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第二十二話 王都とおもてなし

学生達は村で舌が肥えました。

 1月の間とはいえ、500人が住むのだ。


 色々と話し合った結果、雨が流れ込まないよう少し高台になっている広い土地に盛り土をし、シェラドさんが何度も岩盤を運んで砕き、石畳を敷く。


 土木業者がそれを平らに且つセメントで隙間を埋めていく。


 その上に木材を敷き詰め、柱を立てて、梁を作り、屋根を作る。


 男子用、女子用で真ん中で仕切り、外側を岩盤とセメントで埋め、木製の簡易窓を付ける。


 入り口は女子用男子用別になっている。ピーターさん達が喜んで羽毛入りマットを作成してくれ、床に敷いた。


 1月だけ過す、というならば多分テントよりは居心地は良いだろう。


 布団までは用意が出来なかったため、学園で使っていた布団を使うようだ。道理で全員大荷物な筈だ。枕まで圧縮して持ってきている。


 簡易な建物とは言え、ささっと仕上げた土木業者に感心した。


 少し狭いようだったが、1月という期限付きだと言う事で生徒達は概ね納得したようだ。


 そして、狩りばかりでは肉が消費しきれないだろうと、狩り部隊よりも手伝い部隊の方に多く人員を割いた。


 農業を手伝ったり、調味料を合わせるのを手伝ったり、織物を手伝ったり、建築を手伝ったり。


「これ以上肉を追加されても消費出来ないからねえ、凄く助かるわ」


「でも自分達の分の肉は狩って来てるみたいよ」


「これはちゃんとごはんを出してあげないとねえ」


「若い子はきっと沢山食べるわよね。肉は少し多目で野菜も摂って貰わないと」


「売る分がなくなっても、電化製品で潤ってるから特に野菜を売る必要もないしねえ」


「久々に南瓜シチューなんてどうかしら」



 狩りや手伝いを終えて帰ると、暖かくて美味しい食事が用意されている。


 生徒たちの顔が一気に綻んだ。


「うわー!何コレ美味しいー!元の世界と遜色ないじゃん!うう、調味料マジ大事…野菜大事…」


「美味しい…美味しい…おいしいよお…」


「こっちの焼肉、タレが本気で絶品なんだけど!肉が倍美味いんだけど!」


「こっちのドレッシングだって!私が好きなシーザードレッシング!卵浄化するとマヨネーズ作っても大丈夫なんだって!」


「マヨ!俺この粉吹き芋に掛けたい!」


「はいはーいマヨとケチャップあるよお~!取り合い禁止な!」


「ねね、種こっちで買って行って、王都の回りで農業して美味しい野菜食べよう!」


「王都って畑ないらしいよねえ。でも私この揚げ茄子王都でも食べたい」


「玉葱ないと私殆ど料理出来ないんですけど」


「ちょっと私本気で調味料の合わせ方学ぶわ…あと醤油と味噌の麹が貰えないか交渉するわ」


「じゃあ私米作る!種籾貰えないか交渉する!!」


「まあ、この人数の口に入るか謎だけどさ…王都でも売ってないかな、米」


「パンが主流だろうなあ…」


 獣人の国では炭水化物すら重視されていなかったので、パンが普及しているだけでも有り難くはあるのだが。


「まあ、行って見ないとなんとも言えないけど、この村居心地良すぎて此処に定住したくなっちゃうよね」


「そういや外人さんこっちで初めて見たな」


「あ、それそれ!なんかさ、海の種族のトコから来たらしいよ。海の中に巨大孔ホールが出来るから、殆どの人が溺死するらしいんだけど、偶に海の種族の人に助けられて生き延びる人が居るらしい…んだけど、海以外岩盤地帯の過酷な地で生き残れる人が余りいないらしいよ…」


