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第二十五話 騎士と3人の生死

騎士として任される仕事とは一体何なのでしょうね。3人は反省してません。

 市街の3分の1を2人で護った事が考慮され、私達は王に呼び出され、騎士の称号を与えられた。


 王城勤務に変える気かと思ったが、今までどおり市街の守護をお願いしたいらしい。ただ給与だけが上がった。後、何かあった際に王城で何かの問題が起こった際に呼び出されることもある、との事。


 制服と紋章、賞与を与えられて御前を下がった。


 制服…多分王宮に呼ばれた時だけ着ればいいのだろう。(ホール)の処理時には動き辛そうなので着る気はない。


 遅れて農地へ赴くと、作物の根や茎などを掘り起こして整地していた。根は処理し、茎などの野菜屑はコンポストへ入れる。


 田も根を起こして抜き取っていく。整地が終わったら、堆肥を混ぜて畝を作っていく。


 私は先にコンポストに魔力を通して発酵を促進させる。でないと使えない。


 皆、汚物を運ぶのに少し慣れたようで、石鹸でじゃぶじゃぶ手を洗うのは変わっていないが顔は死んでない。


「ねーねー、私市場でいいもの手に入れたの!ほら、とうもろこしの種!」


「えっ農業に役立つものも売ってるんだ!?」


「驚くのそこ!?いやまあ、私も思ったけど!」


「でもまだ野菜残ってるんじゃない?促成栽培…今するの?」


「王に献上しておかないと、土地借りてるんだしさ」


「あ―…すっかり忘れてた」


「一先ず、発酵食品分の大豆は結構採れたから、大豆の面積を減らした分にとうもろこし植えてみたらどうかな?」


「いや、大豆はそのまま煮豆にしたりもするだろ?畑広げればいいんじゃないか?」


「米もちょっとしか持ちそうにないんだよな…こっちも拡げる?」


「あーね。まだまだ土地余ってるしね」


「んじゃ耕すか」


「ユーリちゃん、先に切り目入れて貰えるかな」


「いいよ!」


 大体の範囲を指定して貰い、切れ目を入れて回る。


 終わるとわっと皆が駆け寄って耕し出す。小石などの不純物を取り除いて整地した後は、堆肥を撒いて混ぜ込み、畝を作る。


 田を倍の広さになるように切り取り、土を皆にどけてもらう。種籾も以前の倍、水に浸して魔力を通す。


 こちらにも堆肥を漉き込んで貰って水路を開ける。


 後は明日苗に育ったものを植えて行くだけだ。


 種まきを手伝って、今日の作業は終わり…ではなく、農地にまた魔力を流し込むよう頼まれ、魔力切れでぱたりと倒れる。


 そして木陰で女子生徒の膝枕で目を醒ます。


「こうなるって解ってたんだけどね…ごめんね、毎回どうしても頼っちゃって…」


「んーん。もろこし食べたいし…」


「あ、私もとうもろこし楽しみ!焼きかなあ茹でかなあ…」


「蒸してから焼く、かなあ。焼くだけだとなんか熱通るか心配…」


