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第三十七話 大団円とそれから

最終話です。王はどう収拾をつけていくのか、そして学園の皆はどうなっていくのか。

「う…儂は…?なんだ…頭がスッキリしている…お…おおお…なんという…何と言う事を儂は…」


 呆然としながらも王は今までして来たことを覚えているのか、頭を抱えて懊悩し出す。


「お前達が助けてくれたようだな…礼を言う。そして良く無事で居てくれた…儂の愚策の所為で、まだ(ホール)は暫く開き続ける。どうか、どうか民を守ってくれ…二度と巨大(ホール)を作る事は無いと約束する。野菜が出てくる陣になっているようだが、それで十分だ…」


「…貴方に求める事は、真実は詳らかにしなくて良いので、今回の(ホール)が収まったら、二度と(ホール)が開く事は無いと民衆に公開する事です。…獣人の国を攻撃する予定も耳にしておりましたが、関わっておられますか」


「は!?獣人の国に!?い、いや、儂は関わっておらん。幹部の誰かが先走ったのだろう…。身命に掛けて約束する。儂は関わっておらぬ」


「…なら、良かったです。あ、あと、野菜が召喚された際に、増やせる野菜があれば欲しいので、新作物下賜の優先権を下さい」


「解った、召喚されたら報告しよう」


 魔力持ちの全てを駆逐した訳ではない。まだ少し残っている筈だ。召喚のスパンは下がるだろうが、気長に待てばいいだけだ。


 もう朝だ。農園にまだ間に合うだろうか。学校は休みたい。いや、分身に行かせよう。


 ふらふらの王に送られ、面倒を起こす事無く王宮を出て、へろへろの私は農園に向かう。


「決着、ついた。もう巨大(ホール)は召喚されない」


「まじで!?え?なにそのスピード解決!?」


 私は深夜に起こった事を詳しく話す。


 すると涙目になった女生徒に軽く両頬を包むように叩かれた。


「帰ってこれなかったらどうする心算だったの!?ユーリちゃんが居なくなるなんて…あたしやだよ…」


「そうだよ、もっと自分を大事にしてくれよ。俺らユーリちゃんもシェラドさんも大好きなんだぜ」


「死んだり居なくなったら、最低でも500人は泣かせるって思ってくれよ!」


「…ありがとう…戻ってこれて…良かった…」


 私の涙腺も崩壊する。


 皆に囲まれて、抱き合って、無事を喜んだ。


 農園の作業はほぼ終わっており、苗植えを手伝い、水を引き込んだ後に言う。


「ごめん、今日は魔力流せない」


「今日は頑張ってきたもんね、気にしないで」


「そそ。皆でまたやるよ」


 皆で田んぼを囲んで「美味しくなーれ!」の掛け声で魔力を流し、ぱたりと倒れる。


 私は皆が気づくまで護衛をする。リムザが一頭狩れた。


「護衛ありがと…うわリムザだ。危ね。自分達だけでやっちゃ駄目だなこれは」


「そうそう、今回はもち米もかなりたっぷり採れたんだけど、半分は種籾に回すんで、ユーリちゃんは次でいい?後、明日田んぼ広げるの手伝って貰っていい?」


「うん、明日ならいいよ」


「もう餅好きがハッスルしまくっててさ、今回食べる分のもち米だけじゃ足りない勢いなんだよね」


「皆がいっぱい食べられる量が採れるようになるといいねえ」


 米はいつも通り、男子生徒が運び入れてくれた。


 そして私は、送還陣は見つからなかった事を詫びる。


 大ボスの頭の中を覗けたら、もしかしたらあったかも知れないが、今更の事だ。


 ただ、それでも皆は今笑顔で居てくれる。それが救いだった。



 しかし、今回の副作用の(ホール)が収まったら、私達は守護者としての仕事を失うだろう。


 生活費をどうするかが問題だ。


 住居にはそのまま住んで良いとは言われているし、食べ物は自分たちでなんとか出来ている。


 けれどそれ以外の雑費や服などをどうすればいいのだろうか。



 農園を広げて野菜を売買するにしても、それだけで500人分の賃金には全然届かない。


 肉屋。肉屋はどうだろうか。


 皆狩に出れば相当数の獲物が得られる。が、此処は獣人のエリアとは違い、それだけの獲物を抱えられる森が近辺にない。


