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「カオリさん……。いや、義姉さん。あなたの目に、僕はどう映っていましたか?」
フウマに手を包まれて温もりを感じた。ガスコンロの仄かな灯りが広がって風磨の顔が見える。視線をずらすと彩花、健がいる。
唐突に理解した。今まで一緒に闇鍋をしていた相手が風磨と健と彩花だと。
確かに風磨の声だった。
健の声だった。
彩花の声だった。
なんで今まで気付かなかったのか自分でも分からない。
この闇鍋の世界は、誰かの後悔や苦悩が、優しく私の耳に届く場所だった。音があって、色があって、匂いがある。一人取り残されるようにそこから離されると、何も感じない世界に戻るだけだった。
……人の気配があるこの場所が救いに感じていたけど、大好きな三人と一緒だったからなんだね。
健、彩花、風磨。
声を出して言うつもりなのに何も響かない。ただ、口をぱくぱくさせるだけだった。
どうしたものかと声を震わせようと、喉に意識を向けるけど声は出ないまま。困り果ててみんなを見ると、その視線は私の膝元へと向かってきた。膝に温かい重りが乗った気がして、私も自分の膝を見る。
そこには、淡い緑色の光に包まれた猫ぽい何か。私の膝に頬をすり寄せ、眠そうに手で目をこする。
肉球がかわいいなと思った。不思議と何も怖さは感じなかった。
ペロペロと、目をこすった手を舐める。その視線の先で、私と猫ぽいものの金の瞳が合った。
にゃー
ほわぁっと喉に温もりが広がって、声がでると分かった。
「……風磨、健、彩花」
名前を呼ぶと同時に顔を確認していく。
「風磨、健、彩花。……なんで今まで気付かなかったのかな。そうだよね……。ずっとみんなの声だった」
やっと会えたと静かに思う。ずっと会いたくて待っていたような気がする。嬉しくて仕方がないのに、不思議と心の中は、目覚めたばかりのまどろみのような静けさだ。
にゃー
私の手元の取り皿には、誰も入れた覚えのないソレが盛られていた。




