第十三話 白狸の舞
「はははは!一匹狼とはよく言ったものじゃなぁ。」
灯明皿の薄灯りに照らされた駐屯所の奥の間に、弥又の豪快な笑い声が響く。しかし笑っているのは弥又ひとりだけだった。
依然として武官たちの間には重たい空気が続く。
「敵は術で狼を産み出しているとして、一体何者なんです?」
「分からん。」
喜市の問に弥又が飄々と即答した。相手が何者なのかなど、さもどうでもよいことかの様に弥又は言葉を続ける。
「分からんが、倒さねばならん。」
弥又はすくと立ち上がった。
「お主らの到着と共に郷のものらはわしの結界へと避難させた。わしは先代から託されたこの郷と同胞らを護らねばならん。」
弥又は顔に張り付いた薄笑いを開いた扇で隠し、喜市の前までそろり歩み寄ると、座る喜市を見下ろした。
「お主の覚悟はいかほどか。」
喜市の頭上に重たい声がのし掛かる。
問われた喜市は居ずまいを正し頭を垂れた。そして意を決し顔を上げると、上目で弥又を睨め付け、強い響きでぴしゃりと答えた。
「この身など、とうに惜しくはございません。」
喜市の言葉に、他の武官も一様に頷く。
「……そんなっ!」
華江は驚き慌てて口を出す。
「私は喜市さんが大事です。喜市さんだけじゃなくて皆さんも。無茶はしないで下さい!」
華江の言葉に喜市が微笑む。
「そういう貴女様だから、護りたいのです。」
「けど…!」
「はっはっは。若い若い。実に宜しい。」
華江の説得しようとする声を遮り、弥又は愉快そうに笑った。
「まあ実際ギリ合格ってぇところじゃが……心意気は買った!これを持って行け。」
弥又は手に持つ金ぴかの扇をパチンと閉じて、持ち手を喜市に向けて差し出す。
「お主が扱えるかは……正直分からん。……が、好きに舞ってみせい。」
「……はっ!」
喜市は弥又から扇子を両手で受けとった。
(重い!?鉄扇にしても……この重量!)
床まで手か沈みそうになるのを堪え、扇子を懐に差した。
「出陣する。右竜爪軍の六名は私に続き黒狼の殲滅を。私が術者を炙り出し、叩く。」
「「「「「「はっ!」」」」」」
喜市の指揮に武官六人が同意し頭を垂れて礼をする。
「では我らは後方より援護致しましょう!」
堂森が切り出す。
「よろしく頼みます。」
喜市が頷いた。
(私は……。)
「わ、私も!堂森さんと一緒に後ろに居ます!」
華江の発言に、喜市が何か言いたげな顔で華江の方に顔を向けたが、華江は絶対譲らないと眼差しで訴えかける。
「はぁ…分かりました。危なくなったら直ぐに隠れて下さい。堂森殿、華江様をお願いします。」
「あい、任された。」
不意に弥又が顔を上げた。ピクピクと白いふさふさの耳が動く。
「来たか……。わしも後方より援護するかのぅ。」
郷の門前には、闇に光る無数の眼があった。金色の眼だけが暗闇に浮かび上がっている。
門の見張り台に篝火が灯る。門の上にも順に篝火が灯され、辺りが一気に明るさを増す。
門の上から外を望めば狼の大群が数十頭、門を囲む様に群がり唸り声を上げている。
「わらわらとまぁ…。」
弥又はうんざりとでも言うように丸い眉を下げ、眉間に皺を寄せた。
「ん?」
弥又が狼の群れの奥に何かを見つけ眼をこらすと、暗い中に人形の影が見て取れた。
「いくら暗がりの中とは言え、術者が出てくるとは嘗められたものじゃな。」
(それか腕っぷしに余程の自身があるか……。)
「杖なぞ爺くさくて好かんが、まあよい。……皆構えよ。一斉にゆくぞ。」
「「「「「「はっ!」」」」」」
弥又の号令で皆が身構える。
門の上の駐屯兵が一斉に矢を携える。
華江も宝弓を構え宝箭を携えた。
弥又が老人姿のおりに突いていた杖を右手で高く掲げると、郷の門の上空に、青い炎が無数に浮かび上がる。それは大きな門の端から端まで広範囲に出現した。次第に青い無数の炎が花火の様にバチバチと爆ぜだした。
「久々じゃがどうよ。美しかろう。ほれ、浜木綿の花のようであろう。」
爆ぜる火花は郷の名でもある浜木綿の花のようで、一見幻想的である。
(弥又様の術すごい!)
