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一話 「雷鳴」

1945年4月、沖縄周辺のアメリカ艦隊に対して特攻作戦が行われていた。後の世で「菊水作戦」と呼ばれるものである。



九州のとある飛行場の滑走路(滑走路といっても、ただ整地された地面)に、一式戦闘機三型甲 通称「隼」が暖機運転をしていた。その隼に駆け寄る1人の小年兵がいた。


「整備員さん!機体の調子はどうですか!?」


エンジン音が轟く中、少年兵――― 井上翼いのうえつばさが大声で言った。


「エンジンの調子は良さそうです!後はあなたの腕次第です!」


整備員の一人が答えて、微笑んだ。


「分かりました!最期まで有り難うございます!」


翼がそう言い、操縦席に乗り込んだ。そう、この少年兵は今から特攻に向かうのである。この1式戦闘機の他にも、3機の1式戦闘機が暖機運転をしている。どの機体の下にも、250kg爆弾を抱えている。

操縦席に乗り込んだ翼は、無線機の電源を入れた。


(井上、準備できたか。出発するぞ。)


同世代の知り合いの声が聞こえた。


「分かった。靖国で会おう。」


無線の電源を切って、エンジン出力を上げた。


「コンターク!」


英語が訛った言葉を言って機体を発進させた。他の機体も続いて発進して行き、地上では多くの人が日の丸旗を振って見送った。今日の天気は晴れである。



数十分後、眼下は既に海であり、いつ敵襲を受けるか分からない空域となった。翼は無線の電源を入れた。


「敵の空母までどのくらいになったかな・・・」


(さぁな。わかんねえけど、必ず近づいているさ。その時になったら、必ず沈めてやる!)


「・・・・」


翼は、ため息をはいた。どうせ死ぬなら親しい女性でも作っておけばよかった、と思った。

その時、首筋に殺気を感じた。翼は辺りを見回す。すると、太陽を背に、数機の戦闘機が突っ込んできていた。


「上から敵機だ!散開しろ!」


無線機に怒鳴ったが、既に遅かった。1機の隼が機銃弾を浴び落ちて行った。


(谷の機体だ!畜生!)


知り合いの声が聞こえたが、それを聞いている余裕は無かった。後ろに2機が付き、曳光弾が主翼にかすっていた。まずいと思い、辺りを見回した。とちょうどそこに雷雲らしき黒い雲があった。


「おい!あの雷雲に突っ込むぞ!」


無線機に怒鳴った。が、返事が帰ってくる事は無かった。


「くそ!俺1人かよ・・・・。」


歯がぎちぎちと鳴った。が、今は生き残る事が先決である。機首を雷雲に向けた。敵の戦闘機も追ってきたが、すぐに退避した。雷雲に突っ込むのは危険だからである。


雷雲に突っ込み、視界が利かなくなった。所々で稲光がする中、隼は飛行していた。


「くそ・・・。なぜ助けられなかった!俺って奴は・・・。」


そう呟いたとき、目の前が真っ白になった。正確に言えば、雷が隼に直撃した。

その光が消えた後、そこに隼と翼は「消滅」した。彼がその後何処に行ったか、後世では「戦死」したことになっている。



ご感想をお願いします。また、この小説は4日に1回の割合で更新していくと思います。


登場人物紹介


井上翼いのうえつばさ 大日本帝国少年兵(18歳)一式戦闘機に乗り、敵艦に向かって飛んでいたところを攻撃され、雷雲に逃げ込み異世界へ、

性格は優しいが、大切な者や親しい人を攻撃されると性格が一変、攻撃した相手を倒すまで戦い続ける。志は不殺ころさずであり、性格が変わっても相手を殺す事は無い。

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