「あーね…あっちの世界の露天の奴も生からは焼いてなかったもんねえ」


「あ、私作ったことあるよ焼きとうもろこし。レンチン結構長かったよ」


「じゃーやっぱ蒸すか茹でてから焼くって事で」


 わいわいともろこし談義をした後、今日は解散になった。


 私は少し復活した魔力でバリア範囲を拡げるべきかと思ったが、今やったらもう一度倒れる気がしたので明日にする事にした。


 次の日、足跡を見た私は慌てて農地と田んぼのバリアを広げる。


 リムザとゴンゾだ。まだ成っていないが様子見しに来たのだろう。


「狩り班に、畑周辺を特に丁寧に回るよう周知しなきゃ…」


「一応守護のバリアは張ったんだけど、効くかどうか解らないし…多分大丈夫だと思うんだけど」


 周辺を見回ってた男子が、藪の中にリムザの巣を見つける。


 大人のリムザは直に駆除されたが、問題はうり坊だった。5匹ほどもぞもぞしている。


 可愛いのだ。


 なかなか剣を振り下ろせない男子に代わって光刃で止めを刺す。


「ユーリちゃ…」


「すぐ育つの。すぐに親と同じ体格に育って襲ってくるよ。殺しておかないとダメ」


 しょんぼり肩を落とした男子生徒に重ねて言う。


「あと、子リムザは丸焼きが美味しいよ」


 折角奪った命だ。無駄になんてさせられない。そこは解っているのか、皆は親子共々に血抜きを始めた。


「うちはシェラドさんがいっぱいお肉狩って来るから、熟成の終わった肉もまだまだ消費仕切れてないの。学園の方で足しにしてね」


 そろそろなんとか肉を大量消費しないといけない。鍋一杯の角煮なんかどうだろう。玉葱も入れよう。


 まだ周辺を見ていた生徒は、今度はゴンゾを見つけて狩っていた。


「ちょっと見回っただけでこれか…やっぱ畑があるからか?」


「そうかも知れないねえ」


「狩り班にちゃんと見回るように言わないと」


「そういや桃の木、かなりでっかくなったよな。どれくらい採れるかなー」


「全員に行き渡るのは難しいかもね。増やさないと」


「ユーリちゃんには絶対あげるからね」


「え、いいの?」


「3年待たずに食べられるのはユーリちゃんのお陰だからね」


「そろそろ花が咲きそうだから、明後日くらいには成ってる気がする」


「桃も促成栽培…!でもなんか凄く味良いんだよな、野菜。こんな美味しい野菜初めてだって皆言ってるよ」


「魔力の所為かな?」


「それしか考えられない。他は普通に育ててるもの」


 もしかしてシェラドさんが野菜を美味しいと言ってくれたのはその所為なんだろうか。


「促成栽培出来る上に味が凄く良い!魔力万能じゃん!ユーリちゃん凄い!」


「米も凄いんだよ。もうぷりっぷりに粒が膨らんでて!凄く甘いしめっちゃ美味しい!まあ、お陰で消費量がやばいんだけど。あ、今日精米した米と精米機、ユーリちゃん家に持っていくね!こっちじゃ糠漬けもやってるよ。糠要る?」


