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カラープレデター   作者: 和銅修一
13/33

アンデッドグリーン③

「なんだよシグレ、こんなところに呼び出して」

 夜の恵瑞神社。真は呼び出された。

「まさかとは思うんだが今からヴァイスワールドに行くんじゃないだろうな」

 そう思うのはシグレが四宮家の猫を抱えているからと、銀九、櫂音、桜。

 真が知っている全ての色怪の関係者が揃っているからだ。

「そのまさかよ」

 当然の言葉が重みを持って返ってきた。

「実は緑王(りょくおう)が現れたの」

 王、いつかはこんな日が来るとは思っていた。

 王は一人しか存在してはいけないのにその力を持つ者がいてはいけない。

 これは定められた運命なのだ。

「緑王は緑の色怪で最も優れていると言われるアグを無理やり仲間へと引き込もうのしているわ。彼も焦っているようね」

「ちょ、ちょ、シグレ。ちょっと待ってくれないか? 今、アグって言ったか」

「ええ、それがどうしたのよ」

「俺その子を知ってる」

 四人はその真の素の言葉に驚いた。

「知ってる? 知ってるの! いやそれなら逆に好都合だわ。真にはアグの護衛についてもらうわ。最初からそのつもりだったが知り合いなら大丈夫でしょ」

 シグレは落ち着きながら自分だけで話を進めて行く。

「俺は戦わなくていいのかよ」

 王、王。確かにこれで決着をつけなければいけないという決まりはないが、それだとまた真の心が痛む。

 役に立ってないじゃないかと。

「あいつは、緑王は緑色に特化した王よ。緑色と細胞一個でもあれば復活する化け物。他の色怪からはアンデッドグリーンと呼ばれて恐れられてるわ」

 つまり真がやったことなど足下にも及ばないわけだ。

 シグレたちはそれをどうするのだろうか。

「とりあえず、あんたはアグの元にいて守ってあげて」

「わかった。で、いつやるんだ?」

「今からよ。でないと緑王にアグが取られるわよ」

 猫を投げ当てて強引にヴァイスワールドへと送った。




「動物を愛してる団体に殺されるぞ」

 いきなり送られた怒りから、そう怒鳴ってみるが誰もいなかった。

 他のみんなは何処か別のところへ飛ばされたのだろうか。

 確かにまだそこのところ詳しくは知らない。

 猫を触れたところに着くわけではないし正直不便だ。

「お兄ちゃん……?」

 気づくとアグが服の裾を引っ張っていた。

「アグちゃん。どうしてここに?」

「怖いおじさんから逃げてて……そしたらお兄ちゃんが降ってきたの」

 真が答えの分かっている質問をしたのは真実を確かめるためだ。

 本当にアグが緑王に追われているのか。

「そうか……怖かっただろ。とにかく何処かに移動しよっか」

 優しくそう囁きかけると、アグは小さく頷いて真に歩幅についていく。

 そしてアグは気がついた。真がアグのために歩幅を小さくして合わせていることに。




「あまり利口ではありませんね。その戦略は」

 眼鏡をかけた男性は目の前に現れた女性群を見ながら見下していた。

「それはやってみなくちゃわからないわ」

 最初に先陣を切ったのはシグレ。

 ブラッドタイタンの右腕だけを出現させて緑王に叩きつける。

 肉は飛び散り、血は湧き出る。

 明らかにそれは死を意味していたが緑王にとってはただ肉が飛び散って血が体内から体外へ出たに過ぎない。

 そしてそれらは緑色に輝き出したと思ったらくっついて行き結合した。血も同様に元通りになった。

「だから無理なのですよ。私を殺すのは」

 ずれた眼鏡をクイッと人差し指で掛け直して彼女たちを見下した。




「やっぱりお兄ちゃんも王なの?」

「ん? ああ、そうだな」

 この質問でやはりこの子が色怪であると思い知らされる。

「そういうアグちゃんも色怪だったんだね……」

 色怪にはあまりいい印象がないのでやはり驚いてしまう。

「うん、私の色はアップルグリーンなの」

