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第三話 小康状態と不満

無事じゃないシェルターもあります。自衛隊の居るシェルターはまだ被害が軽微で収まっております

 3エリアが少し落ち着きを取り戻してきた頃、隣の2エリア、4エリアが落ち着かないという話を聞き、3エリアにも戦士を残して私とシェラドさんが救援としてまず2エリアに向かう。


 現状を見て納得する。戦士の半分が重症で動けなくなっていた。神官は疲労に倒れ、暫く起き上がれないようである。残った敵に押されつつ、いつ死人が出てもおかしくない状態だった。たった2人の救援か、と肩を落とされたが、シェラドさんは隊長だし、私は言うまでもなく殲滅力がある。


 一先ずはシェルターに押しかけていた分の異形を一掃する。まだまだ穴は開いているが、2エリアの各シェルターを回って、シェルターの水際まで異形の迫っている場所で周辺の異形を駆逐して回った。


 どうしても途中で寝ないと持たない。4歳と言う年齢もあって体力もない。寝ている間に誰かが怪我をしていると思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになるが、こればかりはどうしようもない。余りに敵の数が多い所為で、シェラドさん一人では行かせられず、私が復活するのを待って二人で殲滅に向かう。


 最後の辺りにはシェルターに食い込んだ敵を退ける戦闘になった。


 非戦闘員を奥へと誘導するがパニックになった人々は逃げ惑い、数人が異形に食われ、首が転がる。シェルター内に悲鳴と怒号が飛び交い、逃げ惑う人々と異形が入り混じってますます退治に梃子摺(てこず)る。


 流石に戦士も死傷者なしでは済まず、戦士が2人、目の前で喰らわれた。それでもなんとかシェルター周りの敵だけは退け、私も酸の飛沫を受けて腕に怪我を負った。


 此処が2-10で良かった。一旦治療しに戻れる。シェラドさんは流石の無傷だ。


 被害は出てしまったものの、救援に行った事は感謝され、壊滅を逃れたと言って貰えた。4エリアも同じような状態かも知れない。


 子供であるがゆえ細い為、半分の肉を持っていかれた腕は、3エリアの神官に治してもらう。


 緊急の状態を脱した2エリアは一度離れ、4エリアに向かう。4エリアもかなり状況は逼迫(ひっぱく)しており、かなり駆逐に梃子摺(てこず)る。担当戦士に近接を任せ、奥に控える大量の異形をシェラドさんとのコンボで一掃する。漏れた敵はシェラドさんが片付けてくれる。


 4-8まではなんとかそれで片付いたが、駆けつけるのが遅れた4-9、4-10はかなり悲惨な有様だった。2-10のように異形がシェルタースペースまで食い込んでいる。


 戦士や避難民の死体を踏んで滑らないよう、シェラドさんが抱えて走ってくれる。異形の固まっているエリアで頭上に放り投げて貰い、物量は私が処理する。その間隙(かんげき)にシェラドさんが残りの異形を始末して回る。シェルター内を一掃し、シェルター周りに集って来た異形を、コンボで片付ける。


 9のシェルターにはもう戦士が居なくなってしまった為、補充せねばならない。シェラドさんがその瞬足で8まで戻り、戦士を半分引き連れて帰って来る。その間私は壁に凭れて回復に努めた。シェラドさんに抱えられて4-10まで移動する。


「9がここまでやばいってこたぁ、10はかなり厳しいだろうな」


「…せんしさんがぶじだといいね…」


 心なし、シェラドさんの足も早い。緊張はある程度なら必要でも、焦り過ぎは足元を掬われる。私は虎耳をもふもふした。


「あせっちゃだめ。きんちょうはしていい」


「――すまん、解った」


 速度は落とさないまま、足取りが確りと地を踏んだものになる。ざっと木々の間を抜けて、シェルターが目視出切る様になる。シェルターに突っ込んでいる異形の集団が見え、戦士の姿は見えない。私は光の刃を飛ばして駆逐していく。


 大半の異形を倒した後、残り10匹、片目を酸の飛沫で焼かれた戦士が1人で必死で抵抗している所が見える。残りの敵にも、他の者に当たらないよう刃を飛ばして、辿り着くまでに殲滅を終了させた。