「欲しいかも」


 そういや燻製して貰った腸詰も今日取りに行かなきゃ。


「ね、昨日は農地だけだったから、田んぼにもまた魔力…だめ?」


 そっとお伺いをたててくる学生に笑って快諾する。


「倒れたら後よろしくね」


 面積の増えた田んぼに魔力を流す。さわりと苗が靡いたような気がした。


 少しだけMPが残り、倒れずに済む。連日魔力をバカのように使っているからか、増えたのだろうか。


「今回は大丈夫みたい」


 ちょこっとふらつきながら言うと、さっと私を抱き上げた女生徒が、私を寝かせてくれる。


「ふらついてるからね。無理せずちょっと寝て?」


「…あい」


 気持ち良い風が吹いている。1時間ほど眠って魔力は少し回復した。


「ん、もう大丈夫」


「そう?良かった。ほんっとうに、いつもいつも有難う!!これからもよろしくねユーリちゃん!!」


「大木とかはこっちに来ないようちゃんと狩場の割り振りするから心配しないでね」


 今日はここまで、と全員が引き上げていく。米と精米機を持った男子がうちまで届けてくれた。


 精米機にはハンドルが付いていて、勿論手動なんだけど、瓶を棒で突く事を考えれば全然効率が違う筈だ。


 精米機を台所に片付けたら、家庭科の先生の所へ行く。


 今日は角煮だけど、明日の朝ソーセージを焼いてあげよう。


 浮かれていると、横合いから剣戟が飛んで来る。さっと避けて、相手の腹に光刃を叩き込む。


「ぎゃあああああ!!勇者の癖に!こんな事していいと思ってんのか!!?」


 だらりと腸がはみ出してくる。


「あんたは首を狙った。何故手加減せねばならない。私は常々思っていた。次は無い、と。3人揃って死んでくれる?」


 ヴンッと音が鳴り、私の周りに光刃が展開する。


「ひっ…」


「俺は抜ける!」


「いてえよお…!!」


 残りの二人は片脚を貰った。


「ぎゃぁあああああ!!」


 学園エリア近くの事だ。生徒達が集まってくる。


「大木、田代、鳥羽…お前ら…」


「こいつが!!急に攻撃してきたんだ!!俺らは何もしてねえ!!」


 私は無言で先ほど首を狙って切りかかってきた大木達の映像を光で再生させる。


「…これは…でもうーん…」


「早く治せや勇者!できんだろうが!」


「私は癒さない。神官に頼みにいくんだね」


「勇者だろうがー!」


「勇者にも我慢の限界があるんだよ。もし次があったら躊躇わずに首を落として殺す」


 睨み付けると、ひっ、と顔を歪める。


「お前…お前ばっかり…!!!」


「もうやめろよ大木、世話になってる相手だぞ。お前じゃ代わりにもならない!」


「それが気に入らないって言ってんだよ!!」


「もうお前らの面倒見るの限界なんだよ、このまま死ねばいいんじゃないのか!?平和になっていい!!」


「…はぁ…?お前ら…見捨てるのか…?」


「これ以上ユーリちゃんに絡むようじゃ私達だってもうあんた等の事庇えないわ」


「せ、せめて、し…神官まで連れてってくれるよなあ?」


「………」


「…う、嘘だろ…死んじまう…!腹が痛いんだ!!頼む!!」


「……どうする?私はあんまり必要性を感じないんだけど…」


「あたしも…」


「でもまあ…寝覚めは悪いかも」


「でもこいつらだけわざわざ別で班割り組んだり鬱陶しいんだよな」


「それなのにまだこんな事してるとか…剣まで使って殺意しかないよな」


「ま…待ってくれ、助けてくれ…もう、関わらない…関わらないから…死んじまうよ…」


「……信じていいのか?」


「……次があったら見殺しにすればいいんじゃね?どうせこいつらじゃ敵わないみたいだし」


「見殺しにするまでもなく瞬殺で頭部を落としますから」


「ひっ…」


 そろそろ失血で顔色が白くなってきている。これ以上放置するとこいつらは失血死するだろう。


「助けるなら早めでないともうすぐこいつら死ぬよ」


「…しゃあねえな。神官のトコまで持たなかったらそれが運命だと受け容れるんだな」


 男子生徒が3人、3人に肩を貸し、千切れた足を持って神官の詰め所へ歩いていく。まあ、あの速度じゃ6割死、4割助かる、って感じかな。


「…腸詰受け取りに来ただけなのに…」


 はぁ~、と疲れた溜息をつくと、周りの学生たちから謝られた。他の学生に思うところなどはないので、その謝罪を辞退する。


 むしろもう次は殺していいんだと思うとちょっとスッキリした。


 腸詰を受け取って家に戻る。大鍋一杯の角煮を作成し、ごはんを炊く。


 一応シェラドさんの分も炊いておいた。余ればおにぎりにして私が明日食べればいい。


 魔力の所為なのか、シェラドさんは米を美味いと言った。そしてご飯と一緒に角煮を食べてご機嫌になる。


 ばっさばっさと揺れる尻尾を見ながら、私は同じ物を美味しく食べられる事が嬉しかった。


 ご飯もお代わりし、鍋一杯の角煮も平らげてくれる。


 食器を洗ったら、2人でお風呂に入り、背中の流しっこをする。


 シェラドさんの背中は広くて逞しい。やっぱりこういう部分は男性には勝てないなあと羨ましくなる。


 一先ずあの3人の生死は気にしない事にしてシェラドさんと一緒に眠った。



反省のない3人でしたが、死の恐怖は叩き込まれたと思います。次に仕掛けるかどうかは彼ら次第ですね。

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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