 アップルグリーン、アップルとグリーンの頭文字をとってこの子は名付けられたのだろう。

 誰が名付けたのかは知らないが。

「これからどうするのお兄ちゃん」

「そうだね、とりあえずここから移動しようか」

 今こうして話している時もシグレたちは頑張ってくれているだろう。ならば何が何でもそれに応えたい。

 できるだけ緑王からアグを離したかった。

 緑王がアグを手にしたら何が起こるかは知らないが何かいけないことが起きそうだ。

「うん」

 アグはやはりいい子だ。王のことを聞かずに来てくれる。

「お兄ちゃんはどんな色が好きなの?私は緑!」

「いや、特に好きなのはないな〜。なんでそんなこと聞くんだい」

「だって王はみんな一つの色を愛してるからお兄ちゃんもそうなのかな〜って思ったんだけど違ったみたいだね」

 ならば緑王はやはり緑が好きなのだろう。

 だが真が好きな色と言われても答えられない。他の王との違いが浮かび上がってくる感じだ。

「だけどね色は好きだよ。世界を綺麗に彩っているからね」

 そう思ったことを述べるとアグは嬉しそうに笑った。




「狂いなさい」

 ピンク色が空中に漂った。

 すると、緑王の上半身と下半身は真っ二つに斬られていた。

「斬られた感触はなかった……なるほど幻覚か。そうして緑色を少しでも多く使わそうとしているのか。悪くない策だが僕には通じないよ」

 冷静に上半身だけの形で眼鏡のズレを直した。

「ならこれならどう」

 銀九が八本の鎖のついた銀球を頭を狙って放つ。

 幻覚で平衡感覚を失っている緑王はそれをよけることはできなかった。

 頭蓋骨が割れる音が生々しく響く。

 だが驚いたことに緑王は顔色一つ変えない。何事も起こらなかったように。

 これが何事にも動じず、冷静かつ素早く正しい行動をする。

 だからこそ彼は自分を鎮めてくれる緑という色が大好きなのだ。

「さぁ、そろそろ飽きてきました。どいてくれませんか? アグに会えませんから」

「そう簡単には会わせないわよ。せめて全部出し切ってか行ってもらわないと割に合わないわ」

 右腕だけブラッドタイタンを出した。そして真の赤の力を見せつける。

 そしてそのブラッドタイタンの右腕が紅蓮に燃え始めた。

 これはいつもは他の部分を出すために使う赤色のエネルギーを右腕に集中させているからだ。

「燃え尽きなさい」

 紅蓮に燃え上がる右腕は大きく緑の男に叩きつけられた。

 叩きつけられた瞬間に辺り一面は炎で包まれた。

 その技を知っていた桜は銀九を抱えて炎を避けるために街灯の上に飛び乗った。

「久しぶりに見たけどやはり赤のこの攻撃は凄まじいわね。まあ、下品なのだけれども」

 桜はこのブレイズレッドと名付けられたその技の後はいつも焼け焦げた匂いがする。

「うっ、凄い……」

 銀九は耐え切れず、鼻を抑えた。

 黒い煙が立ち込めるこの中で立っているのはシグレだけ。立っているのは……。

 風になびく緑王の服の破片、そして彼の特徴と言える眼鏡が燃え盛る大地に転がっていた。

 緑王にとってはそれだけで十分だった。それだけあれば何もいらない。

 それらは緑色に輝き出す。

「まさか……嘘でしょ」

 シグレも、桜と銀九もその光景に目を見張った。

 ただ服の破片と眼鏡があった場所から緑色の輝きで緑王が復活したのだ。焼け焦げた服と溶けていた眼鏡と共に。

「実に簡単な勝利条件だ。たった一つでも自分の細胞を守り抜けばいいんだからね。後は願えば緑色が回復してくれる」

「だけど攻撃できなきゃ結局はただ生きながらえているだけに過ぎないわ」

 実際、緑王はまだ攻撃という攻撃をしてきていない。

「そうだね……、確かにもうそろそろ時間だ。君たちには退場してもらおうか」

 緑王は手を挙げて周りにある緑色をかき集め、それらをシグレたちに振り下ろした。

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