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第三十四話 侵攻首謀者ともち米

私は餅が大好きです。さつまいもがないのがネックですねえ。干し芋食わせたい。

 家に戻ったらご飯を作る。


 鳥の腿の唐揚げ、コーンの炊き込みご飯、ブロッコリにアスパラ、じゃが芋と砂肝のアヒージョ、豆腐とじゃが芋と玉ねぎの味噌汁、丸々キャベツにベーコンを巻いてコンソメでじっくり煮込む。


 シェラドさんはいつもと同じく、全部美味しい美味しいと言ってご飯も味噌汁もお代わりしてくれた。


 気持ちがいい。


 私も久々に食べるコーンご飯にうまうまする。


 ベーコンキャベツも美味しいし、アヒージョも私好みだ。


 唐揚げはちょっと大きかったけど、なんとか1本は食べきった。


 おなかがぱんぱんだ。


 シェラドさんは5本目だ。


 キャベツとベーコンの煮物も気に入ったらしく沢山食べていた。


 キャベツの四分の三は食べてると思う。


 まあ、そうやって魔力を貯めて置いて欲しい。


 いつか王宮の一画を燃やす事になるだろうから。


 ご飯の後片づけ、水で体を拭い終わると、シェラドさんの隣に滑り込んで眠る。


 早朝には目を覚まさなければ。



 早朝、朝ごはんに大量のソーセージを焼いて、茄子の田楽みそ焼きとほうれん草のお浸し、トマトのカプレーゼ、カボチャとリムザ肉の味噌汁、白米を出す。


 朝から狩りをするシェラドさんに、朝ごはんは大事なエネルギーだ。


 私もごはんを食べながら気持ちの良い食いっぷりのシェラドさんを眺める。


 茄子田楽なんて大丈夫かな?と思ったけど大丈夫のようだ。


 今日の夜は、少し溜まってしまった桃をジュースとタルトに加工して一杯使おう。



 農園に行くと、皆がぞろぞろとやってくる。


 昨日の話を聞きたがる皆に苦笑しつつ、魔力持ち10人程度と幹部を一人殺した事を説明、女騎士は事情を知らず、裏取りに動いている事を説明した。


「女騎士さんもあっち側って訳じゃなかったんだねえ…」


「でもそれならなんであんな怪しい誘い方をしたのか気になるけどね」


「で、後4人か。約半数死んだ訳だけど、流石に動きがないのが気になる」


「てか、図面が王宮の何処かにあるっていうのもどうにか出来ないのかしらね」


「主の名前を口にする事が出来ない呪いを掛けられてるのが厄介なんだよね」


「獣人国侵攻の話は幹部の中でも上の方の人しか知らないのかねえ」


「うーん。其処も謎なんだ」


 農地からの採り入れを手伝いながら、私は苦笑する。野菜も余り気味なのだ。今回はパスしようと思う。


「野菜もね、シェラドさんが肉食だからあんまりどかどか使えなくて余ってるんで、今回は私の分はパスで。次は貰うよ」


 魔力で育った作物は、劣化が非常に遅い。


 だからまだ家にある野菜はつやつやだ。


 全員で作物を採り込んだ後は、根起こし、整地、堆肥を混ぜて耕して畝を作る。


 ここはお任せだ。


 種を植えるのは私でも手伝える。


「あ、コーヒーチェリーから果肉と種どっちも取れたよ。今乾燥させてる。果肉は先生がジュースにしてくれたけど美味しいよ!コーヒーが焙煎迄出来たら、ジュースも持ってくるね」


