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カラープレデター   作者: 和銅修一
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ロイヤルブルー③

「で? 奇妙な色エネルギーってのは具体的にどんなのだ」

 真は自分のベッドを椅子にして話を聞く姿勢とった。ロブも真の隣に座った。

 その際、銀九が不満そうな顔をしたシグレは話を続けた。

「それが成体の色エネルギーに似てるだけど動いてる様子はないし、普通より三分の一少ないのが三つ違うところに存在してるのよ」

「強い幼体とかじゃないのか?色エネルギーが成体並みにあるとか」

「新種ならそれもあるかもしれないけれども櫂音さん曰く、前とった新種のデータとは一致しなかったわ。普通の幼体で成体ほどの色エネルギーを持ってるわけないしこれの正体は今のところ不明よ」

 新種、思い出すあの柑奈の形をした色怪と(いびつ)なウサギ型の色怪。

 今だに謎が多いこの色怪は何を目的として動いてるのだろう。真を殺すため、それとも別の何かか。

 どちらにしろ真の目の前に現れたからには必ず真と関係があるはずだ。

 王や真を狙ってくる色怪も警戒しなくてはならないが奴らも見過ごしてはいけないだろう。

「何かわかっていることはないのか」

 そういう謎なものは一つでも情報が欲しい。それが謎を解き明かす鍵となる可能性があるからだ。

「その色エネルギーは青だということはわかっているわ」

「青……か」

 真は小さく、自分に言い聞かせるように呟き、横にいるロブを見つめた。

 彼女は青の色怪だ。シグレのような詳しい名前は不明だがそれは確かだ。

「もしかしたら私の記憶に関係があるかもしれませんね」

「そうね、あなたには櫂音さんのチェックを受けてもらった方がいいかもしれないわね。タイミングがタイミングだし、その可能性は十分にあるわ」

「よし、そうしてくれるかシグレ。ロブも嫌だと思うが櫂音さんは悪い人じゃないからチェック受けてくれないか」

「はい。真さんがそう(おっしゃ)るなら」

 三人はロブを連れて柊家を出て行った。

 ロブは記憶喪失で不安そうにしていたから真も付いて行こうしたが、女同士でないと駄目だと断られてしまった。

 チェックが終わるのは明日の夕方だという。仕方なく引き下がってリビングに行った。

「あ、兄さん丁度いいところに来ました」

 柑奈がエプロン姿で夕食の準備していた。そしてアグは机で行儀よく座っている。

「その……アグちゃんのことなんですが、話を聞いてみると帰るところがないそうなんです。どうやら頼れる大人がいないようで、ですからここで面倒を見てもいいでしょうか?」

 真は唖然とした。これまで自分の友達もこの家に泊めたことない柑奈がアグをここに住まわせていいかと尋ねてきたのだ。

「あ、でも兄さんには迷惑かけないようにします。寝る時は私の部屋で一緒にしますし、服もまだ押入れを探せばあると思います。お父さんは何でも残しておく人ですし」

 そんな父は母と同じく、忙しくて家にはあまり帰ってきたりはしない。

 帰ってくるとしたら誕生日の時か、クリスマスか正月と記念日ぐらいだ。だからあの二人には心配させないために報告はしない方がいいだろう。

 もし、帰ってくる時は必ず電話してくるから、その日だけ四宮家に預けよう。

 ずっとし四宮家に預けるという考えもあるが、あそこには既に二人の居候(いそうろう)がいて大変そうだ。

 いつもお世話になってるしアグをあの二人のいる家に置いとくとどうなるかわかったものではない。

「ね、お願いしますよ兄さん」

 それに柑奈はアグを気に入っているようだ。拒む理由は一つもないだろう。

「わかった。でも父さんと母さんには内緒だぞ」

「ありがとう兄さん」

 今日の夕食はいつもより明るかった。




 次の日、いつもの三人で学校に向かう。もちろんアグを一人にするわけにはいかないので、四宮家に預けてからだ。

 今日の夕方にロブの検査結果が出る。

 櫂音さんが言うには青の色怪のデータは一切ないから一から始めなくてはいけなくて、その分時間がかかるそうだ。

 別にそれは何の問題もないのだがこちらが気になってしまう。

 授業の時なんかはそれの事ばかり考えてて、内容は全く入ってこなかった。

 そして四時間が終わって昼休み。

「真さん、今日は元気ないですわね。何か心配事でも?」

 このクラスのシンボル的存在の苗島 霧香だ。副委員長となり、委員長である彼女と話す機会が増えて仲良くなった。

 最近はたまにこういう風に話しかけてくるようになった。

「ああ、ちょっとあってな」

 弁当の包みを広げて中にある弁当箱を取り出して少し愚痴をこぼす。

 彼女を前にするとなぜか安心するのだ。オーラというか何と言えばいいのかわからないが彼女はそうさせる力があるのかもしれない。

 頼れる存在なのだ。

「そういえば委員長って、俺をさん付けするけどなんでなの?」

 そんな事をふと聞いたのはロブがさん付けしていたのを思い出したからだ。

「それは敬意を払っているからですわ」

「敬意? こんな俺にか?」

 同い年だし、勉強もそれほどできるほどでない。中くらいだ。それに喧嘩も強くない。ヴァイスワールドでも役に立ったことは少ない。

卑下(ひげ)する必要はありませんわ。真さんは真さんなりにいいところがあって私はほれを認めているですから」

 なるばロブも認めてくれたという事だろうか? 他の、シグレとか桜とかとは話していなかった気がする。

「で、それは心配事と何か関係が?」

「少しな、でも委員長と話してたら楽になったよ」

 ここで悩んでいたってどうにもならない。なら、せめてどんな結果が出てもロブを温かく迎えてやる準備をしよう。

 もし、正体不明の色エネルギーがロブと関係性があるなら記憶を取り戻す鍵になるかもしれない。

 迷いを振りほどき、柑奈特製弁当を頬張った。

「それより真さん、いつになったら普通に呼んでくれるですか?」

 いつもの調子に戻った真を見て、霧香は不満そうに言った。

「なんだちゃんと呼んでるじゃないか。もうドリルとは呼んでないし」

 彼女のようなドリルのような髪、というか角というかを生やした新種の色怪に追われてそれを言うのは控えている。

 これはトラウマというやつだろうか?柑奈と似た新種の色怪を見たことがあるが、あれはそれの比ではなかった。戦ったら確実に殺されていただろう。

 それが多分きっかけなのだろうが、ドリルと呼ぶのは自然とやめていた。

 それのどこが不満なのだろうか?

「そうではありません。なぜ名前で呼ばずに委員長と読んでいるんですか!」

「ああ、そっちね」

 霧香の眉が釣り上がる。

「なんで妹の蓮香はよくて私は駄目なんですか。不公平ですよ」

「いや〜、蓮香ちゃんは年下だし委員長ていうのが慣れてきちゃって変えるのが恥ずかしくて……」

 別に嫌というわけではない。ただ言い慣れた呼び方を変えるのが恥ずかしい。それだけ。こんなの誰だってそうだろう。

 だけど今日の委員長は何だが怖い。絶対に引き下がらないという気迫がある。

 こういう時の彼女は何を言ったて聞きやしない。ならば選択肢は一つ。

「委員長がいいって言うならそうするよ」

 これ以上話がこじれて変な噂が広まってしまっては何かと面倒だ。それならここで彼女の言う事を聞いた方が身の為だ。

 それに委員長だと呼びにくい。いい機会なのかもしれない。

「じゃあ、今ここで言ってくれます」

「ここで?」

「そうですわ。何か問題でも?」

 どうやら今日はとことんやるつもりしい。

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