華江は左右を見渡し、一度に広範囲を守備する弥又に感心した。
(私もここからなら!……今度は私も役立ちたい!)
華江も弓を引き絞ると青く光る宝箭が彗星のように一際輝きを増す。
暗闇に眼をこらす弥又。黒狼の群れの奥でこちらを伺う人影が微かに揺らいだ。
「放て!!!!!」
弥又の合図で一斉に攻撃が放たれた。
駐屯兵達の弓矢は目下の狼を一掃し、弥又の放った青い火花は爆弾の様に、着弾と共に派手に爆ぜて狼達をバラバラに吹き飛ばす。
門前の敵が片付くと間髪いれず門を細く開け、隙間から喜市と武官六人が馬で外へと飛び出す。
門前に立ち込める爆発の土煙を抜けて、喜市は自身の最速で狼の群れの只中を駆け抜ける。
(狙うは大将首……!)
群れの後方で術者が両手で印を結ぶと、低く風が吹抜け地面から黒狼が次々出現した。
郷からの先制攻撃で減った分、黒狼は直ぐに補充された。
それでも喜市は止まることなく駆けた。馬上で剣を抜き、飛び掛かる黒狼を切り飛ばしながら馬を進める。
「どうか!喜市さんの道を切り開いて!護法夜叉・加護の一射『守護宝箭』。」
華江は弥又の合図で矢を射ず、意図してずらして今、渾身の矢を放った。
矢は喜市の脇を追い抜き、黒狼を消滅させながら真っ直ぐ太い一本の道を作り出す。
(!!……これが華江様の御技!)
「ッ!!?」
奥の人影は慌てて印を解き、背負った大太刀を抜刀する。矢をはたき落とそうと大太刀を振り下ろしたが、矢の勢いを殺しきれず、人影は後ろへと圧されじりじりと後退する。
「チッ…。」
矢を落とせないと判断し、大太刀で矢の起動を右にそらして自身は左に身を躱す。と同時に左から鋭い斬撃が打ち込まれた。
「……これを躱すとは。」
「我に一撃入れるとはな。」
喜市の鋭い斬撃は、人影の左肩を掠めたが傷は浅い。
喜市は馬から飛び降り、一度剣を納めて間合いを見定め、抜刀の構えをとる。黒い衣の人影も、喜市との距離を計りつつ大太刀を構え直す。
先ほどまで雲で隠れていた楕円の月が顔を覗かせ、向き合うふたりを照らした。照らされた人影は、短い漆黒の髪に鋭い金の瞳をした青年だった。頭に大きな耳をのせ、背後で尾がゆらゆら揺れる。
「私は腕を落とすつもりだったのだが……。」
「ならば、まだ踏み込みが甘い。」
「抜かせ。」
喜市は持ち前の瞬速で間合いを一気に詰め抜刀する。それを見切った青年が喜市の剣を躱し大太刀を振り下ろした。
すると喜市は身をよじり最小限の動きで大太刀を躱し、間合いの中から下がることなく、体を翻して横なぎに一撃を打ち込む。
放った一撃は瞬時に大太刀で防がれたが、喜市は手首を返すと続けて下から上へともう一撃放った。
青年は片手を大太刀から離し、間一髪下からの斬撃を躱すと一旦喜市から距離をとる。
(動きが剣士のそれじゃないな。)
「ふん。お前…何者だ?」
面白いと言わんばかりに微笑み、青年は喜市に尋ねる。
「こちらの台詞だ。……お前は何だ。何故、御使い様を狙う。」
「……『何だ』と言われたら……何だろうな。亡霊のようなものか。『何故』の方は、まあ命令だから……だ。」
「…命令?」
「そう、命令だ。狩りをすれば更に力が貰える。それだけだ。」
「……誰から。」
「……さあ?」
大太刀の青年は、グッと地面を踏み込むと、瞬きの間に喜市の目前まで距離を詰めた。
「!!」
重たい武器をものともしない俊敏さに驚き、喜市が後ろに飛び退く。
「誰でもいい。」
(はやっ……!)
