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「ごめん、やっぱり答えなくていいっ」
焦った口調で彼の言葉を遮る。昴は「は?」と首を傾けて不服そうにした。
「そういうのは、その……もうちょっと落ち着いた環境で聴きたいから」
二人きりの車内だって十分落ち着いた空間だとは思うのだけれど、面と向き合うことができないし、さっきみたいにお互い動揺して事故になりかけたらまずい。
「……そっか。分かった」
昴も、私の気持ちを汲んでくれたのかそれ以上話をすることはなかった。五分ほどして昴の家に着いてからも、なんとなく気恥ずかしくて、普段よりも会話は少なかった。
それからまた一週間、さらに一週間と経過して、私が星見里で暮らし始めてから三週間が経った。その間、例によって朝、昼は農作業に励み、土日の夜は星空ツアーに参加した。さらに、毎日農作業が終わってから夕飯までの時間に役場に向かい、Wi-Fiを繋いでインスタグラムに星見里の景色を投稿する。仕事関係の連絡もその時に返信するようにした。
【9/30 星見里ではお米の他にも、キャベツ、レタス、ブロッコリーなんかの野菜も多くの農家さんで栽培しています。地産地消カフェもあるから、ぜひ観光に来られた際は星見里の味を存分に楽しんでくださいね〜✨】
【10/4 星見里の星空! アンドロメダ銀河が肉眼でも見えます。写真は星空ツアー協会のスタッフさんに教えてもらって、一眼レフで撮りました。めっちゃ綺麗じゃない?♡】
【10/6 そうだ! 食物だけじゃなかった。カモミール、ハーブ、ミント、ラベンダーなんかも豊富です。ラベンダー畑は毎年七〜八月が見頃だよ。喫茶店ではカモミールティーなんかもおすすめ⭐︎ 道の駅でアロマ商品も売ってるよ〜】
星見里の魅力を発信するのに、取り憑かれたように足繁く役場に通った。そんな私を見て、昴は何か言いたげな顔をしていたが、あえて「投稿をやめろ」と口にすることはなかった。呆れているのかもしれないな、とは感じている。
【ハナさん、お久しぶりです。先日に行った星見里への取材ですが、星空ツアーは見られませんでしたが、こちらでPR動画を作成しました。休暇中失礼いたしますが、ご確認いただけますでしょうか?】
『ベストツーリズム』の北村プロデューサーから連絡が来たのは先週、十月三日の朝だった。確認は夕方になってしまったが、五分ほどのPR動画の仕上がりは思っていた以上に美しかった。雨の日だったこともあり、雨の音に合わせてワルツのようなBGMが流れている。私と中井さんがメインで動画に写っていて、村長の木川さんとの対比が活きていた。
【北村さん、お久しぶりです。動画確認いたしました。とても素敵な動画に仕上がっていますね。こちらでよろしくお願いします】
動画の細かい構成などにケチをつけられるほど映像に関して明るくないため、パッと見て良いなと思った感想を素直に伝えた。その後、北村さんから了解の返信が来て、PR動画は無事に世に解き放たれた。
【ハナさんが出てる動画見ましたー! めっちゃ可愛かった。星見里行ってみたい!】
【雨が映えてて良かった。地産地消カフェ行きたいな〜】
【ベストツーリズムさんの観光PR動画にハナさんが出てきてびっくりした〜。星見里って最近テレビでも出てたよね】
動画の反応はそこそこ良くて、私のファンのSNSを中心に良いと言ってくれるひとの投稿が広がっているようだった。




