一話 始まりの、夜。
この町ではバカが多い。僕はそう、冷静に判断を下している。
毎晩毎晩同級生とはいえないくらい幼く、バカな連中等がつるんで暴走族とやらで走り回っている。そのたびに警察に通報しているが全く効果はない。そういうところだけ賢いのだろうか。
そんなことはいい。僕がここに記しておきたいのはこの間その人間のクズ――本当、国民から外してほしい。あんなやつらに平等権だの、人権だのあったこっちゃない――らがやっていたことだ。僕がすることは本当に小さいことなのかもしれない。アクセス数が一桁のブログに書いたところで何も変わりはしないかもしれない。だけど、これを読んだ人が少しでも何か考えてくれればいいと思う。
僕はクラッカーだ。
年齢は15歳。数学と情報処理に優れているが、どこかいつも周りと違うと言われてしまう。まぁ、周りがクズばっかりだとそうなるか。
「……またやってるよ。――あ、そろそろハードディスクがいっぱいになるな」
苦手な理科の勉強をしながら机についている6台ものモニターで奴らの行動を監視している。この町のたまり場に監視カメラをこっそり設置しては犯罪を摘発するのが僕の趣味となっていた。警察に証拠を提出すると怪しげな表情で疑ってくるが、まだなにも言われていない。
「なに……やってるんだ……?」
映し出された映像の一つに見覚えのある顔があった。
急いでペンを放り出し、キーボードにコマンドを打ち込む。そして拡大表示をした。
「な、なぎさ!」
僕は息をすることを忘れ、心臓を動かすことも忘れた。両手がかたかたとふるえる。自然と涙があふれ出てくる。
モニターに映し出された彼女は周りからクズ共に何か暴力をされていた。
「……嘘」
僕は我に返り、さらにコマンドを打ち込む。場所を確定。ここからすぐだ。僕は非常用のものを持ち、すぐに家を出た。机の上には万が一に備えてメモを残しておいた。