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第二十九話 魔法と新作物

桃も葡萄も美味しいですよね。私はメロンと無花果とマンゴーも好きです。

 桃の林が出来てる…


 それが今日農地に行った感想だった。


 しかしまだ耕作地を増やそうと、嬉しそうな顔をした皆がまた種を植えている。


 ぶんぶん、と頭を振る。


 そうだ。500人が毎日桃が食べたいと思っているなら林になっても当然と言える。


 森になったところで全員が1度に2個頬張ったら、終わる気がする。


 桃はもう、好きなだけ増やすことになったようだ。


 桃を使ったスイーツを作る計画もあるようだ。


 土地はまだまだ広い。増やそうと思えば他の作物だって増やせる。


「ねえねえ、これどう!?狩りの時に見つけたんだけど!!」


 喜色満面の女生徒の手に持たれているのは葡萄だ。


 野生の葡萄は相当酸っぱいと聞いた事があるがどうなのだろう。


 近くに居た生徒で一粒づつ味見をすると、芳醇な葡萄の味と、絶妙な甘みがある。充分な品質だ。


「え…品種改良なしでこれ!?凄すぎるんだけど!!」


「30房ほど持ち帰ったんで、皆で食べて種を植えたらどうかなって!」


 桃は畑の隅の方に並べるように植えられているため、葡萄はその内側の日光が確保できる程度に離した場所に植える事になった。


 私が切れ目を入れた土を、農地班が張り切って耕して小石や雑草などの異物を取り除く。


 堆肥を加えて耕しなおし、種を植えて行く。


 丁度王城への納品も含めた刈り入れ日だった事もあり、作物を採取して皆が籠を満たしていく。


 桃がそこそこの数である為、痛ませない様皆の籠の上に桃が載せられている。


 整地、堆肥、畝まで作って種まきを終えると、私は魔力を流す。


 魔力を流すときに気付いたが、葡萄には微かな毒性がある。


 一粒食べた程度ではどうにもならないが、続けて摂取しつづけると不具合が出るようだ。


 私は浄化も掛け、葡萄の毒性を抜く。


 久々にぱたりと倒れた。


 お約束のように女生徒の膝の上で目を醒ました私は、ぶどうについて注意点を話した。


 野生の物を見かけても食べないように、畑のものは毒性を抜いてある事。


 畑で取れたものの種に毒性が抜けているかはまだ解らない事。


 食べ続けると、筋肉が痩せ続ける病気になって立つ事も難しくなると言う事。


 狩り班に、しっかりと情報共有して貰うようにお願いしておく。


 私もシェラドさんに言わないといけない。


「美味しいけど、罠みたいな食べ物だね。この先、王に献上する品からは抜いておいたほうが良いと思う」


「毒殺とか疑われると面倒だしね」


「うんうん、わざわざ献上して疑われるなんて嫌だね」


 全員が納得してくれる。良かった。


「うわっ!?」


 悲鳴がした方をみると、平原に突如耕された畝が出来ていた。やった当人は地面にへたり込んでいる。


「えっ何?どうしたの!?」


「いや、単にこの平原にあんまり手間掛けずに畝とか出来たらいいなって思ったら突然…」


「えっ魔法じゃん!?もしかして魔力入りの作物食べ続けたから!?」


「じゃあ他の皆も何か使えるんじゃ!?」


 皆が開けた場所までバラバラに移動してうーんうーんと呟き始める。


 魔法だ。しかし私の魔力の所為だというなら、何故光ではないのだろう。


 光は勇者にしか使えないから?


 悩みながら見ていると、其処此処で風や水、火や雷の魔法が発動したのが観測できる。


 …ただし、小規模な魔法を1つ打っただけで皆へたりこむという有様ではあるが。


 魔力量が増えるかどうかは解らない。どうなるかは少し経って見ないと解らない。


 学園には遅刻になったが、皆少し休んで動けるようになった後、笑顔で籠を担いで帰っていく。


 私の家にも届けてくれた。


 王城に3男子と一緒に上がり、王に作物を献上する。


 …今度から桃とアスパラは徐々に減らして、出来ればなくしたい。


 私の魔力をあのおかしな魔法陣に使われたくない。


 週に1度だとはいえ、口に入る人物はある程度絞られている筈だ。


「今回も美味そうじゃの。特にこの…もも?とあすぱら?という作物が非常に美味い。出来れば量を増やして貰えると非常に嬉しいものなのだが、どうだろうか?」


 ――痛いところを突いて来る…!


