【第2話 納期3日で100体! 失敗キメラ量産の悲劇】
村の冒険者ギルド支局・受付カウンター。
「え……3日で100体、ですか?」
金髪ポニーテールの受付嬢(名札:リナ)が、俺の顔と契約書を5往復させた。
「はい。弱〜中級でいいんですよね? 平原・森林配置可で」
「……和真さん、前科なしの新人さんですよね?」
「今日登録したばかりです」
リナはため息をつくと、奥の棚から分厚い書類を引っ張り出した。
「では、前払い30%で契約成立です。納期は明後日の夜明けまで。遅れたら違約金1体につき銀貨50枚ですよ?」
「了解。違約金は払いません」
俺は前払い金(銀貨240枚)を懐にぶち込み、ギルドを出た。
残り72時間。
目標100体。
1時間に約1.4体作らないと間に合わない。
「……社畜の血が騒ぐぜ」
まずは拠点確保。
村外れの廃墟小屋を銀貨20枚で1ヶ月借りる。
扉に手作り看板を貼った。
【佐藤モンスター工房 営業中】
作業台(空中展開)とチェストを設置。
インベントリに放り込んだ原木・石・スライムボール・ゾンビ肉を山積み。
「よし、量産開始だ!」
──1時間後。
【ゾンビ+スライム】→ ゾンスラ(弱)×12
【ゴブリン+骨】→ スケルトンゴブ(中)×8
【失敗作】→ ゴブスラゾンビ(可愛いけど臭い)×5
「……失敗率高すぎだろ」
合成テーブルって運ゲー要素あるのかよ。
マイクラの醸造みたいにポーションじゃねぇんだぞ。
しかも失敗作は勝手に俺についてくる始末。
「ゴブ……ゴブスラ……」
プルプル震えるゴブスラゾンビが足元で擦り寄ってくる。
臭いは腐った納豆+生ゴミ。
「……お前はマスコット枠な」
名前を「プースケ」と即決。
──36時間経過。
体感時間は完全に社畜モード。
目が充血。手が震える。カフェイン代わりにマナポーションをガブ飲み。
現在の成果
・納品可能品 68体
・失敗作(マスコット候補) 19体
・寝不足による幻覚 3回(上司の顔が浮かぶ)
「あと32体……」
素材が尽きた。
仕方ない。夜の森へ素材狩りへGO。
普通の人間なら死ぬような深森でも、俺にはインベントリがある。
ゾンビの群れを見つけても冷静に骨と肉を回収。
スライムは跳ねてくるけど、石の剣で一撃。ドロップは即回収。
……完全にゲーム脳になってる自分が怖い。
──納品前夜。
工房はモンスターで溢れかえった。
「ゴブ……」「スラ……」「ガシャガシャ……」
68体の納品用モンスター+19体の失敗キメラが狭い小屋で蠢く。
プースケだけは俺の肩に乗って寝てる。
「明日朝イチで納品だ。寝る暇ねぇ……」
その時、扉をノックする音。
「佐藤和真さんいらっしゃいますか? ギルドの者です!」
開けると、リナが青ざめた顔で立っていた。
「大変です! 依頼内容が変更になりました!」
「は?」
「王国直轄の緊急指令です。平原に配置する100体に加えて、明日の朝までに『森の奥ダンジョン』に中ボス級を5体追加で……」
俺は一瞬、頭が真っ白になった。
「……追加で中ボス5体? 納期は?」
「明日の朝9時です……」
残り8時間で中ボス5体。
俺はゆっくりと笑った。
「了解。追加料金は1体につき金貨5枚で」
リナが目を丸くする。
「で、できますか……?」
「できます。俺は納期を守る男ですから」
扉を閉めて、俺は最後の素材を合成テーブルに叩き込んだ。
【ワイバーン肉+ドラゴンスケイル+魔石大】×5
失敗したら即死級の素材費。
光。
光。
光……。
5連続成功!!
【鋼鉄ワイバーン・改(Lv42)】×5体 誕生!
俺は満身創痍でモンスター軍団を連れ、夜明け前の平原へ向かった。
東の空が白み始める頃、俺は100+5体のモンスターを完璧に配置完了。
ギルドの検査官が来て、目を剥いた。
「こ、これは……全部新種じゃないですか!?」
「納品書と請求書です。追加の中ボス5体分も含めて合計金貨28枚+銀貨800枚でお願いします」
俺は倒れ込むようにその場に座り込んだ。
プースケが「ゴブ……」と俺の頭を撫でてくる。
……やっと終わった。
社畜時代よりキツいかもしれない。
でも、なぜか胸が熱い。
俺はこの世界のモンスター不足を、確実に一つずつ埋めていく。




