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第十四話 街と人々

人間の国へ。あの時分かれた人達とも再会します

 朝、早朝から獲物を狩って回る。ゴンドは受けが良くないそうなので、高値がついたらしい鳥やリムザやクッケをメインに狩る。


 シェラドさんが担げる程度に狩ったら、血抜きの終わった獲物から、解体していく。目の細かい網の籠に入れ、布を上に掛けて固定する。


 私を抱えてシェラドさんは走り始める。狭い崖などは飛び越え、獣人にしか出来ない速度で人間の国へと向かう。


 着いた頃には、抱えられていたお尻がちょっと痛かった。最短距離の悪路を物ともせずに踏破したのだ。移動の心地はお世辞にでも良いとはいえなかった。


「ここだ。王都ではなく末端の街のようなのだが、ここで大丈夫そうか?」


「あ、うん、わざわざ王都まで行くひつようはないよ」


 まずは冒険者ギルド、と書かれている店へ行き、獲物の売却をする。やはり結構な値段になるようだ。肉を狩れる人員の腕が余り良くないようだ。


 お金を持って、先ずは調味料の店を覗く。


 ――ケチャップだ!!えっ…マヨネーズ?生卵どうやってるの?


「生卵、だいじょうぶなんですか?」


 店員に聞くと、少し驚いた顔をする。


「お嬢ちゃん詳しいのね。ちゃんと神官様に浄化して貰っているから大丈夫よ」


 シェラドさんは何種類もあるソースに釘付けだ。ウスターソースは貰ったものがまだある。こちらで補充出来る事が解ってほっとする。あと肉に使えるとなるとステーキソースくらいだろうか?あ、焼肉のたれとすき焼きソースってないかな焼肉のタレはあったがすき焼きソースは…流石に無かった。


 ラードが結構あるから、鉄鍋を買って揚げ物をすればとんかつソースは使えるかもしれない。でも卵がないとトンカツ作れないし、ここで卵なんて買って帰ったら家についたら確実に全部割れてるだろう…。唐揚げだけでも作ってみようか。


 ソースを買って金属の店に行き、揚げ物用の鍋を買う。シェラドさんは鍋の違いが大きさ以外は解らないようで首を傾げていた。


 そして布屋には、色々な布が売られていた。ホッとする。足りなくなれば此処で買えそうだ。お風呂用タオルとバスタオルがあったので2つづつ買う。


 そして、あちらから連れてきた人と再会した。農作物を売っている。きちんとやれているようだ。嬉しくなって声を掛ける。


「おひさしぶりです!どうですか、うまくやれていますか!?」


「ああ!ユーリちゃん、ありがとう。なんとか農地も種も分けてもらって順調にやっています。一部電力会社の方々が、今此処に電気を引こうと奮闘中なのですよ。上手く行けば一大改革、という事で褒章も貰えそうで上手く行く事を願っているのです。そちらはどうですか?」


「あは…しゅうらくから追い出されました。やはり私がいるのがよくないようです」


「なんと……私達の村へ来ますか?戦士の方に居て貰えると非常に心強いのですが」


「うーん……少し考えますね。学園のみんなのことも心配なんです」


「ああ…凄い人数の学生さんが居ましたね…。なるほど」


「おみやげに作物のたねを考えていたんです。そだてやすくて食べがいのある、いいたねはないですか?」


「じゃあ、これと…これとこれ、がお勧めでしょうか」


「あの人数の口に入りますか?」


「むむ。じゃあ量はこんなもので…」


 私は勧められるままに種をお土産に買った。相当割り引いてくれたようだ。


「そちらではおふろはどうしてますか?」


「風呂は…流石に個人宅に入れるには贅沢過ぎてまだまだですね」


「男ゆと女ゆで分けて作れば入りますか?」


「なんとも、それはありがたい状態ですね。人数が多くて当番制にはなるでしょうが」


「じゃあ村まであんないしてくれる?おおきいバスタブをつくるよ!」


「なんと…私は店を離れられないので、彼女に案内して貰ってください」


 店員をしていた彼女は、風呂、と聞いただけで既に頬を紅潮させている。石鹸やシャンプー、リンスは既に売られているそうだ。シャンプーはちゃんと泡立つし石鹸もシャンプーもリンスもいい匂いがするという。


 私も今作っているのが無くなったらここで買おうと思った。シェラドさんの頭をあわあわするのだ。…先に1セット買っておこうかな。


 村長を務めている方に、排水や、建屋の設置を考えた位置を指定され、そこに巨大バスタブを2つ、排水用の穴を開けてシェラドさんに置いて貰う。


 焼き石で使ってもらいたいと話すと、頷かれた。お礼にと、ちゃんとした農具一式をかなりの量分けてもらった。何故か石鹸シャンプーリンスの1セット付きで。


「ありがとう!学生の人もこれでかなり農業がやりやすくなるとおもいます!」


 その瞬間、(ホール)が開く。私とシェラドさんで村内の異形を瞬殺する。街へも駆けつけ、そこらに湧いた異形を制圧して回る。人間の戦士が10名ほど常駐していたようだが、獣人程の速度はなく、私の光刃程の殲滅力も速度も無い。あっと言う間に片付いた異形を見て、絶句している。いつもはもっと被害が出ていたのだろうか。


