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第十五話 孔と学園

孔はどうして出来るのでしょうね。

 さて、気になっているのは学園や自衛隊の人々を、獣人の村落南側の戦士として呼んだりしないかと言う事だ。人間を蔑視している癖に、問題ごとは押し付けそうな獣人平民に対する私の信用は非常に低い。碌な扱いを受けない事は解りきっている。


 獲物のお裾分けついで、学園と駐屯地に行き、事情を説明しておく。呼ばれても行かない方がいいと。


 ただ、自衛官の方々は民間人を守る事が仕事だと思っているだろうから、余り安心出来ない。懇願されれば行ってしまいそうだ。しかし、それは忠告を聞いた上での判断なのだから、尊重して然るべきだ。


「みんな、行かなきゃ良いんだけど…」


「その辺りは自己判断だ。ユーリが気にする事はない」


「うん…そうなんだけど」


 獣人達は一人で交渉になど来たりしない。人数を頼みに大勢で押しかけて、要求を飲ませようと騒ぐのだ。思い出すとため息が漏れる。


 学園は人数が多いので、騒ぐのならば駐屯地の方だろうな、と予想する。



 (ホール)はまだまだ落ち着きを見せない。ふとした拍子に現れる。(ホール)の事で解っている事は殆どない。天災のような扱いを受け、何処と繋がっている孔が開いているのかも知れない。


 古くからずっと続いているのかというとそうでもなく、500年ほど前に突如始まったという事だ。いつか(ホール)のボスが現れ、それを倒せば現象がなくなるだろうとは言われているが、何の根拠もない与太話だ。


 これは私が転生する前にも言われていたが、ついぞボスなどという存在が出たという話は聞いた事がなかった。海の種族や山の種族の方に出ていたなら話が流れてこないのかも知れないが、全てが推測だ。


 多分いつか決着が付くと信じたかった誰かから広まった希望の話である可能性が高いと踏んでいる。基本的に突如始まった、としか伝えられていないが、どこかで何かの召喚実験でもやって、大きな失敗をして其処から(ホール)が空いた、という説もある。


 要するにどの話も確かな証拠などない、ふわっとした妄想のようなものが語られるだけで、現実は淡々と(ホール)を定期的に開き、この世界に爪痕を残している。そんな状態だ。


「なんで(ホール)が開くんだろうね。そもそもあっちの化け物たちはこっちに来たいのかな。あっちには人は居ないのかな」


「わざわざ這い出してきて人を喰っているんだから、餌が少ない場所なのかも知れないな。人は…どうだろうな。あんな化け物が跋扈する場所で生きていられるとも思えないのだが」


 解らない上に調べようもない事をこれ以上、話していても仕方がない。私とシェラドさんは狩りに出る。


 特に人間の街で買うものもないのでゴンドも狩る。むかごを見つけて自然薯を掘り出し、調味料や出汁の調達が出来ないので、揚げて塩で食べることにする。


 この森は秋だけではなく、通年とおしてむかごを採取出来る。ありがたい。炭水化物の摂取はなかなかに骨が折れるのだ。


 私の背負える籠は小さい。シェラドさんと待ち合わせをしてそう遠く離れずに狩りをしなければ、獲物を引き摺ってくるのも難しい。


 急に襲い掛かってきた獲物を仕留めたら、今まで狩った事のない獲物だった。あちらで例えるなら豹に近い。綺麗な毛並みをしているのでこれは売れるのではないだろうか。気配を消すのも上手な獲物だった。貴重品かも知れない。


 そこへ、私の3倍は獲物を担いだシェラドさんが現れる。


「これくらいにしよう。自分達で食べるにはちょっと多すぎる量を狩ってしまった。学園に分けてやるか?」


「うん、ムダにしちゃ命に申し訳ないからね。ね、このえもの、高く売れるんじゃない?」


「ピアンサか!良く狩れたな。怪我は無いか?」


「うん、だいじょうぶ。出て来るときにガサって音がしたからね」


「そうか。毛皮をなめす必要はあるが、確かに高額で売れる品だ。俺も過去に1度だけ狩った事がある。滅多に出くわさないからな…気配遮断も上手だしな。肉もそこそこ美味いぞ」


 私の狩った獲物を血抜きで吊るしてくれながらシェラドさんは言う。


「じゃ、取りあえずウチで食べるのはどれにする?」


「うーん。リムザとビッヒ、後はピアンサかな」


 猪に似たリムザはシェラドさんの好物だ。鳥は言うまでもなく普通に美味しい。


「じゃあかなり持っていけるね。皆痩せるのは段々マシになってきてるけど、後一歩、ってところだね」


 半年あれば自分達の口を満たすところまでは行けそうだ。そうなってくれないと、心置きなく人間の村に移住出来ない。


 血抜きが終わるまで、果実の採取をする。私にはビタミンだって必要だ。肉だけで大丈夫だという獣人の肉体構造が偶に羨ましくなる。


「じゃあそろそろ帰ろう?」


「そうだな。じゃあ降ろして縄で括るか」


 その作業は手伝えないけど、ロープの上に獲物を降ろしやすいように置くことくらいはできる。


 毛並みを保護する為か、ピアンサは縄の当たらない内側に入れて、シェラドさんは獲物を1つに括った。そして私も抱えて走り出す。本当に何から何まで面倒を見てもらって、いつか恩返しが出来るようになりたい。シェラドさんは完全に私の保護者と化している。