「はあっ…はぁっ…きゅ、救援、感謝、する…」


 避難者は辛うじて半数、残った状態だ。全員がショックで呼吸困難を起こして、奥の壁際に固まって震えている。良くない状態だ。


「シェラドさん、よゆうのあるシェルターからせんしのひとをつれてきて」


「ユーリは…こんな状態でどうするんだ」


「がんばってみる」


「解った、早めに戻る」


 さっとシェラドさんが身を翻す。その足には信頼が置ける。


 私はハンカチを裂いて包帯を作り、水を作って戦士さんの片目を洗い、包帯で巻いて置く。


 その後、まだ硬直している人々のところへ歩いていく。


「みんなしんこきゅーするといいよ?ゆーりといっしょにしんこきゅーしよ?」


「し…深呼吸…?」


「すぅ――、はぁ――、すぅ――、はぁ――」


 最初は乗ってこなかった人々も、執拗に繰り返すユーリに、そろそろと深呼吸を始める。5分ほど経つと、固まっていた体が動くようになった事に気付いたようだ。


 にこっとユーリは笑い、光を呼び出して、鳥や馬、妖精や猫の形を作り、人々の間を走らせる。少しコミカルなアニメ的な動き方をさせると、少し人々の顔がゆるむ。極限まで張り詰めていた緊張の糸が緩んで行くのを感じる。光の持続が出来る限り、動物達の芸を見せ、小さい子などが破顔した辺りでふわりと光は消えた。


「どうでしょう、からだ、うごけますか?なくなったかたはざんねんですけれど、みなさんはいきている。これからもいきていかなきゃならない。しっかりしてください。さいがいがおわるまで、わたしたちはぜんりょくでてきをたおします。だから、みなさんもがんばってください。おねがいします」


 ぺこりと頭を下げた私をぐっと抱き上げる腕。シェラドさんだ。戦士と神官を連れてきてくれた。酸でやられた目を癒され、片目だった戦士が戦線に復帰できるようになる。


「――ところで、完全に撃退するまで俺達の手が必要か?」


「………そうだな。そこのお嬢ちゃんが1発分だけ群れを散らす攻撃をして行ってくれれば恩に着る」


「解った。いいか?ユーリ」


「いいよ。ほかの2と4のシェルターでもぜんぶ1ぱつづつ、うってからかえろう?」


「お前がそれでいいなら」


 そのまま2と4のシェルター全てで途中休憩も挟みながら群れを散らしてから3エリアへ帰還した。

 今の所、3エリアでは新たな(ホール)の出現もなく、小康状態だ。そしてその分、それまで異形に向かっていた不満がシェルター内で衝突するようになっていた。


 やれ、配給のメシが隣のやつの方が多かっただの、怪我の度合いは自分の方が酷かったのに、アイツより後回しになっただの。そういう些細な事がきっかけで殴り合いにまで発展する事もあった。


 ギスギスするばかりのシェルター内は酷く居心地が悪い。それでいて、少しでも(ホール)が開くと団結する。出来の悪いコメディでも見ているようだ。ギスギスするたびに、小さな子供は半分泣き顔になって大人の顔色を伺っている。


 ギスギスするのはこちらの世界の避難民だけで、獣人達の避難民は慣れがあるのか災害が去るまで大人しく待機態勢を取っている。子供たちは、いつしか大人達が揉め始めると獣人の子供に寄り添って過すようになっていた。


 戦士達は言い争う人間の大人達を見て苛々し始めている。良くない。善意で自分達と一緒に匿ってくれているのだ。そこのところを、理解出来ていない。ユーリは、「リーダーを決めよう」と言い出した者と、「ならば自分がリーダーだ」と争い始めた大人を光で縛りつけた。


「まもってくれているじゅうじんのかたたちに、にんげんのはじをさらすな!わざわざいっしょにかくまってくれて、まもってくれているじゅうじんさんにあやまれ!」


 私の存在は、人間であるが戦士である事は浸透している。少し柔らかくなった獣人の戦士の目がユーリの様子を伺っている。


 争っていた人間は光に絡めとられて動けないこともあり、悄然と肩を落としている。


「あなたたちが、じゅうじんさんたちに、いまのじょうたいでかえせるものがあるの!?ないなら、すこしでもおとなしくして、めいわくをかけないようにして!でないとほかのばしょのにんげんにまでめいわくがかかるでしょ!ストレスはっさんするなら、ほかのひとにめいわくをかけないやりかたをさがして!」


 狭いシェルター内で出来る事など限られている。それでも喧嘩でスペースを使われるよりは他の何かで発散して欲しい。


 ふと、私の隣に獣人の男の子が来て、皮袋を弾むように加工し、ボールにしたものを差し出してくれた。サッカーなどは出来ないが、リフティングなどなら出来そうだ。後は樽を用意して腕相撲が出来るようにしてみた。力を持て余しているなら適度に発散出来る様にしておけば、少しは揉め事も減るのではないだろうか。


 リフティングや腕相撲で、ある程度のストレスは解消できたようで、揉め事の数はかなり減った。女性には糸と編み針を渡すことで、教え合いなども発生してコミュニティが出来、獣人の皆さんとも仲良くなれたようだった。


 因みに神官は完全に呆れ、喧嘩などで出来た傷には頑として回復魔法を使ってくれなかったようだ。まだ痣などが残っている男性が其処此処に残っている。



 それでも、シェルター内での(いさか)いは一段落した。まだ、内側に炎を抱えたまま。



外敵が居ないと内側が荒れますね。そういうものはなかなか解消できるものではありませんね。

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