喜市は飛び退いた先に回り込まれ、背後から重い一撃を浴びる。空中で身を返し、剣で大太刀の斬撃を受け止めるが、青年の一撃は喜市を軽々吹き飛ばす。
「ぐっ!!」
「我は力を与えられた。別に恩も義理もないが、その力を存分に振るいたい。それだけだ!」
喜市は転がりながらも咄嗟に受け身を取り、後方に吹き飛びながら上体を起こし立ち上がるが、足は踏ん張れど勢いは止まらず、まだ後方へと圧される。
喜市が圧されながらも顔を上げると、視界に爛々とした金の眼が移り込んだ。
(不味っ…!!)
「がぁッ!!」
青年は腕一本で大太刀を振るう。喜市は容赦ない追撃を反射で受け止めたが、大太刀の質量での横殴りの重い斬撃は、またも軽々喜市を弾き飛ばす。
(この身体能力は人のそれではない。……やはり狼の……精霊か式神か。)
喜市は弾かれて後ろへと体勢を崩すが、剣を持たない左腕一本でバク転して飛び、斜め軸に回転して着地しする。
喜市は受け止めた重い一撃による腕の痺れに、奥歯を噛みしめて耐える。
「 どうした。速さは何もお前だけの専売特許じゃない。」
大太刀を担ぐように構えた青年は、強く踏み込み地面を割ると、容赦なく喜市へ距離を詰める。
「私は………。」
(私の…速さは…。)
どうやら私には才能と言うものがあるのだと。物心が付く頃には、玩具と信じて疑わなかったあらゆる暗器を一通り使いこなしていた。面白いほど器用に覚えるからと、父が揃え与えたのだと母から聞いた。それは大いに喜ばれ、結果として家業をこなす上での助けとなった。
『国の為に生きなさい。』
『国の為?何でです父上?』
『それが誉だからだ。』
『誉…。』
幼い私には漠然とし過ぎていた。
『誉……。この赤く濡れた両の手が誉…。』
特に何も感じない淡々とした作業だった。
『これは国を護る大事な仕事だ。』
『はい。父上。』
いつしか疑問さえ消え失せた。
『お前は誇りだ。』
仕事をして褒められて、私にとってそれは普通で。
普通じゃないと知ったのは、雪降る椿のあの庭だったか……。
『そなたは椿の花のようだ。』
そう言われ私は顔を歪めた。
『椿の花はぽとりと落ちて朽ちるのです。まるで人の首のよう。』
私の発したその言葉に、少年はえらく面食らっていた。
ああ、私は普通じゃない。
それを知るのが遅すぎた。
距離を詰めて目前に迫る大太刀の青年が、右手に担いだ大太刀を振り下ろす瞬間を狙い、喜市は袖に仕込んだ柳葉飛刀を近距離で打ち込んだ。
「!」
青年は左腕を盾にし飛刀を防いだ。
「暗器とは小賢しい!」
もう一本飛刀を打つと、青年は素早く喜市の正面を避け、低い姿勢から斜めに喜市を薙いだ。
「!??」
青年の大太刀は、何もない虚空を切った。
ドコン!!!!!
「がはぁっ!!」
青年はあるはずの手応えがないことに驚愕する間もなく、後頭部に受けた強烈な衝撃により、顔面から真下に叩き付けられた。
めり込んだ青年の頭を中心に、地面が円形に陥没する。
「……なるほど。これは実に良い。」
陥没した円の際へと着地した喜市は、バッと扇を広げ見る。開いた扇は弥又の渡したものより遥かに大きく、目測にして三尺(約90cm)を遥かに超える。
「ふははは!何じゃあれ!?わしの扇でしばきおったんか!」
遠く郷の門の上で弥又が腹を抱えて笑う。
「ひぃwひひっwww 好きに使えとは言ったが、んな使い方ww 」
目尻に涙を溜めて笑う弥又は手の甲で涙を拭う。
「誠……愉快愉快よ。」
(賭けは賭けじゃが賭けてみたいと思わされた。)
「まあそれも才能よな!はっはっはっは!」
「んぐぅッ……。」
(今…何が起きた……!?)