 家に戻ると、自分達が食べる分だけを竈の近くに置いて、他の獲物を担ぎなおす。学園まで私も担いで貰った。定期的に皆の栄養状態を把握しておきたいのだ。


 学園につくと、学生達の反応がいつもと違う。


「ユーリちゃんが来たぞ!!アイツら連れて来い!!」


 ざわざわと学園門扉付近に集まってきた生徒達の中、モーゼのように1本の道が開く。縄で縛られた3人の生徒が連れて来られる。大木 、田代、鳥羽だ。他の生徒に小突かれて縛られたまま3人は正座する。


「…言う事あるだろ。ほら」


 周りからせっつかれ、3人は如何にも渋々仕様がなく、と言ったていで頭を下げる。


「……した」


「聞こえないわよもっと大きい声で!」


「…これまですいませんでした!これでいいだろ!!」


 私への害意、敵意剥き出しだ。良い訳がない。


「ダメだ…ごめんユーリちゃん。やっぱ閉じ込めとくわ…」


「いつもお世話になっているのに…申し訳ない…」


 引き摺られるように3人は連れて行かれて姿が見えなくなった。


 ふう、と溜息をつく。皆が感謝してくれているのだから、あの3人の事くらい別にいいんだけど。まあ、皆の前で半殺しにするのもどうかとは思うので、隠しておいてくれればそれでいい。


 シェラドさんは獲物を降ろして学生達に渡している。


「じぶん達でだいぶ狩れるようになった?どう?」


「うん、大分狩れるようになって来たし、狩り場も広がったよ!もうちょっとで充分な量狩れそうなの。痩せる子も減ってきたよ」


「怪我してない?」


「うん、保健室で事足りる程度だよ」


「良かった、ムリはしないでね」


「いつも獲物の差し入れありがとう!出来るだけナシでもどうにかなるように頑張ってるからね!」


 確かに、痩せ細った人が少し減っている。今日持ち込んだ獲物で、少しでも多くの口に入ればいいのだが。


「あ、そう言えばウチに来たよ、獣人の集団」


 私は吹き出しそうになる。


「ウチらの中から5人だけ獣人の村で暮らせって。馬鹿言うなって話だよね。なんでウチらが学園から5人だけハブって追放みたいな状態にしなきゃならないのよ。しかも態度も悪くてさー、来て当然、みたいな態度で、皆怒って追い出したわ」


「あー、じごうじとくだねえ。嫌がらせに変なわなとかしかけてくるかも知れないから、それだけ気をつけて!」


 ああ、頼るのではなく、自分で道を切り開こうと頑張っている。この子達なら大丈夫だ。でももう少しの間は獲物を分けてあげようかな。


「もうちょっとの間、おすそわけに来るけど、じぶん達で力を付けてほしいから、その後はもうきたいしないようにしてね。半年後にはおひっこしするんだ」


「引越し?こっちに来れなくなるの?」


「ううん。たまには顔見せに来るけどね。みんなと一緒にたすけて、人間の国に行ったひとたちがいるでしょう?せんしの数が足りないみたいなの。今みんなで村を作ってくらしてるみたいなんだけどね」


「そっか…寂しくなるけど、私達もそのうち余剰に獲物を狩れるようになって、人間の国で買い物しに行こうって皆で目標立ててるんだよ。そうしたら村にも顔を見せにいくね!」


「うん!でもまだ先の話だからね。えもの持ってまた来るよ!」


「解った、覚悟だけはしとくよ」


 こうして、学園から家に戻り、夕飯の支度をする。ラードを鍋に移して細めに刻んだ自然薯に衣を付けて揚げる。後は肉とパンと、素揚げしたムカゴだ。


「ほう。サクっとして肉の風味もあるし、これは美味いな」


 揚げた自然薯はシェラドさんに好評だった。私的には摩り下ろして出汁と醤油と卵の黄身を入れたものを白米に掛けて食べたいのでちょっと勿体無い事をしている気持ちが拭えない。


 ごはんが終わったらお風呂だ。私は嬉々としてシェラドさんのツヤのある髪を街で手に入れたシャンプーで泡泡にする。


 シェラドさんはそもそも洗剤を使っての入浴を始めたのは私が言い出してからなので、泡が出ても「今回のはそういうものなのか」程度にしか思っていないようだ。ちゃんとリンスもして濯げば、今までの物と比べほどにならない程スッキリするだろう。


 私も自分の髪を泡で包んでほっとする。ああ、シャンプーだ…!


 シェラドさんは、乾燥させた後の髪の軽さに驚きながらも嬉しそうで、私も嬉しい気持ちになりながら一緒に就寝した。

やっぱりシャンプーは泡が出ないと洗った感がないなーと思います。あくまで個人的な意見ですw

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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