第二十七話 王都学園と魔法陣
学園生活再び、です。農業もあるのでかなり大変な生活になりますが、学生達は頑張ってます。
全ての作物が増やした分も含めてかなり安定して皆が野菜を口にし、少し余剰が出て来る野菜も出てきた。
それと同時に私達は学園に通う事になる。
仕方なく、農地や田は、夜明けから作業する事になった。
学園があるから野菜が食べられなくなった、というのは生徒も私も許せる事ではない。
作業が一段落し、収穫した野菜を自宅に送ってもらい、皆は学園に通う準備をしに戻る。
私もお風呂に入って学園に行く。
中学1年として編入すると、皆に凄い目で見られた。好奇心の視線だ。
「えー、ユーリちゃんは村の学園でスキップ試験を受けて、6歳だけど中学生だ。騎士で守備隊でもある。そして勇者でもある。あまり失礼な接し方をしないように」
「なにその肩書き凄すぎるんだけど!」
「え~でも村の学園でしょ?勉強ついてこれるの~?」
「そこは6歳なんだから、協力して勉強教えてあげてもいいんじゃ?」
「え―私放課後は直に帰って遊び行きたいし―」
「でも勇者の守備隊の人って聞いた事あるよ。2人で王都の三分の一を護ってくれたって。俺も世話になったんだよ」
「あー、あたしも焦ってて顔は覚えてないけど、小さい子に助けられたわ。ユーリちゃんだったのね」
ざわざわと騒ぎ出す生徒たちを手を鳴らして教師が場を鎮める。
「ユーリちゃんは編入試験は満点だった。君たちも気を抜かないように」
しーんと場が静まる。私は挨拶をする。
「編入してきました、ユーリです。基本的に私が居るので、孔が開いたらこの学園からまず退治していきます。その際急ぐので、窓ガラスが割れたりします。このクラスでは中に居るので大丈夫ですが、他のクラスの方に、ガラスに気をつけるよう伝えてください。宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げて自分の席へ向かう。何が気に入らなかったのか、遊びに行きたいと発言していた女生徒が進路に脚を出して来る。
足首目掛け、思い切り脚を振り下ろす。グキッという音が聞こえた。
「いぎゃぁあああああ!!足!私の足…!」
「ああ…そんな所に伸ばしてくるので踏まれたいのかと思いまして。遠慮はしませんでした。言い忘れてましたが、私をチビと侮って掛かってくる輩には、私は一切の容赦をしません。心に刻んでおいて下さい」
ざわざわ、とまたクラスが騒がしくなる。
「あー…マイラ君も足を出したのは良くなかった。けれど怪我をさせるのはやり過ぎだよユーリちゃん」
「はあ…ぬるいんですね。仕方ない…癒しの光」
足首を癒す光を飛ばし、そのまま授業の用意をする。
痛みの消えた女生徒はこちらを睨むが、殺気を纏った睨みで黙らせる。
「ひ、ひぃ…」
「懲りずに仕掛けられるようなら、今度は癒しません。王に陳情して学園に通わなくてもいいように交渉します」
まあ、そんな陳情を入れても多分私の教育を王は諦めないだろう。
重要なポストに付けたがっているのが今から解るからだ。
と、なると学園の風紀を問われる事になる。
教師もそれに気付いたのだろう。少し青ざめている。
「皆、そんなに素行の悪い子達だとは思いませんが、不必要にユーリちゃんに不利益を齎すような絡み方をした場合、退学も覚悟して貰います。これはユーリちゃん相手だけではなく、他の生徒でも同じです。風紀が乱れるような事をしないように」
さわさわと教室がまた騒がしくなるが、結局足を出していきなり転ばせようとしてきたマイラが悪いんじゃないか、という事で話は終わったようだった。
ただ、そのマイラという子の友人らしい子達は微妙な顔で私を見ていた。
授業が始まり、教師の質問にも答えていく。
テストでも思ったのだが、村の教育に比べてかなり緩い。
やり直しをしている気分になりながら、スラスラと問題を解いていく。
体育でも光魔法を使ってそれなりの結果を出す。
クラスメイトは私にどう接していいのか解らない様子で少し遠巻きだ。
私に助けられた、と言っていた女生徒は、何も気にしていない様子で話しかけてくれる。良かった。友達は出来そうだ。
1日目、学園から帰ろうとすると、この間の女騎士が待ち伏せしていた。
「悪い、不躾だが君にお願いがあって待っていた」
「あ、はい…なんでしょう?」
「私達も野菜が食べたくて家庭菜園のようなものを作ってみたのだが、もし良ければ君の魔力を注いで貰えないだろうか…」
「…?王宮になら魔力持ちなんて他にも居るのでは?」
「彼らは業務で魔力を使ってしまっているからね、頼み辛いんだよ」
「はあ…まあ余り広くないなら良いですけど」
「本当か!有り難い!こちらに来てくれ」
王宮を迂回するように裏庭に通され、裏庭の一角に菜園があるのが見える。まだ芽が出たばかり、といった具合だ。しかしなぜこんな日当たりの悪い場所に?
