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最初の添削⑤

 それがどうしたと思いながらも、栄二は黙して耳を傾けていた。


「そんな人たちを見ていると常に考えてしまうの。この人たちは携帯の中のメールアドレスの人たちといつも電話やメールをしているのか、常に会ったりするのか。もしかしたら、メールアドレスをたくさん持っていることを自慢したいだけなのかもしれないと」


「そういう考えもあるかもね……」


 ひねくれた考えだけどね、と栄二は言いたかったが黙ってあげていた。本当はメールや電話をする友人がいないから、わざと小難しいことを言ってごまかしているだけなのじゃないだろうか。


 正直、かなめの話を聞いてあげているのが自分一人でよかったとほっとした。


 聞く人によっては、かなめの話はただの屁理屈(へりくつ)か頭のおかしな奴のたわごとにしか聞こえない。


 というより、無駄な考えである。


 ところが、かなめはその無駄な考えを熱弁していた。


「とにかく、そんなことを思って以来、私には携帯電話が不要なものに見えてきたの」


「だから解約して持っていないのか……」


 かなめは、こくりと首を縦に振った。重々しい振り方だった。栄二にはかなめの意思の強さがうかがえた。


「その様子だと、携帯電話を持てと頼んでも無理そうだね」


「そうね。諦めてもらうわ」


 立ち上がったかなめは、かばんを肩にかけると玄関に向かった。「見送りは結構よ」と言ったので栄二はそれに従って居間に残った。


「おじゃましました」


 かなめの声が聞こえた。栄二が時計に目をやると、時刻は午後一時だった。


 かなめと一緒にいたのは、二時間程度にすぎなかった。もっと長く過ごしていたと感じていたが、どうやら気のせいだったらしい。


 栄二はかなめに出してあげたコーヒーを見たが、カップに口を付けている形跡すらなかった。


 もったいなかったので、自分が飲むことにした。


 すでに中身は冷めていた。

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