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第十九話 スキップと金髪の人々

他国の人との初遭遇ですね。

 私は今、校長室に居る。便宜を図ってもらいたいという以前に、各教師達にも知っておいて貰いたい事があったからだ。


「で、どうしたのかね、ユーリ君」


「はい。私には前世の記憶があります。…成人女性で、寿命まで生きました。…端的に言うと、小学校というだけでも過すのに肩身が狭いのですが、それを抜いても、先生方に子供扱いされるのも少々心にくるんです」


「それはなんとも不思議な…いいでしょう、先生方には話しておきましょう、しかし。生徒はそうはいきません。其処は堪えて下さいますか?」


「ええ、了承しました」


「あちらの世界のように飛び級制度が無い訳ではないですが、高校への進学を希望されますか?」


「高校…勉強内容、結構忘れちゃっててついていける気がしなくてですね…中学からならいける気がします」


「では、中学への中途編入飛び級テストをします。暫くお時間頂けますか?」



 暫くした後。校長室に机が用意され、問題用紙が配られる。


 開始の合図と共に数学のテストを裏返し、私は目を剥く。え?中学ってこんな難しい問題解いてたっけ?xとかyとかもう覚えてないんですけど!


 私はぶるぶる震える手を挙手した。


「すいません、このレベルの問題はもう覚えてなくて解けません…。しょ…小6の問題をお願いしていいですか…」


 入学、ならばどうにかなったかもしれないが、中途転入の身なのだ。解けない問題と向き合い続けるのは厳しすぎる。


 案の定、小6の問題ならばなんとか解けた。採点がまだだが、私は多分小6へスキップする事になるだろう。


 私は方を落として校長室を後にした。


 聞いた所によると、海の種族も山の種族も、金色の髪のあちらの人間と巨大(ホール)が繋がっているらしいが、海の種族は海中に居を構えているため、ほぼ溺死するらしく、山の種族は、種族の発展の為、あちらの人間を抱え込んでいるそうだ。


 言葉は私達もだけれどナニカに翻訳されるらしく、コンタクトに難儀をする事はないらしい。おかげで英語という苦手教科がない。それだけでもあり難かった。


 …海の種族と繋がった人々には災難この上ない事だろうけども。何名かは海の種族に助けられ、海の種族の住む近くに村は出来ているようだ。



 次の日、採点結果が出た私は、6年の教室へ向かう。流石に体格が違う。


「この子が編入生ー!?うそ、可愛いー!」


「1年じゃないのか?」


「スキップしたらしいよ。テストほぼ満点だったってさ」


「嘘、君本当に凄いんだね!」


「え、ぁ、あの…、宜しくお願いします…っ」


 同じ集られているにしても、質量が違う。壁に囲まれているような気分だ。


 あわあわあっぷあっぷしている間に先生が教室に入ってくる。一気に散開した生徒達に解放され、やっと自由になった。まさか小さいからって抱き上げて確認されるとは思わなかった。


「ユーリちゃん、こっちに」


 教卓付近に呼び出されると、先生は紹介を始めた。もう皆知ってるみたいなんだけども。


「ユーリちゃんは5歳ですけれど、非常に学力が高いので、6年へとスキップして来ました。戦士としてバケモノを倒してくれる頼もしい存在でもあります。緊急時にユーリちゃんから指示があれば従うようにね」


「紹介頂きました。ユーリです。勇者をしています。(ホール)が開いた際には、この学校での異形退治を任されています。ガラスを割ることもありますので、皆ガラスから離れるか、机の下に避難して下さい」


 ざわざわと教室が騒がしくなる。


「どうぞ宜しくお願いします」


 ぺこりと頭を下げ、自席に戻る。


 クラスメイトの多数の好奇の視線と、ごく少数から反感の視線を感じる。多分こんなチビから守ってもらうというのが矜持に触れたのだろう。


 そして先日の事を思い出したらしい。


「あの時窓ガラス越しにバケモノを一掃したのが、そのチビ…?」


「チビというのはお止めなさい。そうですよ。助けてくれたのはこのユーリちゃんですよ」


 すごい、瞬殺だった、と今度はざわざわが大きくなる。反感の視線も薄くなった。


 時間が押した所為で、HRから1時間目の授業まで時間がなかったのは幸いだった。


 授業内容はかなり難易度が上がり、そこまでムズムズせずに受けられるようになった。むしろ小6で此処までやったっけ?と疑問にすら思った。流石に遅れをとったら恥ずかしいどころの話ではない。意地でも学園トップを維持してやる。


