氷雪の果実と、地熱の完熟イチゴ
①白銀の冬と、緑広がるガラス温室
秋が過ぎ去り、ベルグフェルド領に本格的な冬が到来した。
山あいの領地は一夜にして深い銀世界へと変貌し、
外では地吹雪が吹き荒れている。
防寒着に身を包んだユージーンが案内したのは、
温泉源泉の近くに建設された大きな『地熱ガラス温室』だ。
重いドアを開けると、
十二歳の妹マリアンヌが「うわぁぁぁぁっ……! あたたかいっ!」と歓声を上げた。
室内はぽかぽかと温かく、
地熱パイプが室温を常に二十度に保っている。
そして何より目を奪ったのは、
整然と並ぶ畝に広がる生命力にあふれた緑の葉と、
そこに実る鈴なりの真っ赤な完熟イチゴだった。
②みたての初収穫と、甘い衝撃
「みんな、好きなのを摘んで食べてみて!」
マリアンヌが真っ先に大きな完熟イチゴを口いっぱいに頬張った。
「あ、甘?いっ!
お口の中でジュワッてジュースがあふれてくるよーっ!」
母マリオネットとエレノアも口に含み、
「まあ……! なんという瑞々しさと柔らかな甘みでしょう!」と
感動の溜め息を漏らした。
長男クラウスも完熟イチゴを見つめ、
「冬場、新鮮なビタミンが手に入らなくなるこの寒冷地で、
この完熟イチゴは『命の恵み』そのものになるぞ」と頷いた。
③米粉のイチゴ大福と、ビタミンCの奇跡
厨房では料理長マルタとユージーンが腕を振るい、
『ベルグ特製・冬のイチゴスイーツづくし』が試作された。
新米をついて作った柔らかいお餅で、
甘いリンゴ餡と丸ごと一粒の完熟イチゴを包み込んだ
『和風イチゴ大福』に、
エレノアは「お餅の中に甘酸っぱいイチゴが入っているなんて!」と目を輝かせた。
母マリオネットも「新鮮な野菜や果物が食べられず、
風邪や壊血病に悩まされる領民がたくさんいました。
ですが、このイチゴがあれば冬の間もみんなが健康で過ごせますわ!」と感心した。
④王都への出荷と、氷雪の驚愕
「この完熟イチゴを、保温木箱に入れて
『サスペンション馬車』で王都へ出荷するぞ」
クラウスの指示で、
揺れない馬車に積まれたイチゴが猛吹雪を割って王都へ運ばれた。
数日後。王都の王宮とグレンツ辺境伯邸へ届いた箱が開けられ、
中から傷一つない完熟イチゴと真珠紫のシルク生地が現れると、
「大雪の真冬に、なぜこのような赤く甘い果実が存在するのだ……!?」
と王宮全体が激しい歓喜と衝撃に包み込まれたのだった。