「マジか…俺等まだ獣人の国でマシだったのか…ピーターさん達凄い人達だったんだなあ…サバイバルの達人?」


「全員軍の関係者らしいよ」


「ああ――…納得。一般人は皆……」


「…だろうね…」


 暫し賑やかだった食事の場に沈黙が落ちる。


「…っで、でも、これから巨大(ホール)が開いた時は、今度から海に皆で迎えに行ってあげれば少しは助かる人も増えるんじゃない?ね?」


「そうだね、このことちゃんと覚えておこう」


 後はまたわいわいと賑やかに生徒たちの食事は過ぎて行った。


 1月が経つのは早い。500人を移動させる馬車が大挙して村へとやって来る。学生達は涙ぐみながら村の人々と別れを惜しんでいた。


「調味料の合わせ方、私忘れませんから!麹も大事に使わせて貰います!」


「いつも美味しい料理ありがとう!!もう此処は俺の第二の故郷みたいなものです!」


「お土産の野菜もありがとうです!大事に食べます!」


「まぁまぁ、またいつでも来ていいのよ」


「そうそう、歓迎しますよ。ごはんも食べて行ってくれていいからね」


「はい!絶対また来ます!」


 一頻り惜しんだところ、やっと生徒達は馬車へ乗り込む。私達も同じく乗り込み、丸一日掛けて王都へ向かう。



途中何度か食事休憩を取る。貰ってきた野菜と肉を煮込み、貰った調味料で味付けする。


 流石にご飯を炊く余裕はなくパンだったが、美味しく食べることが出来た。


 シェラドさんは肉の少なさにちょっとしょんぼりしている。近くに居たリムザを狩り、血抜きをして肉を焼いてタレを付けてあげる。


 シェラドさんは嬉しそうにその肉を食べていた。尻尾がふりふりしている。可愛い。


 残った肉を持って馬車に入り、二度目の食事休憩でまた切り出してあげる。この後には特に食事休憩はない為、余った肉は学生達に分けてあげた。



 馬車が王都に着く。わらわらと役員達が並んで頭を下げる。


「ようこそ、王都に来て頂いて大変感謝します!どうぞ私達をホールの脅威から守って下さい!」


「宜しくお願いします!!」


 ぴたりと息の合った挨拶だった。生徒たちは戸惑いながらも、その様子に圧倒されている。


「こ…こちらこそ、宜しくお願いします」


 全員がぺこりと頭を下げた。


「皆様の住まいはこちらでご用意致しました。一通りの家具も入れてありますが、足りないものがあれば仰って下さい。ではまず住まいへ案内します!荷物を置いた後、夕刻から守備隊への登録をお願いします。それもこちらで案内しますので、6の刻に此処にまた集合して貰えますか?」


「あ、はい、お願いします」


 伝えたグループ毎に役員が別れ、それぞれを案内して住居へ連れて行く。


 学生達はキョロキョロしながらも、王都の広さに面食らっているようだった。


 違うエリアでも遠い場所に配置された生徒とは中々連絡も取れないだろう。


 その生徒達の心を宥める『先生』の存在を、王は認めてくれている。生徒達の半額になるが、給金が支払われる事になっている。


 6の刻になり、全員が集まってくる。私達も登録していないので一緒に登録する事になる。


 ぞろぞろと全員で歩き――通行人の邪魔にならないよう2列で歩いたので長い列になった――30分ほど歩いただろうか、守備隊の駐留所に辿り着く。


 全員で並んで契約をしていく。私もサインと拇印を押して契約した。


 その後、全員が王宮へと案内され、晩餐を振舞われる。


 食器は凄く豪華だ。豪華なんだが。


(正直、あの村で舌が肥えてしまって…美味しくないなあ…)


 そっと様子を伺うと、生徒たちも微妙な顔だったり愛想笑いで誤魔化していたり。


 村から調味料を貰ってきていて良かった。


 調味料の配合も、色々とレシピを書いて貰った。いざとなれば自分で調合すれば良い。


「すまんな。まだそちらの村の調味料を学んだものの調味料が普及しておらんのだ。物足りない食事となっているならば謝罪しよう」


「あ、い、いいえ、謝罪までは!」


 パンにはとろけたチーズが乗っている。これは美味しい。皆同じ気持ちなのかパンばかりが消費されていく。


 シェラドさんは眉尻を下げながらも肉ばかり食べている。


 こればかりは王の所為ではないし、誰も文句は言えない。多分、この国では1番の料理人が腕を振るったのだと言う事は伝わるからだ。


 ちょっとした野菜や肉も飾り切りされ、非常に見目美しく盛り付けられている。


 王宮という場所もあり、非常に会話の少ない食事になった。


 そしてまた案内人が付き、全員を住居へと案内してくれた。


 もう夜だ。寝床はふかふかだったが、冷蔵庫はない。コンロもないので竈だ。


 そのうちあの村に買いに行こう、と心に決めて、今夜は休む事にした。


そのうち王都でも村のレシピの調味料が広がるといいなと思います。

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