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きみと、まるはだかの恋  作者: 葉方萌生
第一章 見失っていく

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1-2

 シャラララララン

 シャラララ

 シャラランシャララ


 翌朝、儚いハープの音のアラームで目を覚ます。午前六時三十分。眠りについたのが午前二時過ぎだから、寝たのは四時間ほど。


「ねっむ……」


 半開きの瞼を擦り、うっすらと目を開ける。半分手探り状態でスマホのアラームを切った。

 朝の目覚まし音で不快な気分にさせられないよう、できるだけやわらかな音をアラーム音に設定したというのに、寝不足状態の身体には何もかもが耳障りだ。

 スマホを触ったついでに、今日の予定を確認する。毎日の日課だが、寝不足の眼にスマホの画面は明るすぎて、ウッと両目を瞑った。


「いつものことなのになあ」


 夜遅くまで寝られないのも、早朝に起きなくちゃいけないのも、いつも通り。今日だけが特別なわけじゃない。こんな生活を続けて三年も経っているというのに、悲しいことに身体は全然慣れてくれない。


 カレンダーアプリを開き、ざっと予定を頭に入れる。

 九時から、コスメブランド『セキレイ』さんとPR案件の打ち合わせ。

 十時三十分にアパレル雑誌『HaNa23』の撮影。

 十四時から旅行情報メディア『ベストツーリズム』さんとPR案件の打ち合わせ。

 終わったらYouTube動画の編集。ひたすら編集。編集作業が一番時間も手間もかかる。他人に任せることもできるけれど、私はどうしても自分で編集までやってこそ視聴者から支持をしてもらえると思っている節がある。あと、ちまちまと作業をするのは嫌いじゃなかった。

 予定が全部終わったら新作コスメや次に流行りそうなファッションの情報を集める。あとは、全然仕事とは関係ない時事情報なんかも一通り目を通していく。インフルエンサーなるもの、一般教養の知識も政治、事件のニュースもすべて必要な素養である。


「はーっ」


 考えるだけでめまいがするほど忙しい。

 だから、先の予定は必要以上に考えず、目の前の予定を淡々とこなしていく。時に心の無にして、それでも表情だけは笑顔中心に。

 日々心掛けてはいるけれど、忙殺されているとつい気が緩んで顧客の前で顔が険しくなることがあるから、毎朝鏡の前で笑顔をつくる練習をしている。なーんて、だれにも言えないけれどね。


 情報収集まで終わったところで、LINEの通知が二件来ていることに気が付いた。こんな早朝に誰だろう――不思議に思いながら画面を開くと、恋人の山城裕(やましろゆう)からメッセージが届いていた。二件目のメッセージが「スタンプを送信しました」という一文だったので、なんだろうと思いつつ裕とのトーク画面を開く。


【波奈ごめん、やっぱり俺たち別れよー。おれ、重いひと苦手だしー】


「は!?」


 寝ぼけていた瞳が、カッと見開かれるのを感じた。

 重い内容なのに軽い口調のそのメッセージがぼやけていた脳みそを冴えわたらせる。

 別れようってなんで……?

 しかも、「別れよー」ってなによ。「よー」って。送信時間も気になる。午前三時三十二分。そんな時間に送ってくるってさ、他の女の子と寝てて、乗り換えようって軽いノリで思ったんじゃないかって邪推してしまう。

 裕とは付き合い始めてまだ三ヶ月しか経っていない。昔から、「男女交際は三の倍数の年月に危機が訪れる」なんて言われているけれど、そんなにぴったり三ヶ月でふられるとは思ってもみなかった。しかも私たち、いい大人だよ? 私は二十八歳で、彼は一つ上の二十九歳だった。いい年した大人が、たった三ヶ月でお別れになってしまうなんて。


「やっぱり続かない……SNSの出会いなんてそんなもんよね」


 部屋の中で盛大なため息を吐くと、自分の魂ごと口から抜けていくような気がして、空虚な気持ちにさせられた。

 ここ二年ほど、付き合う男はみんなSNSで出会っている。冗談なのか本気なのか分からないインスタのDMからメッセージでやりとりをした後に実際に対面を果たしたり、あとはファンだという男から熱烈なアプローチを受けたり。私も、恋人がほしいと思っているタイミングであることが多くて、つい“楽”してひとの温もりを手に入れようとしてしまう。出会い方なんてなんでもいいと思ってはいるけれど、私のそういう小賢しい気持ちが相手に伝わっちゃっているのかも。どの男との交際も、数か月で終わってしまっていた。最初は男性のほうからアプローチされることがほとんどなのだが、私が仕事で忙しく、あくせく活動している最中につい彼との時間が減ってしまって別れを告げられる。そんなことの繰り返しだ。でも、私は仕事と恋愛を分けるタイプで、どんなに忙しくても心の片隅ではいつだって恋人のことを想っている。会えなくても心はつながっているなんて、乙女チックな考えで生きているから、実際に会って愛の言葉をささやいたりスキンシップをとったりしたいと思っている大人の男性はすぐに私に愛想を尽かしてしまうんだろうな……。

 それに加えて、裕のように男性のほうから「重い」と言われることが多い。

 会う時間が少ないのに「重い」ってよっぽどじゃない?


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