青年は両腕で地面を押して、めり込む頭を持ち上げた。
(あの一瞬……。)
青年が二本目の飛刀を躱し低い姿勢に入った瞬間、喜市は刀を手放し大太刀の影に隠れて飛んだ。喜市はその身軽さで青年の視界から姿を眩ませ、青年の振り抜いた大太刀の身幅の上に着地した。そして大太刀の上から真上に飛び、青年の頭を目掛け真下に鉄扇を撃ち込んだ。
「……お前のその動きはなんだ!普通じゃない。」
「ええ。どうやらそのようで。」
「お前、誠に人か!?」
「さあ……どうなんでしょう。」
(人でなくともいい。化物だっていいんですよ。もう別に何だって。)
喜市は大きく変化した扇を閉じて肩に担いだ。
『当分は、あの方の護衛につけ。』
『はい。父上。』
私より幾つか幼いその童は、母を失くたばかりだった。何に気を遣ってか城内では気丈に振る舞い、いつも凍てつく庭の隅で隠れるように泣いていた。
しんしんと降り積もる雪と静寂に、赤い椿だけが浮く。その年の初雪だった。
『…ぐずっ…今日は一段と寒いな。』
『風邪を引きます。』
『…そうだな、すまない。先に戻ってくれていい。』
『いえ。仕事ですから。』
膝を抱えて踞る童は、暫くすればスクっと立ち上がり、また自分で歩き出す。私はただ影となり、その小さな歩みに着いて行く。
(そういう任務で、これが仕事だ。)
明くる日も、また明くる日も、変わらず庭で泣いていた。私は何をすることもなく、ただ影に潜んだ。
不意に白雪に紛れ銀光が閃く。
ガキンっ!
ぐあっ!
『!!!』
静寂を割くような金属音と断末魔に、俯く童が顔を上げれば、白い庭に赤い水溜まりが出来ていた。
そんな事が幾度かあれば、いつしか童は泣かなくなった。泣かなくなっても雪の庭に毎日おりては隅で膝を抱える。
ある日、童が私に言った。
『側に居てくれて、ありがとう。』
何のことか。
『仕事です。』
『それでもだ。』
『……?』
少しだけ、ほんの少しだけ、心の臓が跳ねた気がした。
「面白い!この我が速さで負けただと!!」
青年は立ち上がると大太刀を地面に突き刺し、右手で左腕に刺さった飛刀を手荒く抜いて投げ捨てた。
「我が名は迅來!死を運ぶ風、黒き亡霊なり。貴様、名は何と言う!!」
「………我は龍宮玉鱗国近衛軍 右竜爪軍副将 及び、 隠密隊 月影部隊長 藤谷喜市。」
「大層な肩書きだ。人間の中でも強いと言うことか!いいぞ!もっと、もっとだ!!」
迅來は黒く淀んだ気を纏う。牙が伸び、体はみるみる毛で覆われる。骨格は変形し、身に纏う衣を破り先程より二回りほど大きくなった。二足で立っているが足も腕も頭も狼のそれだ。その姿、まさに異形。
「もっと力を使わせろ!!!!」
「ほざけ犬が。この私が素性を述べたのだ。この世に在れると思うなよ。」
飛び掛かり振るう爪を躱すと同時に、閉じたままの巨大な扇で迅來の手の甲を殴り潰した。
振るった扇の勢いそのままに、扇子を地面に突き刺し軸として、扇の上で片腕で逆立ちをする。曲芸のような様から倒れつつ回転し、扇で迅來の脛を払う。軽やかに流れるような一撃に迅來はその場でひっくり返った。
ひっくり返しった迅來の腹に、容赦なく鉄扇を叩き込む。
衝撃により、また新たに地面へ大穴が開いた。
しかし土煙が晴れると、穴に迅來の姿はなかった。
「巧妙な動き、厄介な。」
迅來は地面に開いた穴の外から喜市を見下ろす。
「影の陣『天牙雷狼』!!」
ドーーーン!!!!!!ガラガラガラ……
迅來が左手の平を空へ向け掲げると晴れた夜空が翳り、稲妻が降り注いで大地を穿ち土煙が上がった。土煙が晴れるとそこに雷を纏う巨大な黒狼が五体出現した。
ガルルルルっ!!