「ももは今の現状維持で精一杯の作物です。あすぱらは実は全学生の口に入るほどの量が実はないのです。特別に、と添える程度に献上しておりましたが、出来ればまず学生の口に入るようにしてからにしたいと考えていたところなのです。他の作物も充分に美味しく作れたと思っておりますが、お気に召さなかったでしょうか。特にトマトなどは、そのままでも、料理に使っても、調味料にも出来る万能野菜です。そちらを増やしてみるのは如何でしょうか?」


「なんと…まだ作成者の口に満足に入らなかったのか…ううむ…だが、此れまで通り、少しだけでも納めては貰えないものか。儂はあすぱらが大好物でな…」


 ――ダメだ、この王、多分『わかっている』。


「……添え物程度で宜しいならば、なんとか献上致しましょう…」


「おお。それは嬉しい事だな。ではその他の作物を少し減らしてトマトという作物を増やしてもらっても良いか?料理長に研究させよう」


「了承いたしました。そのように致しましょう」


 ――完敗だ。先に釘を刺された。多分私の魔力を感知されてしまったのだ。



 完全に遅刻で学園に行くが、王家から献上の連絡があったのか、特に咎められなかった。


 バリアに攻撃を加えていた女子生徒は足を痛めたらしく、これみよがしに包帯を大げさに巻いていたが、私が癒す義理はない。


 完全にスルーだ。偶にちらっとこちらを見るのをやめて欲しい。


 保健室で湿布でも貼って貰えばいい。


 休み時間、ミラちゃんとクロード君と雑談していると、包帯の巻いた足を引き摺るように大げさな動作で、女子生徒がやってくる。


 私は絶対零度の目で睥睨した。


 女子生徒の足が止まる。


 暫く距離を取っての睨み合いになったが、バリアへの攻撃がバレてると解ったようだ。


 歯軋りするとダンダンと足音を荒げて席へ戻っていく。


 おい、怪我して引き摺ってた足はどうした。


 ただ、怪我は本当にしているようで、席に戻ってから足を擦っていた。


 一部始終を見ていたミラちゃんもクロード君も少し困った顔をして、「クラスメイトがごめんね」と言ってくれたので、もう忘れる事にした。


 昼に見かけなかったので、保健室にでも行ったのだろう。


 それ以外は普通に学園生活を過した。


「シェラドさん、狩りの時の注意があるんだけど!」


「どうした?」


 家に戻るとシェラドさんが居たため、葡萄の話をする。


 だが、獣人であるシェラドさんは毒素を嗅ぎ分けていたようで、葡萄は見かけた事があるが、手は出していなかったそうだ。


 シェラドさんは本当にしっかりしているなあと思う。


「今後はその葡萄も毒抜きして育ててるから、デザートに出せるようになると思うよ」


「そうなのか?美味しそうだったので嬉しいな」


「ふふふ。期待してて!」


 今日は鶏を丸一羽照り焼きにして内側に野菜と潰したじゃが芋を詰め込んだもの。


 ソーセージ、家庭科の先生から貰った固形コンソメで作ったコンソメのポトフ。


 ポトフにもソーセージを沢山入れた。


 ポトフにも野菜がごろごろ入っているが、シェラドさんの尻尾はしんなりしない。


 ソーセージが入っているからだ。


 何を食べても美味しいと顔を綻ばせながら食べてくれる。


 今度ミートドリアでも作ってみようかな。


 シェラドさん、ハンバーグも好きみたいだし、挽肉が好きなのかも知れない。


 にこにこばさばさしながらご飯を食べるシェラドさんと食べるご飯は私も美味しい。


 こんなに嬉しがって貰えるならば作りがいもある。


 最後に桃を食べて甘味に舌を喜ばせながら食事を終えた。


 後片付けをして体を水で拭く。


 あったかいシェラドさんの懐に飛び込んで眠った。




そろそろ不審の募ったユーリが動きます

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