「あの。あっちの方の日当たりの良いところに作り直したほうがいいです。ここじゃ育つかどうかも解らないです」
「そうなのか…?でも王に許可された場所が此処だったんだ…。魔力でどうにかならないだろうか?」
「後で王に移動のお願いをした方がいいですよ…」
「今回だけ…試してみたい、お願いしたい!」
「はぁ…」
なんだろう。納得いかない。
こんな場所に作物を植えろとあの王が?
しかもそれに従って建物スレスレの日陰に菜園を?
魔力を流そうとして気付く。ここに流した魔力は何かの魔法陣へ通じている事に。しかもあまり良い感触ではない。
民に貢献するような魔法陣だと思えない。
私は探っただけで魔力は流さなかった。
「…騙しましたね?」
「え?いや、私はこの菜園に魔力を流して欲しかっただけで」
「これはただのデコイですよね。ここに魔力を流すと何処かにある魔法陣へ流れ込むよう設計されている。私は何かも知れない魔法陣へ魔力を流す事を承諾した覚えはありません」
「…っ……」
「私は不快です。次の頼みごとを聞くとは思わないで下さい。では」
騎士は何も言わず、俯いて唇を噛み締めていた。
私はそのまま王へ謁見を申し出る。名パスでまた直に通された。
「今日はどうしたのかね。ああ、野菜は凄く美味い。非常に嬉しいプレゼントだったよ」
「はい、それで今日は王宮にも菜園を作りたいと騎士に呼び出されたのですが、私に魔力を流せという菜園に細工がされており、正体不明の魔法陣に魔力が流れるようになっておりました。これに王も加担されているならば、私達は王都から去らせて頂きます」
「いや、儂は裏庭の使用を許可しただけだ。誰だそんな小細工をしたのは…すまないユーリ殿。こちらでも犯人を捜しておく。呼び出した騎士にも懲罰を与える。本当に迷惑をお掛けした…何かこちらで補填出来る様な事はあるだろうか?」
「いえ…今後こういう詐欺のような呼び出しを無くして貰えれば充分です。きちんと手綱を握って下さい」
「…そうか。では、今後はきちんと監視の目を置く事にする。今回は申し訳なかった」
「解りました。今のところはそれで納得します。では、御前を失礼します」
なんともモヤっとする終わり方だ。王城で感じる魔力と同じような気配があった。
城の地下で何が行われているか王が把握していない、というのはありえるのか?
それとも専門分野ではないから魔法陣の用途を誤魔化されているのか?
ふはーっと息を吐く。頭が熱を持ちそうだ。明日もめちゃくちゃ早いんだから、早く帰らないと。
家に帰ると、既にシェラドさんが帰ってきており、嬉しそうに熟成されたリムザ肉で腸詰を作っていた。
早朝に以前作った分を燻製して貰ってきたばかりだというのに。
そんなに気に入ってくれたのか。
「ただいまシェラドさん!」
ふっと身体から力が抜けるのに気付く。学園、王宮と非常に不快で嫌な目に合ったせいで身体が緊張していたようだ。
今日はラードで野菜を揚げて、とろみを付けた餡を掛ける。ちゃんとビッヒの肉も揚げてある。とり天というやつだ。
それとほうれん草の白和え。
最近学生が探し出してきた種だが非常に使いやすいし栄養もたっぷりで重宝している。
にがりはピーターさん達から貰っていた。
また取りに行ってくれるというので、昆布やカツオに似た魚が居たら欲しいと我侭を言ってしまった。
あまり気にし過ぎないで居て貰えるといいんだけど。
自然薯を擦って浄化した卵の生卵をかけて醤油を掛ける。
それをご飯にかけて出した。出汁がないので少し物足りないだろうけれど、調理前に魔力も通してみたし、そこそこ美味しいに違いない。
結果的に、シェラドさんは、自然薯を掛けたご飯を美味しく食べてくれた。
つるつるした食感も気に入ったようでお替わりもしていた。
野菜の天ぷらもさくさくととろーりが気に入ったようでにこにこしながら食べている。
私も美味しく舌鼓をうつ。
自然薯、擦って食べたかったんだよね!ごはんに掛けて!
願いが叶って食べられて本当に嬉しい。出汁がなくても美味しい!嬉しい!
天ぷらも美味しい。さくさくだ。
白和えは味噌との配合に苦心したけど、苦労が実ってこれも美味しい。こんにゃくがあればもっと良かったんだけどなあ。
まだ早い時間だけど、起きる時間が早いのだ。
ご飯が終わったらすぐ寝るくらいで丁度いいだろう。
軽く身体を水で拭いて就寝する。
シェラドさんのお風呂時間も、私に合わせてくれて、農作業の後の朝のうちに一緒に入ってくれる。
何度も石を焼くのは大変だし、水をバスタブの分だけ汲むのも大変なので一緒に入るようにしている。
私が育ってきたら分ける必要があるだろうけど、今のところちんちくりんなので問題ない。
10歳くらいになったら考えようかな。
起きる時間まで合わせてくれるシェラドさんの優しさに甘えて、あったかいシェラドさんにひっつきながら眠った。
正体が不明のままの魔法陣が気になるところですが、ユーリに王城を捜索する権限はないのでまだ探りを入れる事が出来ないですね。
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