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第十二話キャベツとお風呂

色々と技術を持った人間は居たのですが、ほぼ人間の国に流れてしまっているので皆苦労しています。

 今日も光球を作る。


 全ての場所を遍く照らそうと思えば、100や200では足りない。1000個単位で必要な筈だ。獣人達の村落ではどうしてるか知らないが、学園や駐屯地ではそれなりの物陰がある筈なのだ。


 今は魔力MAXから150個作れる。これなら50個づつで文句が出ない筈なので、1日に150か300で配るようにしている。


 だからと言って、昼に唐突に開く(ホール)に注意を怠っては居ない。(ホール)を見つけたら即座に始末するようにしている。


 私達は獣人村落内の学園よりの南の方に住んでいる。南側の(ホール)はほぼ担当しており、(ホール)が空いた気配があれば、南の村落を駆け回らねばならない。


 街道には太い棒を埋めて先端に鉄網に入れた光球が入れられており、それが点在している。


 最初の方に配ったぎざぎざの光球は砕かれて欠片になったものが家庭に配られていた。なるほど。そのままの大きさじゃ明るすぎるからね。


 家に影が出来ない様なるべく満遍なく、粘着力のある樹液で家内に貼り付けているようだ。うちにもその欠片が配られたので、適宜位置を決めて樹液で貼り付けた。


 学園や自衛隊の方にもそのやり方を採用してはどうかと進言し、砕いても光る事に驚かれながらも礼を言われた。


 が、駐屯地は倉庫などが多く、大きい明かりがまだ必要なようだった。もう少し待ってもらうようお願いし、また赤飯を貰った。


 どうやら赤飯についてシェラドさんから聞かされたようだ。私は思わず涙ぐむ。自衛隊のお姉さんが良い子、と頭を撫でてくれた。


「いつも支援、感謝しています。些少ながら、我らに出来る礼などそのくらいなので、遠慮なく受け取って欲しい」


「さしょうなんて!食べたら、なくなっちゃうのに。ありがとう!」


「君は賢い良い子だな」


「もう、よるにひがいしゃが出ないよう、じんりょくします。誰もしんでほしくないの」


「そうだね、闇は私達の敵になってしまった。君の力を頼らせて欲しい。ありがとう」


 前回は、用意のいい隊員がまだ電源の残っている赤外線スコープを持ち出してどうにかしたらしい。でもその電源ももうやばいという事だ。夜陰用の装備には大抵電気が使われている。


 それが供給出来なくなっている今、後は戦闘訓練での反射神経でのみ対抗するしかないと悩んで居た所に光球の配布があって大変助かっているとの事。対人ならまだしも、未知の異形相手では分が悪かった所に光明が見えた事を凄く感謝してくれた。


 全員が敬礼で見送ってくれる。貰った携帯食量の赤飯を、大事に抱えながら駐屯地を後にした。



「解ってくれる人も居る」

「うん、そうだね…」



 砕いて欠片を室内灯などにするという発想から、私が光球を作る量は大幅に減ったと言える。それでもあと少し必要だ。


 300の光球を、2度に分けて精製し、シェラドさんに運んで貰う。そこで漸くストップしても大丈夫だと各所から通達があった。私はほっとする。後は、この光球が永久に持つのか、魔力切れか何かで切れてしまうのかが解らないのが懸念材料だ。


 そんな中、また夜に(ホール)が開いた。


 今度は獣人の民間人と学生に軽傷が出た程度で済んだ。私はほっとする。役に立てたようだ。


 村落南側に出た異形も随分討伐しやすくなっていて、シェラドさんにも褒められた。


 私は自分へのご褒美に赤飯を一つ食べた。


 後は食料問題だ。私達は、自分達が食べる以上の食料を手に入れる事が出来る。それを出来れば学園の生徒に届けたい。段々と生徒が痩せて来ているのが解るのだ。


 渡しに行く際には私は同行しない方がいいだろう。獣人の集落周辺では許可が下りなかったため、学園から少し離れた森林で狩ることにした。


 少し、と言っても獣人の脚での『少し』だ。結構離れて居るため、学生が狩りに来るとは思えない。


 私もシェラドさんも獲物の首を狙い、次々に木に吊るして血抜きをしていく。鳥は私もシェラドさんも積極的に狩る。どちらも遠距離攻撃を持っていると便利だ。美味しい肉だから学生が喜ぶだろう。


