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翌日から、昴と一緒にカフェをつくるための計画が始まった。
コンセプトは昨日昴が教えてくれた通り、“デジタルとリアルをつなぐ場”。さらに、星見里の良さを知ってもらいたいということから、“星見里の自然を味わえる、デジタルとリアルをつなぐカフェ”ということになった。
食材は主に星見里で育てたものを使う。私が以前訪れた地産地消の食堂と同じような店にはなると思うが、飲食業を盛り上げるためにも、星見里の魅力を伝えるためにも、地産地消が最適だと判断した。
「仕入れはどうする? 一番の問題だよね」
農作業が一通り済んだ十五時、『喫茶きこり』でノートを広げてコーヒーを啜りながら、カフェの構想を練っていた。
店主の三上さんが「あら、二人揃って来てくれたの?」と嬉しそうに微笑む。その目が、やっぱり私たちの関係を勘繰っているようでドキリとしたけれど、昨日から私たちは恋人同士。どう勘ぐられてもまあいいか、という気持ちになっていた。
「一番現実的なのは直売所で仕入れることだな。もちろん、自分のところで作った農作物も使う。あとは、他の農家さんをお手伝いして物々交換してもらうとか。善意で分けてくれるひともいるかもしれないけど、そこはちゃんと等価交換したい」
昴が思った以上に具体的な案を考えているのだなと分かり、感心する。それだけアイデアがあれば仕入れも困らないかも……と商売に疎い私は勝手に納得していた。
とそこへ、ホットケーキを運んできた三上さんが、「あの」と口を挟む。
「盛り上がってるところごめんなさいね。二人、何か楽しそうな計画立ててるのね?」
「え? ああ、聞いてました?」
「もちろん。他にお客さんもいないからねえ。田舎の娯楽なんて他人の噂話がほとんどだから。で、カフェをやるとかなんとか言ってなかった?」
きらりとした視線を私たちに向ける三上さんは、完全に文化祭か何かを楽しんでいる時の学生と同じだ。
「はい、そうなんです。実は波——海野さんと二人で地産地消カフェを始めようと思っていて。“デジタルとリアルをつなぐ”っていうコンセプトで、星見里の魅力をもっとたくさんのひとに知ってもらえたらいいなって」
「ふふん、なるほどぉ」
楽しげに唇の端っこを持ち上げる三上さんはもう、私たちのアイデアに乗ったと言わんばかりの勢いだ。
「それで仕入れ先がどうとかの話をしていたのね」
「そうです。一番大事な部分かなって」
「それならさ、昴くん。ちょっと前に地域おこし協力隊が発足したって話は聞いてない?」
「地域おこし協力隊? なんですかそれ」
昴と一緒に私の首をかしげる。名前からしてなんとなく、何をするひとたちなのかは理解できるけれど、そんな団体が発足していたなんて、知らなかった。
「まだ回覧板で回ってきてないようね。長らく自治体が募集してたんだけど、数日前にようやく発足したようよ。たぶんまだ人員募集していたんじゃないかしら?」
「人員募集……それなら俺も入りたいな」
昴が、迷いのない口調でつぶやく。地域おこし協力隊ということは、おそらく星見里の魅力を発信することが大事な仕事になってくるはずだ。このチャンスをものにするにはちょうど良いと思うのも理解できた。
「村長に話してみて。昴くんならきっと良いPRをしてくれるって信じられるわ。協力隊の力で、食材も供給してもらえるんじゃないかしら」
三上さんの言わんとしていることが分かり、私もなるほど、と合点がいく。協力隊と私たちの利害が一致すれば、良いことずくめな気がする。
「あとは本当に、農家さんと仲良くして仕入れルートを作るのが一番ね! うちの店でも食材を提供してもらっている農家さんが結構いるから、掛け合ってみるわね」
「そこまでしていただいて、いいんですか?」
今日、たまたま『喫茶きこり』で私たちがカフェの計画を話していただけなのに、三上さんにお世話になるのはなにかと忍びない。
申し訳ない気持ちとありがたい気持ちが半分ぐらいで、そっと三上さんを見つめると、彼女はにっこりと笑って「もちろんよ!」と快く返事をしてくれた。




