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第三十六話 裏から操る者と荒廃した大地

いつも野菜がほぼ使われていない料理しか食べていないクラスメイトには何か食べさせてあげたくなりますね。そしてボス戦です

 学園でも特に噂はされていなかった。


 王宮内での死人について、王は口留めしているようだ。


 言えば魔力持ちを登用出来なくなるからだろうか?


 魔法が使える程の魔力持ちは非常に希少だ。


 探し出すだけでも大変だろう。


 王宮内でほぼ死んだと噂になれば見つけたとしても登用に応じてくれる筈もない。


「ん――上辺だけの平和、かあ」


「どうしたの?どういう意味かな?」


「あ、いや、なんでもないよ」


「悩み事があるなら相談してね?」


「そういや今度3人でご飯食べに行ったりしない?」


 この世界には喫茶店がない。


 お茶やコーヒー、チョコも果物もないのでデザートもほぼないからだ。


「んん――それならうちに招待するからさ。私の手作りご飯食べて行ってよ」


「!そっか。野菜があるんだもんね。その辺のご飯屋さんより美味しいんじゃない!?」


「え、ほんとに?楽しみなんだけど!」


「じゃあ今日学園帰りに来る?保護者も一緒になっちゃうけどね」


「あ、あの渋くて格好いい人でしょ!?むしろ楽しみ!」



 家に3人で戻ると、シェラドさんが狩って来た獲物を解体していた。


 私が一人ではない事に驚いて目を丸くしている。


「あのね、友達なの。今日は皆でご飯食べようって。いいかな?」


「友達が出来たのか。よかったな。構わんぞ。共に食べよう」



 リビングで二人で過ごすように案内し、お水を出す。


 私は厨房で料理だ。


 大量のウィンナーはもう定番メニューにしないと消費しきれないので今日も焼く。


 茹でたニンジン、ほうれん草、鳥ササミの割いたものを白和えにする。


 スープはコーンスープ。今回は粒入りにしてみた。


 ミートソースのスパゲティ、玉ねぎがとても甘い。


 それにとんかつ、足りない人のために空豆の炊き込みご飯。


 余ったらおにぎりにする予定だ。


 食後には桃のタルトを出そうと仕込む。


 ずらりと物量だけは凄い料理を次々並べられてビックリした顔をするミラとクロード。


「シェラドさんが凄く食べるんで、二人は無理しない程度に食べてね」


 今日もウィンナーがあるだけでご機嫌なシェラドさん。


 尻尾がふりふりしている。可愛い。


「! 凄い!美味しい!この細長い肉、いい匂いがする!」


「この白いソースで和えた野菜も美味しいよ!」


 ミートソースは挽肉好きのシェラドさんに好評だ。


 口の周り赤くなってる。ギャップ可愛い。


 私は自分の食べれる分だけ皿に取って食べる。


 うん、どれも納得行く味になってる。


「こんな黄色いスープ初めて見た…え、うっわ甘い…美味しい…」


「えっ本当だ!甘くてまろやかで美味しい!」


「この揚げた肉、ソースと凄く合う!ご飯ももちもちで塩気があって豆が入ってて美味しい!」


 二人とも嬉しそうに食べてくれていて嬉しい。


「食べ過ぎないでね!」


 桃のタルトがあるのだ。入らないと悲しい。


「デザート用意してるの。良ければ最後に食べて欲しいんだけど」


「う…難しいけど解った。頑張ってお腹少しあけとく」


「満腹になるまで食べちゃいそうだけど俺も我慢する」


 皆がそれぞれ食べた後は、シェラドさんが全て平らげる。


 今日も満足そうで良かった。


 私はキッチンから桃のタルトを持って来て、3人分切り分ける。


 そして余りを全てシェラドさんに渡す。


「…!!!何これ…!」


「甘…美味…!!!」


 一心不乱にデザートを食べた二人は、無くなるとガッカリしていたようだが、多分これ以上あってももうお腹に入らないだろう。


 私も自分の分をうまうま食べる。桃がほんとに美味しい…。


「今日はごちそうをありがとう!ほんとに美味しかった!」


「うん、こんなに美味しいの初めてだったよ!ありがとうね!」


「えへへ、嬉しいよありがとう。また時間がある時に誘うかも」


「まじで!是非!」


「本当に!?是非!!」


 手を振って2人を見送る。


 さて、と後片付けをし、水で体を拭う。


「王の寝所、確認してきた。今晩急襲するよ」


 ぽふっとシェラドさんの横に潜り込んで眠る体勢になる。


 シェラドさんは顔を引き締めて頷いた。


「解った…今度こそ、本丸って訳だな。気を引き締める」



 深夜、私達は黒装束で身を固める。


 いつもの場所から入り込み、特に見張りが居ない事を確認して、謁見の間へ窓から忍び込む。


 其処からは暗闇に紛れながらシェラドさんに先導されつつ、寝室へ案内した。