 自然薯とむかごも見つけたので、それも掘り出して持っていけるようにする。これは何度かに分けて運ばなければならないだろう。獲物の数が50を超えた辺りで、一旦様子見に学園に持ち込む事にした。


 血抜きの終わった獲物から、シェラドさんが纏めて紐で括って担ぎ、学園へ向かう。


 シェラドさんがとって返してくるまでにリムザという猪に似た獲物と遭遇したので、首を狩って置く。吊るすのは私には出来ない。


「よくやったな。こいつの肉もかなり美味いんだ。きっと学生も喜ぶだろう」


 リムザを血抜きしながらシェラドさんが言う。


 その後、シェラドさんが51匹の獲物を学園に運び入れるまでにローダ (大蛇。毒は無い)とクッケ (トカゲ)が現れたので狩って置く。


 帰って来たシェラドさんが言う。


「学生には、半分はお前の狩った獲物だと言って置いた。感謝出来ない様ならもう持ってこない、とも。…ローダとクッケか。俺たちの晩飯はこれでいいか」


 ローダもクッケも、割と美味しい。私は結構好きだ。少し淡白で食べやすい所がいい。シェラドさんには脂が足りないようで、帰り道に出たゴンドを1匹狩って嬉しそうだった。


 道の途中、キャベツに似た野菜?の群生地を発見し、一つ持って帰る。自衛隊に持って行って可食か調べて貰おう。ただの葉牡丹っぽいナニカだとガッカリなのだけど。


 自然薯と小麦、卵、キャベツに肉が揃ったらお好み焼き…塩しかなくてもそれが出来ればきっと喜ぶ人も多いだろう。


 キャベツっぽいものは明日駐屯地へ持ち込む事にして、今日は獲物を調理して食べ、水と布で身体を拭って眠った。風呂が恋しい…。ガスも水道も偉大だった…勿論、電気も。


 そう言えば、獣人の村落には3つの井戸があるが、駐屯地や学園では井戸をどうしているのだろう。ないのだろうか。なら、わざわざ川まで出て水を汲んで煮沸して飲んでいる事になる。不便極まりないだろう。まあ、足りない事など山積みだ。石鹸もシャンプーもリンスもない。


 獣人達は川での水浴びで概ね満足してしまっているからだ。


 次の日は、キャベツに似た野菜?を持って駐屯地へ出かける。可食かどうか見て貰っている間は、施設の案内などをしてくれた。結果を聞くと、ほぼキャベツと同じで、毒性はなし、可食だとの事。


 学園の人数を考えると2:8くらいになってしまうけれど、持ってくると言うと歓声が上がった。此処に来て、初めての野菜らしい野菜だ。無理もない。


 大きな籠を背負ったシェラドさんが、往復してキャベツを持ってきてくれるという。私は居ても邪魔になるだけなので、試したい事をする事にした。


 光魔法の魔力を地面の下に通し、井戸が掘れないか駐屯地周りをゆっくり探索しながら歩く。程近い場所に反応がある。10m程下に水脈があるのが解った。地面に×印を枝で書いて、自衛官のお姉さんに言う。


「この下、10mほどのところにすいみゃくがあるけど、井戸はひつようですか?」


「君はなんて凄いんだ…!勿論欲しいとも!だが掘削機などは電力が…手で掘るか…」


「待って。ためしてみる…」


 光を呼び出し、螺旋状のドリルのようなカタチにする。×印の場所へ強く押し付けるとぎゅる、と回転させて掘っていく。すぐに1m近い穴が開いたが、身長の関係でそれ以上踏み込めない。


