【第3話 請求書が支払われない! ギルドの闇に立ち向かう】
納品翌朝。
俺はギルドのカウンターで、リナから受け取った封筒を二度見した。
「……銀貨120枚?」
契約書には金貨28枚+銀貨800枚って書いてあるのに、目の前にあるのは銀貨120枚だけ。
「す、すみません和真さん……上層部から『新人の単価は一律下げろ』って急な通達が……」
リナは顔を真っ赤にして俯いている。
俺は深呼吸して、笑顔を作った。
「了解です。じゃあ残りはいつ払いになりますか?」
「……来月まとめて、かも……」
来月まとめて(かも)。
社畜の俺が一番嫌いな言葉ランキング第1位。
「……ちょっと待っててください」
俺はカウンターの奥に座ってる、脂ぎった中年ギルドマスターを指差した。
「あの人と話がしたいんですけど」
ギルドマスター(名前:バルガス)は、でっぷりした腹を揺らしながら近づいてきた。
「なんだ新入り、納得いかねぇのか? お前みたいな怪しい合成士は単価下げて当然だろ」
俺は静かに契約書と納品書をテーブルに置いた。
「王国直轄の緊急依頼ですよ。俺は105体を72時間で納品しました。中ボス5体も含めて」
「うるせぇ! お前が作ったモンスターは全部『未登録種』だ! 危険だから半額以下が妥当だ!」
未登録種……確かに全部俺のオリジナルキメラだ。
俺はニコニコしながら、懐から一枚の紙を取り出した。
「じゃあこれ、王国冒険者管理局発行の『新種モンスター登録申請書』です。昨日夜中に王都まで馬車で往復して提出してきました」
バルガスの顔が青ざめる。
「な……!?」
「審査は最短即日。もう承認下りてます。登録番号も振られてるんで、未登録種扱いは無理ですね」
さらに俺は、もう一枚の紙を出す。
「あとこれ、105体のモンスター全部に掛けた『労災保険』の領収書です。配置中に冒険者に殺されても補償が出るようにしてます」
バルガス、完全に無言。
「で、支払い遅延に対する違約金は契約書第12条で1日につき総額の5%ですよね?
今日で2日目だから……金貨28枚の10%で金貨2枚追加でお願いします」
俺は最後に、満面の笑みで言った。
「請求書、再発行しておきましたので。今すぐ全額現金で」
ギルド内がシーンと静まり返る。
リナが小声で呟いた。
「……和真さん、怖い……」
その時、扉がバーンと開いた。
「おーい! 和真さーん!」
現れたのは、昨日俺が納品した鋼鉄ワイバーンを倒したらしい、フルプレートの女騎士(Lv68)。
「あなたが噂のモンスター屋さん!? 最高だったよ! あの中ボス、マジで強すぎて燃えた!」
彼女は俺の肩をバンバン叩きながら、バルガスを睨んだ。
「で、報酬まだもらってないって聞いたけど? 王国騎士団直属の私が保証人になるから、さっさと払ったら?」
バルガスの額から汗が滝のように流れる。
「……即、即金で払います! 今すぐ!」
30分後。
俺は金貨28枚+違約金+手数料で、合計金貨31枚を手に工房に帰った。
プースケが「ゴブー!」と出迎えてくれる。
俺は金貨をチェストに放り込みながら呟いた。
「ブラック企業はどこも同じだな」
でも、なぜか気分が良かった。
この世界で、俺はもう誰にも搾取されない。
俺は自分で値段を決め、自分で納期を守り、自分で請求する。
今日から本当の意味で、「モンスター派遣会社」を始める。
看板を新しく作り直した。
【佐藤モンスター工房 株式会社(仮)】
モンスター不足なら、俺に任せろ。
次回、第4話「王都進出! エルフ美人との契約戦争」