 今のところは充分ついていけている。多分中学レベルに差し掛かり始めた辺りを気をつけなくてはならないのだろう。


 休み時間ごとにクラスメイトに集られながら、なんとか下校時間になった。



 村へ戻ると、こちらへ歩んでくる金髪の人が数十名見えた。ビックリして眺めていると、金髪の欧米人がにっこり挨拶してくれる。


「こんにちはお嬢ちゃん、僕たちは海から来たんだよ。こちらに来たほうが良い暮らしが出来ると海の人が言ってくれてね。この村の隣に村を作っていいか伺いに来たんだ。生活様式の差なんかもあるだろうから、一緒の村に居ると摩擦が起こるかも知れないからね。いつまでもイイ関係で居るにはお隣さんくらいの距離があった方がいいかと思ってね」


 そう言いつつも、なんとか布、と言えなくもない着衣に、獣の皮を縛っただけの靴、風呂にも入れていないだろう、海風の所為もあってねっとりとした髪を見ると、この村の人は放っておけなかった様だ。


 40名程居た海の人を風呂に案内し、衣服も靴もサイズを聞き取って人数分用意し、農具などを用意してあげている。


 土木を担当している人は、風呂の壁越し、どんな家に住みたいか聞き取りしている。


 野菜を使った食事も用意して、風呂から上がった人々が食べられるよう、村の会議室の机に並べて置いていた。


 風呂に入れた、と言うだけで、海の人たちは涙ぐんでいた。


 清潔な服も着せられて、一生懸命感謝を伝えてくれようと身振り手振りと言葉で表してくる。


 そして食事を食べてついに涙が結界し、「美味しい、美味しい、おいしい…」と何度も繰り返しながら泣きながら食事を摂っていた。


 それを見ていたこの村の人々もつい涙ぐむ。


 異形は自分達で退治していたとの事だったが、海の種族に貰ったという剣は水魔法を利用する事が前提の魔法剣だったようで、そのまま使うとただのなまくらだった。


 全身の力を込めて一点を突くことでなんとか核を割るに至っていたらしい。外した者は犠牲になる事が多かったとのこと。それを聞いた村人は街の鍛冶屋で人数分の剣を揃えてあげる。


 村長が言う。


「君達の村の家や畑を、ある程度私達に作らせて貰えないか?その分狩りで貢献してくれればそれでいい。寝起きは会議堂を使ってもらうけれど、それでもいいだろうか?」


「そ…そんな、そこまでは…」


「折角のお隣さんなんだ、心配くらいさせて貰えないか?手を取り合って行こうじゃないか」


「狩りの獲物の種類が違うかも知れない。俺が案内しよう」


 シェラドさんも名乗り出る。解体と換金までがきっとセットだ。


 村で余っていたマットレスや布団、枕、上掛けなどが会議堂に寄付される。


 色々とばらばらの厚みだったりしたが、なんとか人数分に足りた。


 私は隣村に井戸と風呂を作ってあげよう、と心に決める。


 此処に来るまでにも犠牲者も出た筈だ。それでも人間の国に行ければ生活が楽になると信じて遠い場所から必死でやってきたのだ。


 束の間の休息と、これまで受けられなかったある程度の保護を受けたって罰は当たらないだろう。


 眠る場所に案内した時も、「やわらかい…寝床が柔らかいぞ…」とまた涙ぐみながら一頻りはしゃぎ、すぐに気絶するように眠ってしまった。


 会議堂の冷蔵庫に飲み水を冷やしておき、それをみんなの枕元に書き記して置いておく。


 皆酷く痩せているが上背があり、筋肉が浮き出ている。


 元は結構いい体格をしていたのだろう。元の姿に戻ったら、守備隊に勧誘されるかも知れない。


 そうすると金銭に困ることもなくなるだろう。危険手当もついている守備隊の給与はかなり良い。家電は高いけれど、なんだかんだとこの村の人々が開発したものだ。上げてしまう気がする。


 次の日から、隣村の建築が始まった。


海の種族の領域で助かった人々は本当に過酷な生活を強いられてきたので幸せになって欲しいですね。

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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