迅來が空へ向けた左手を刀印にし喜市へ振り下ろすと、雷を纏う黒狼は一斉に喜市に飛び掛かる。
喜市は鉄扇で薙ぎ応戦する。しかし雷を纏う黒狼は、薙ぎ払う度に鉄扇を雷が伝い感電する。喜市は身が裂けるような激痛に奥歯を噛んだ。鉄扇を振り捲れる袖から覗く喜市の腕に這うように亀裂のような火傷がはしる。
(躱せんことはないが、これでは…。)
「埒が明かん。」
喜市は自身で開けた穴から跳躍して抜け出すと、空中で扇を広げた。
「刑部舞い『仙火』」
喜市が扇を振れば、無数の青い炎が五体の黒狼に降り注ぐ。
喜市の着地より早く、迅來が喜市の背後から大太刀を振るった。喜市は空中であったが、開いた扇を軽く振り、遠心力で身を翻して斬撃を躱した。
「刑部舞い『楽山』」
喜市は着地と同時にその場で円を描く様にくるりと回り舞う。
ゴゴゴゴゴゴ!!!!!
地鳴りと共に辺りの地面から岩山がせり上がる。
「!!!」
迅來は慌てて喜市から距離を取る。飛び下がった先の足元もせり上がり次々と生まれる岩山を躱すように迅來は後退した。
雷を纏った五体の黒狼は、せり上がる岩々にすり潰されバチンと爆ぜるように消滅した。
「何だあれは!!??」
「岩山だ!!!」
「この辺りは平野だぞ!?」
「地形が……変わった…!?」
門の上で駐屯兵たちが指さし唖然とする。
門前の黒狼の群れは、右竜爪軍の優秀な武官たちと門の上からの援護攻撃により粗方片付いていた。
「おやおや。馬鹿でかい扇で敵さんぶん殴ったときゃ、何じゃそりゃと笑ったが。なかなかどうしてぇ、上出来じゃわ。はははは!」
弥又が前髪を掻き上げ、天を仰いで高らかに笑った。
私は壊れている。若しくは最初から欠陥だったか。
『そなたは椿の花のようだ。』
その言葉の真意は分からない。
あの時何と返していれば、貴方にその様な顔をさせずに済んだのか。
優しい貴方の顔を歪めさせてしまったことを、多分ずっと後悔している。
再び貴方を傷つける事の無いように。
それからの私は演じた。表情も仕草も振る舞いも『理想的』であるよう、そう演じ抜いている。
「精霊具 憑依解放『隠神刑部 無常 白狸の舞い』!」
岩山の頂に青い炎が無数に集まり、ひとつの塊を成していく。
青い炎の塊は渦を巻き次第に消えると、炎の中から白い装束を纏い白い獣の半面を着けた何とも不可思議な出で立ちの者が現れた。高い一本下駄を履き、腰に大きな瓢箪をぶら下げ、大きな扇は閉じた状態で杖の様に右手でついている。白髪からは獣の耳が覗き、風になびいて白い尾が揺れていた。
「あれは……誰ですか。喜市さんは!?」
華江は喜市の姿が見えぬと焦り、弥又に問う。
「見ておれ御使い殿。あれこそが、誠な精霊使いの姿よ。」
にやりと笑う弥又を見て、華江は慌てて目線を岩山に戻す。
「!!……あれが…喜市さん?」
令和8年、新年を迎え早10日。
自分を取り巻く環境が大きく変わる前に、何とか「蒼玉の皇子編」を書き上げたいですが、全然進みません!!
今回新たな精霊具の使い方が出ましたね。そうなんです。精霊具は真の力を引き出す器があれば、力を纏って武装して戦えるんです。人の力を超越するため人ならざる姿となります。陸兵が戦闘機にトランスフォームするような感じです。
ちなみに精霊具を扱うには、
①その精霊が定めた条件をクリアし認められること
②その精霊の力の大きさに伴った霊力があること
③その精霊の力を使いこなす潜在能力があること
が大前提です。
勿論ある程度は努力で補えますが、『憑依解放』が使えるまでの人は極僅かであり、精霊遣いの奥義と言えます。
R8.2/3
私事でございますが、
転職いたしまして只今新たな職場で
業務を覚えている最中でございます。
次回の更新までお時間が開きます。
大変恐れ入りますが、
気長にお待ちいただければ
幸いでございます。




