱい……ちょっと言い方が下品だったわね。女だからオツパイを大きくしたいのよ」

 オツパイを、オツパイを強調して熱弁する。

「あまり変わってないけれど、なんでそれが私の胸を揉むことに繋がるのよ」

「だって揉めば大きくなるっていうじゃない。でも私のオツパイは揉めるほど大きくはないから他の人のオツパイを揉んでそのエネルギーで私のオツパイを大きくさせるの」

 その平らな胸を触りながら妙な解釈をシグレに打ち明げる。

「なんでそんなに大きくなりたいのよ」

「だって男なんて大きければ大きい方がいいっていう欲の塊でしょ。私はそのことで傷ついたことがあるわ。そんな私を傷つけた男を見返すために大きくなりたいのよ。あなたもどう? 大きくなれば気になる異性もイチコロよ」

 シグレの胸を凝視しながら誘ってくる。

「べ、別に気になる異性なんていないわよ。それにそんな方法で大きくなるわけないでしょ……ってなんで私たちはこんな話してるのよ。戦いよ、戦い」

 シグレは自分の胸を両手で隠しながら顔を赤くする。

 もう緊張感などは軽々と吹き飛んでしまった。

「大丈夫よ。それならすぐ終わるから。これはあの人が退屈しないために」

「あの人? 弱王の師匠のことね。でもすぐ終わるなんて私を舐めてるわね」

 弱王の師匠という謎の人物もこの対戦を見ているだろうが、今のヴァープの挑発が気になった。

「舐めるぐらいなら揉むわよ!」

 真剣な顔つきでハッキリと宣伝した。

「うっさい」

 右から赤い巨腕を出してヴァープに襲いかかるが、ヴァープは軽々と避けた。

「甘いわね。そんな大振りの攻撃は私には当たらないわ」

 ヴァープは今の一手でシグレの特徴を捉えた。

 シグレは攻撃力の高い技を持つが、大振りが多くてエネルギーの消費が激しいのだ。

「まだよ」

 左にも巨腕を出現させて叩き込む。

 しかし、ヴァープは華麗に後ろに飛んでヒラリと避ける。

「無駄よ。あなたに勝ち目はないわ」

「なに言ってるのよ。まだわからないじゃない。一発でも当てれば逆転できるわ」

 それほどの威力だし、彼女に耐久性はなそうだ。

「わかるわよ。私はそんな攻撃に当たるほど馬鹿じゃないわ。それよりもあなたは自分の体に気を使ったらどうかしら?」

 哀れのみの目で薄ら笑うヴァープ。それは勝利を確信した目でもあった。

「なにを言って……あ、あれ」

 ガクンと体が落ちて膝をつく。

 その時にヴァープは何もしていない。

「あんた……何したの……」

 意識があやふやになってきて、ヴァープも姿がぼやけて見える。

「攻撃よ。あなたみたいな下品な攻撃じゃなくて、神秘で高貴な攻撃よ」

「下品って……あんたには言われたくないわよ」

 声が思ったより出ない。それに体がやたらと重っくなった気がする。

「下品じゃないの。あなたはその格好で私にオツパイを揉まれるのよ」

「やっぱりそれかい!」

 最後の力を振り絞って、渾身のツッコミと色エネルギーで作った巨腕を炎に纏わせて攻撃するブレイズレッドを床に叩きつけた。

 そして床が壊れる音と煙でシグレは姿を隠してヴァープの前から消えた。

「また、オツパイを揉めなかった」

 逃がしたことを悔やみ、何もない空を揉んでこの思いを鎮めようとした。




 そんな戦いの中、糸鵜川は

「さぁ〜、どうやらヴァープちゃんの方が有利のようですね〜。これからどんな展開になると思いますか実況の真ちゃん」

 スタンドマイクに話しかけながら、ノリノリで実況をしていた。

「シグレが勝つと信じてるけど、なんでヴァープと糸鵜川先輩が仲良くなれたのわりました。類は友を呼ぶってやつですか?」

 監視カメラを通して試合の流れとヴァープとシグレのやりとりを見ればそれは一目瞭然だった。

「ん〜、それはノーコメントとしてヴァープちゃんの攻撃を受けたシグレちゃんは負けるだろうね」

「確かにシグレはふらついてたが、負けるとは限らないだろ」

 一度攻撃を当てればいいのだ。まだ勝負はわからないではないはずだ。

「あの攻撃を受けたってことは相当なハンデを背負って戦わなくちゃあいけないんだ。逆転は不可能に近いね」

「嫌、そのハンデも乗り越えてあいつは勝ってくれる」

 不可能に近いなら可能に近づくように全速力で走ればいい。

 真は彼女の勝利を祈ってモニターを睨んだ。

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