「ありがとう!」


 種植えが終わった後、男子が声を掛けてくれる。


「昨日持ち込んでくれた種籾、米じゃなさそうなんだ。


 ほらあそこがその一角なんだけど、米とちょっと違うだろ?…もち米かな?もち米の可能性あるよな?」


「絶対とは言い切れないけどね、そうかもね!」


 にこっと嬉しそうに笑った男子は皆と一緒に農園を囲んで魔力を放出する。


「美味しくなーれ!」


 昨日より魔力は少ないが、なんとか農地を覆う事には成功している。


 確かに1月持たせるのも厳しそうだ。


 早くケリをつけなければ。


 ぱたりと倒れた皆の護衛をしながら、目覚めるのを待つ。


「皆、このひと月は、野菜をなるべく多く食べてね。でないと魔力の補給が出来ないから」


「うん、解ってる!」


「頑張ってなるべく多く食べるよ!」


「ありがとう、早くカタが付くよう頑張るからお願いね!」



 家に戻ると風呂に入る。


 その後に分身を生んで学園に登校させる。


 私とシェラドさんは昨日と同じく髪の色を変え、深くフードを被って雑踏に紛れて例の地点まで辿り着く。


 今回は影が多い。


 塀を乗り越えて入った瞬間から20人程の影が襲ってくる。


 シェラドさんの速攻が大半を瞬殺したが、私も残りの影の心臓を一突きで屠って回る。


 隠れている影が居ないか魔力を這わせると、一人引っ掛かった。


「…女騎士さん」


「悪い…ヘマをして呪いを貰った…君の言う事が正しかったようだ…この国を守ってくれ。そして私を殺してくれ…」


 私を排除しようとする剣を持つ手がブルブルと震えている。


 必死で抑えているようだ。


 私は切ない気持ちになりながら、シェラドさんに首を飛ばされる女騎士の姿を見ていた。



 部屋に入り、魔法陣を起動させて地下へ行く。


 魔力持ちが多い、30人程集っている。


 到着と同時に駆け出したシェラドさんは目にも見えない速度で敵を瞬殺し始める。


 私は2名居る幹部が魔法陣の書き換えに集中している間に足の腱を切り、手首の腱を切る。


 崩れ落ちた2人の顔にナイフを翳す。


「獣人の国への攻撃魔法陣はもう出来ているのか?」


「……?」


「き、貴様、何故その計画を知っている!?」


 何も知らない様子の幹部には喉を掻っ切って止めを刺す。何かを知ってそうな男の方にはまだ質問を続ける。


「魔法陣は、もう出来ているのか?」


「く…ま、まだ半分も構築出来ておらん!散々時間を掛けて図面を引いた書面が焼失したのだ。…お前らの仕業だろう?」


「想像に任せるよ。じゃあ計画は今止まってるって事だね。図面を引いたのは貴方?」


「………」


 ざく、と腹にナイフを埋めてぐり、と捻る。


「ぎぃぁああああああ!!」


「貴方なのか?」


「お…俺だ!」


「そう。じゃあ死ね」


 喉を掻っ切りこちらも止めを刺す。


 魔法陣を構築出来る人間が一人減った。


 当面獣人の国への攻撃はなさそうだ。


 振り向くと、シェラドさんは全ての魔力持ちを殺害し終わっていた。


 返り血の一つも浴びていないのは流石すぎる。


 私も背後から喉を掻っ切ったったので、返り血は浴びていない。


 血塗れで街を歩くわけにいかないので助かる。


 手には流石にナイフから伝った血に塗れているのでハンカチで拭く。


 魔力を這わせて他に誰か隠れていないか探すが、今日はこれで全員のようだ。


 地上に戻り、辺りに人が居ないのを確認して塀を乗り越える。


 家まで戻って着替え、学園の分身体と入れ替わる。


「本当に眠いんだねえ。またぴくっとしてたよ。大丈夫?」


「ん、大丈夫。ちょっと睡眠少なくてきついけど」


「やっぱり美味しいものを食べようとするとかなり頑張らないと難しいんだねえ」


 その日の学園では社会で、この都市などの成り立ちなどを学んだ。


 私の目から見れば、あちらの人間を大量に犠牲にしてきた歴史にしか聞こえなかった。


 少し不機嫌になった私を、ミラとクロードは不思議そうに見ていた。



 学園帰りに家庭科の先生の所に寄って、燻製ソーセージの山を受け取った。


 またベーコンも貰った。



 家に戻ったらご飯の用意だ。


 餃子の皮を作ってミンチとキャベツと玉ねぎなどの野菜で餡を作り、包んでいく。


 シェラドさんが居るので大量に作った。


 ソーセージも焼く。


 消費しないといけない。


 卵液に出汁を入れて色んな野菜を微塵切りにしたものと鳥のミンチを加えて焼く。


 それに出汁とみりんと砂糖・醤油を加えたものに片栗粉でとろみをつけて上から掛ける。