 寝室を覗き見るとゆらりと立ち上がった王が呆けた表情で相手の言葉に聞き入っているようだった。


 幕越しに見える姿は異形のボスなどに見られる変形した人間に似た、角を持ち、目が4つある。


 身長は人間の3倍と言ったところか。


『巨大(ホール)を構築出来るニンゲンが居なくなったと?』


「はい…」


『至急可能性の有る者を選抜せよ。頭の中に直接焼き込んでやる。エサ場がなくなるのは困る』


「はい…至急…」


 私は剣状にした光で胸を含めて袈裟斬りに飛び掛かる。


 シェラドさんも胸のコア目掛けて一突き、返す刀で頭を落とす。


 異形からの通信が途絶えた途端、王がくにゃりと倒れる。


 シェラドさんが王を抱えて飛び退る。


『我をその辺の雑魚と同じに扱うか』


 ぞぞ、と落とされた頭が引き寄せられるように戻り、傷は塞がる。


 しかし私は見た。


 破壊されたコアは治っていなかった事を。


『シェラドさん、多分こいつコアが複数あるタイプだ』


『全身切り刻めばいいのか』


『多分残さずコアを破壊すればいいと思う』


 小声でやり取りした私達は、散開して異形を挟む。


 光刃モードで体のあちこちに斬撃を見舞う。


 シェラドさんは視認出来ない速さで相手の体を細切れにする。


『…ほう。なかなかの強さだ。だが、我は本体ではない。これはコアを持たせた人形だ。本気で相手にしたければこの世界に来てみろ。出来る物ならな!!』


 本体が異形の世界!?どうやって行くんだ!


 ぎっと睨みつけた瞬間に、私は異形の後ろに歪んだ景色を見つける。


「シェラドさん!戻れないかも知れない!でも私は行く!」


「つれない事を言うなよ。俺も行く」


 私達は人形の残骸を飛び越え、その後ろにある僅かに歪んだ空間へ飛び込んだ。



 転移した先は異形がうじゃうじゃと蔓延る世界だった。


草の1本も生えていない。食べてしまったのだろう。 


 私達を見かけると、餌だ!と歓喜の歓喜の感情が伝わってくる。


 一先ず周辺の異形を久々の連携技で一層し、シェラドさんが残党を退治する。


 しかし、見渡す限りの異形の群れだ。


 増えすぎて餌になるものがもうないのだろう。


 だから空間を割るという暴挙に出た。


 そう考えると悲しい物もあったが、見逃すことは出来ない。


 ひと際高い場所に、先ほどの人型人形と同じ姿の者が居る。


 ――あれがボスだ。


 しかし取り巻きに形の違う中ボスのようなものに囲まれているし、そもそも大地を覆う量の雑魚異形が倒しても倒してもキリがない。


 何度も連携技を繰り出し、5度目にはやっと地面が見えた。


 枯れ果てた紫色の大地が。


『増えすぎた同胞を減らしてくれるか。それもまた助かる。我らは増えすぎた。共食いをする同胞を見るのももう飽いた』


「…ふっ!」


 周辺の敵を駆逐した為、ボスへ向けて一直線に刀身を飛ばす。


 地を削りながら飛んだ斬撃は、ボスの直前でガキン!!と大きな音を立ててバリアに弾かれる。


 目を凝らすとヒビが入ったのが解る。


『ふふ、なかなかの攻撃。元々の世界を捨てる覚悟で挑んで来ただけはあるな』


 見る間にヒビは修復されていく。


 シェラドさんはボス達に駆け寄り、まずは取り巻きの中ボスを倒しに掛かる。


 いつものように瞬殺、とはいかない。


 何合も刀を交え、バリア破壊と重ねた一撃で、漸く1体倒す。


 そこからはコツを掴んだのか、斃す速度が上がっていく。


 数の多さに押されてシェラドさんの体には幾つもの傷が刻まれているが、深手を負わないよう上手く立ち回っている。


 私も5本の刀身を同時に叩きつけた。


 ガンッ!!ビシッ!!!ガリガリッ!!パンッ!!ズドッ!派手な音が響いて、やっと本体に1本分の攻撃が届く。


 コアの場所を捉えては居るが、少し斬撃が浅かったようだ。


 続けて6本、刀身を飛ばす。


 パンッ!ズドドドドド!!


 バリアはまだ完全に復活していなかったらしく、5本の刀身がコアの場所を深く抉った。


『…終わ…る?我が…?』


 ぼろぼろ、と末端から崩れながら、ボスは少し驚いた顔をしているが、その顔が笑みに彩られる。


『この生にも飽いていたところだ。次はもっと…違う世界に…』


 ボスが消えた後に、僅かに歪んだ空間が今にも消えそうに微かに霞んで見える。


 私はシェラドさんの腕を掴むとその空間へ飛び込んだ。


 何処に飛ばされたのか、確認する手間は省けた。


 くにゃりと気を失ったままの王と、自分たちが幕の中に居る事が確認出来たからだ。


 無事、戻れた。――その事に私は心底ほっとした。



ボスも好きでこんな世界に生まれた訳じゃなく、自由で満ち足りたナニカになりたいとずっと思っていた事でしょう。これは救済でもあると私は思っています。

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