 いくらゴンゾの繁殖力が高くともその数が500人で毎日狩られても残っているかどうか解らないのだ。


 此処は日本じゃない。


 職を探すのは容易ではない。


 特に500人などという大人数が行き成り一斉に職に就こうとしても無理なのだ。


 私は騎士である事から、学校を卒業すれば家から王宮へ勤務する、という事でなんとかなりそうだ。


 王への謁見を求めると、名パスで通された。


「守備隊の任で仕事をしている者達が、(ホール)が開かなくなった後にどうなるかをお聞きしたいのです」


「そちが気にしておるのは500名の学生の事だな?」


「私とシェラドさんは騎士に推薦されていますので」


「実は農作業を推薦し、土地を与えてどんどん耕作させる計画を立てておる。このままでは都民は野菜不足で病気に掛かりそうだからな。その農地を守るために、周辺の獣を狩って欲しい。護衛番という名前に変わるし、賃金も半額になってしまうが、生活には困らない筈だ。勿論学園に通っている間も勤務扱いにする。夜7刻までお願いしたい。夜は交代制で、別の者が朝まで任に就く」


「配慮、有難く思います。皆にはそのように伝えます」


 雑費だけなら半額になったところで問題はなさそうだ。


 もっとお金が欲しいという子が居れば別で居酒屋などでバイトを探せば良い。


 とはいえ、ぬるくて酸っぱいエールしかないようなのだが。


 村の人がお酒も納品出来るようになれば王都の事情も変わってくるだろう。


 電線はかなり伸びており、もう少しで王都迄届く、と聞いている。


 村の人の頑張りに頭が下がる思いだ。


 もう直ぐIHコンロや炊飯器やら掃除機なんかが使えるようになるのだろう。


 電気が通ったら一通り村に買いに行こうと思う。

 


 早朝の農園で、これからの話をすると、学生たちはほっと胸を撫で下ろしていた。


「学園に通ってる間を勤務時間と見做してくれるとか凄い助かる。早朝から農作業あるし、夜は出られないもんな」


「農地を広げるって言ってたし、まあそのお礼って訳じゃないけどうちらも農地を世話出来る程度までは広げて、なるべく売る分も増やすようにしようか」


「いいんじゃね?まあ基本自分らで消費する為に始めたんだけど、他のクラスメイトの茶色い弁当とか茶色い学食とか見てると、食べてて気が引けるよな」


「それ凄い解る~」


「私もー!」



 王は、誠実な人であったらしい、どうやらあの異形は500年前に国に現れ、ずっと歴代の王を操って巨大(ホール)を開ける事を強要していたと公表した。


 それを止めたのは勇者と従者の二人であると言い、私とシェラドさんに勲章が贈られる。


 望みのものを訊かれたので、あの村へ支援を送り、発明品や農作物の調理法や調味料、酵母などをこちらでも広めてくれるようお願いをした。


 王は厳かに頷いてくれた。


 (ホール)被害は今回のものと、その後に散発的に起こるものが落ち着けば二度と起こらないであろう事も公表する。


 都民たちは少し複雑そうな、それでも嬉しそうな顔をしている。



 シェラドさんは、家から王宮へ勤務することになり、早朝、私が農作業している間に狩りを済ませるようになった。


 王宮では戦闘方法の指導や警護任務、宮内犯罪者の拘束などをしているらしい。


 仕事も狩りもこなしてお疲れのシェラドさんに、尻尾がぱたぱたする料理を提供しながら、私は聞いてみる。


「ねえ、獣人さんの寿命ってどれくらいなの?」


「200年ほどだな」


「ふーん。シェラドさんていくつ?」


「今年で丁度100歳だな」


「…ね、それじゃ私と結婚してくれない?」


「……………!?」


「寿命から考えると丁度いい組み合わせじゃない?私はシェラドさんが好きだな」


「…なるほど。お前が結婚できる年齢になっても意見が変わらなければ考えよう」


 そう言いつつも、シェラドさんの尻尾が少しふりふりしているのを見逃さない私だった。




帰還陣は元々出す予定がなかったです。誰も研究してると思いませんでしたし。時折召喚される野菜にいいものがあるといいですねえ。シェラドさんとは最初からくっつける予定でした。

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