公園での二人③
「どうして俺の大学が分かった?」
まず最初に尋ねることはそれだった。栄二は、かなめに大学の場所を教えていなかった。
元々かなめが詮索するタイプではなかったので教えなかったのである。
「あなたの住んでいるマンションから近い大学はここしかないし、ましてや、東洋史学専攻の大学は多くないわ。だから特定は難しくなかったのよ」
栄二は納得して、首を縦に振った。
「仕事はどうした?」
「今は休み時間。小さな会社だから気楽に働くことができるのよ」
「どこで働いている?」
「『三文社』という出版社よ。それがどうかしたの?」
「君が論文の指導に関して異常にうるさかった理由が分かったよ」
「『うるさい』は余計よ。もう少しましな言い方ができないの?例えば『熱心』とかあるでしょう」
「言われてみればあったな」
「鈍い男ね。これでは就職活動がうまくいかないのも当たり前かもね」
また就職活動の話かとうんざりした。かなめはどうも、この話題が好きらしい。
なぜ最近、就職活動の話題を出すのか理解できなかった。いい加減やめてほしかった。
ふと見ると、かなめが溜息をついていた。初めての光景だった。こんなことがあるのだろうか。
いや、あるはずがなかった。
「私が溜息をつくことがおかしい?私が疲れを知らないロボットだと思っていたの?」
「いや、別に……」
「そういう返答をする人は、大抵考えているのよ」
二度目の溜息をついたかなめは、栄二の横にゆっくりと腰を下ろした。
周囲は静かだった。昼間の公園だから、散歩中の親子や老人がいてもおかしくないのだが、今日は珍しく誰もいなかった。
「誰もいないわね」
かなめが、ぽつりと呟いた。どうやらかなめも栄二と同じことを考えていたようである。
何かを共感するのが、こんなに嬉しいとは考えたことすらなかった。