 そちらからも熱心に、こちらに住んで欲しいと熱望される。私は期間を設けた。


 半年経ってからなら、と。


 半年あれば生徒たちも自分で自分の事はかなりこなせるようになるだろう。食事も、狩りの腕が上がってこの種も届ければ相当改善されると思う。そうなったら手を放しても大丈夫かなと思えたのだ。


 シェラドさんを振り返ると、「いいぞ」と簡潔に答えが返る。


 ならば、と街の戦士と村長に、半年後に移住すると告げて、歓声で迎えてもらった。それまでは今の場所で暮らす心算だ。お礼にと米の種籾を貰い、私達は人間の国を後にする。


 家まで戻ると異形がうろついていたので全て瞬殺した。後に聞いた事だが、私達が居なくなった獣人村落では、南側に大きな被害が出たらしい。


 自業自得だとしか言えないのでコメントは避ける。獣人は私達を探しているかも知れないが、戻る気はないので、戦士の再編成で何とかして欲しい。


 種と農具を持って学園へと向かう。途中でふらふらしていた異形は倒していく。


 学園に辿り着くと生徒達が異形を駆逐したところだったようで、一旦落ち着いたところだった。


「あ、ユーリちゃん。どうしたの?」


 そこに大した疲労の痕はない。どうやら大分と戦闘に慣れてきたようだ。


「あのね、にんげんの国に行ってきたの。おみやげがあるよ!」


 種各種と稲の種籾、農具を贈ると、生徒達が目を見開いた。


「え…この農具、凄く質がいい…耕すの楽になりそう…それに種…こんなにいっぱい…」


「にんげんの国の方がいろいろはってんしてるの。あわだつシャンプーとかリンスもあったよ。ちょうみりょうもいろいろあったし、布も…」


 それを聞いた生徒たちは唇を噛む。それもそうだろう。戦士として役に立つからと獣人の国に止め置かれ、それでいて支援は殆どないに等しいのだ。いいところ布や藁くらいのものだろう。


 それでも、勝手に獣人の国から出る事は許されていない。自衛隊の方々は人間の国でガソリンを多くは無いが手に入れたようで、度々買出しに出ているようだ。


 私は地図を書く。おおまかにはなるが、シェラドさんの通った危険な道ではなく、安全な道で行き方を書いて渡す。少し生徒の顔が明るくなる。


「肉が足りてないみたいだから、えものをしとめてギルドに持っていけば、お金にかえられます。なるべく多く持って行くといいですよ」


「色々教えてくれてありがとう!今度皆で獲物を持って買い物に行ってみるわ!」


「ゴンドは大きいけど、やすいので、鳥やリムザやクッケがいいですよ」


「リムザ?クッケ?」


「いのししっぽいのとトカゲっぽいの」


「ああ、なるほど!色々と本当にありがとうユーリちゃん!」


 わいわいと土産と人間の国への地図を見て皆が騒いでいると、先生も出て来る。人間の国の話をしていると、急に襟首を掴まれて引き倒され、蹴りつけられた。


「鳥羽!!!」


 ダメージはあったが、私は光の棒を呼び出し、私を引き倒した犯人を殴り倒し、鳩尾に突き入れ、耳元を殴打する。これ以上はダメだ。殺してしまう。


 そこで矛を収めると、私は服の泥を払う。鳥羽、と呼ばれた男子に続く心算だったらしい、2人の男子生徒がその拳を止めて後退る。いつも害意を向けてきた雑魚だ。


「私が小さいからはんげきなんてしないと思った?なめるのもたいがいにしろ。次はころす」


 多分に殺気を含ませた睨みを3人へ向けるとへなへなと腰を抜かす。その程度の覚悟で勇者である私に歯向かうとは。


「ま、待ってユーリちゃん、ちゃんと反省させる!もうこんな事させないから、今日、今日だけは許してあげて!」


「わかってる。でも次はない」


 最後は後味の悪い結果に終わったが、家庭科の先生が泣きながら謝ってくれた。酢と食用植物油をお土産に持たせてくれて、服の泥を払い直してくれる。


「せんせい、いつもありがとう!ソースもすごくおいしかったよ!」


 にこり、と笑顔に戻すと、学園の皆に手を振りながら家に戻った。シェラドさんはあの程度の男子に私が負けるはずがないと信頼してくれていたのか、不愉快そうな顔はしていたが、手は出さなかった。


 シェラドさんまで手を出すと、あの鳥羽という生徒はかなり危ない状態になったに違いない。


「あのね、3人だけなの。ああいうのは。だから他の皆の事は好きだから、がくえんをわるく思わないで?」


 渋々頷くシェラドさんに微笑みかけて、今日は揚げた肉を酢に絡めて酢豚にしてみた。


 シェラドさんは、美味しそうに食べてくれた。野菜は残していたけど。


懲りない男子生徒が3名居ますね。でもユーリにとっては周りでブンブン飛び回る鬱陶しいハエのようなものです。

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