 味噌汁は今回は茄子にした。


 白米も出す。


 デザートに桃のジュース、桃のパイを仕込んで焼いておく。


 それから大量の餃子を焼いた。


 シェラドさんが戻ると、餃子を不思議そうに見た後、タレをつけて食べる。


 尻尾がふりふりしている。可愛い。


 他のメニューも、どれも美味しいと言って平らげてくれる。


 私は笑顔で自分の分を食べた。餃子、久々だ。ラー油はないけど、酢醤油だけでも美味しく食べられた。


 卵と鳥ミンチの焼き物は私が好物だったものだ。


 久々に食べられて美味しかった。


 味噌汁にはいつもリムザの肉を入れてた所為か、茄子だけだとちょっとスッキリし過ぎているように感じてしまった。


 でもシェラドさんは米も味噌汁もお代わりしてくれた。嬉しい。


 食後に桃のタルトを出すと、珍しそうに眺めた後、一口。


 ぶるるるっと尻尾が震えた。その後バッサバッサと尻尾が振られる。


 余程気に入ってくれたようだ。


 私は自分の分を取り分けて残りをシェラドさんへ差し出す。


 ジュースも美味しそうに飲んでいる。


「桃そのままを食べるのも美味しかったが、このたるとと言うのはもっと美味しいな!」


「えへへ、そんなに気に入ってくれたならまた作るね!」


 大量の餃子もすっかり食べつくしてくれてお残しはない。


 後片付けをして、水で体を拭いてシェラドさんと眠る。


 明日は米の刈り入れだ。


 あの種籾が一体なんだったのかが解る。


 楽しみにしながら睡眠に落ちた。



 早朝、農園に集まってきた皆と雑談しながら水やりをする。


「――じゃあ獣人国の侵攻計画は一旦止まりそうなんだね?」


「嘘を吐かれてなければね。まあ本当っぽかったけど」


「女騎士さんは…残念だったね…」


「うん…でもあれはどうしようもなかった」


 呪術の達人なのだろう。魂にまで食い込んでいた。


「でも残りの幹部は2人だね。それと――首謀者」


「その3人の中に呪術師も居ると思うと警戒して行かないと…次からシェラドさんと自分を光の膜で覆っておくよ。呪術なら弾ける筈だから」


「…気を付けてね?操られてるユーリちゃんなんて見たくないよ…」


 水やりが終わったら稲刈りも手伝う。従来の米と、新しく植えた穀物は別で袋に詰めた。


「半分持ってって?」


「…いいの?」


「うん、ユーリちゃんが見つけて来てくれたものだし」


 新作物の種籾が半分だから、今回食べる分を全てくれた事になる。


「お米は運ばせるね」


「いつもありがとう!」


 最近はシェラドさんに米を出していたので、備蓄が減っている。素直に有難い。


 お風呂に入って、朝ごはんを用意する。


 折角なので精米機で新しい穀物を精米し、炊いてみる。


 念の為、小豆も炊いてあんこにする。


 炊き上がった穀物は。


 …もち米だ…


 早速捏ねて突いて少し不格好だけど餅に加工する。


 4分の1はお萩用に半殺しにした状態で置いておく。


 醤油、きなこ、あんこ、ベーコンチーズ、肉みそ乗せ、鳥肉の照り焼きを乗せたもの、揚げた野菜天ぷらを乗せてタレを塗ったもの。


 揚げた豚肉を乗せてソースを掛けたもの。


 あとはあんこときなこのお萩を用意。



 朝食を見てシェラドさんは目を丸くしていた。


 下にねちねちもちもちした見た事のない物が敷かれているのだ。


 戸惑いながらも口に入れ、目を輝かせる。


「んもんっふも!!」


 もちもちと口の中で粘る餅の所為でまともに発言出来ていないが、ばさばさ振られている尻尾の所為で美味しく食べてくれているのが解る。


「この下の白いもちもちした奴が凄く美味しいな!!」


「今回はこれだけしか採れてないの、大事に食べてね?この先採れる量が増える予定だから!」


「お?こっちの白いのはつぶつぶが残ってる」


「お萩って言うんだよ。私も好物」


 朝から餅パーティーとなってしまったが、餅は腹にたまる。


 2人共に十分にお腹一杯になった。


「うああ…これから餅が食べられるんだぁ~…嬉しい~!!」


「もち、というのか。これは凄く美味い。俺も嬉しい」


 今朝は幸せな気分で偵察に行けそうだ。



まだほかに残ってますが、獣人侵攻は一先ず止まりそうですね。巨大孔を開ける魔法陣、どうやって始末をつけていくのでしょうか。

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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