 うーん、と唸っていると他の自衛官達が、ハーネスと固定器具を持ってわいわいとやってくる。お姉さんが伝えてくれたようだ。


 ハーネスで確りと固定され、徐々に穴の奥へと掘り進む。成人男性が立って5人くっつけば入れる、というレベルの広さで掘っている。


 10mに達した時、ぶわっと水が湧き出て井戸を満たしていく。私を降ろしていた自衛官の方々が慌てて私を引き上げてくれる。


「ほそうとかは出来ないの。お姉さんとお兄さん達でがんばってくれる?」


「勿論だとも。君にそこまで世話になる訳にはいかない。本当にありがとう!」


 丁度そこへ大きな籠を背負ったシェラドさんが戻ってきた。2割とはいえ相当な量だ。


 それを見た隊員から歓声が上がる。新鮮な生野菜に皆嬉しそうだ。籠ごとキャベツを降ろして、力の強そうな隊員へキャベツを渡す。


「すまない、私達は世話になるばかりで返せるものが余りない…残りの赤飯全部なのだが、受け取っては貰えないだろうか。パックを開けなければ年単位で保管できる」


「そんな…こんなきちょうな物を…いいのですか…?」


「キャベツに井戸。こちらこそ貰いすぎているのだ、気にしないでくれお嬢ちゃん」


 じわ、と涙がにじむ。この好意が凄くありがたい。嬉しい。


「ありがとう!大事に食べる!ほんとうにありがとう!!」


 手を振って家に戻る。自衛隊の方々はまた全員敬礼で見送ってくれた。


 次に学園へキャベツを運ぶ。こちらでもキャベツは嬉しかった様で歓声が上がった。


「沢山あるので何度か往復する。少し掛かるが待って居てくれ」


 そう声を掛けて今担いでいたキャベツを家庭科室に置くと、シェラドさんは疾風のように掛けていく。


 先生達は、床にも置けるよう、慌ててブルーシートを敷きに行く。


「お姉ちゃんたちは、井戸があったらほしい?」


「勿論よ!川まで遠いのよ…近くにあれば言う事無いわ―……」


 話しかけた女生徒がふう、と肩を落とす。どうやら水汲み当番をクラス単位で回しているようだ。


「あのね、あるかどうかわからないけど、井戸、できないかどうかさがして見るね」


「そんな事出来るの!?是非お願い!!!井戸よ出来ろ!!うわぁああああ!」


 凄くテンションの高いお姉さんに見守られながら、魔力を集中して地中を探る。途中、何者かが害意を持って近づくのが解ったが、他の生徒数人に押し戻され、渋々撤退していく。


 水脈の匂いがする。けれど深すぎる。30mはあるだろう。もう少し表層に出てくれている場所はないか。水脈を辿って移動する。学園の門を出た辺りで水脈がかなり上がった。5mも掘れば井戸が出来るだろう。


 その場所に×印を書いて振り向く。


「ここなら井戸できるよ。でも準備が必要なの」


 私は縄をお願いして自分の体にぐるぐる巻きつけて固定する。縄の片方は生徒3人にお願いし、作業を確認しながらゆっくり降ろしたり、水が出た時に直ぐに引き上げて貰うようお願いした。


「井戸…井戸が此処に出来たら滅茶苦茶便利になるよな!うわあ…嬉しい」


 後ろから嬉しそうな声が聞こえる。念の為釘を刺しておく。


「ユーリに出来るのは穴をほって水を出すところまでなの。ひょうめんのほそうなんかは、先生たちにたのんでね?」


 言ってから、螺旋状の光を呼び出す。駐屯地より2倍くらいの幅を持って削る。多人数で一気に汲む事が予想されるからだ。なんならもう一個井戸を作ってもいいくらいだろう。


 1m掘った時点で縄がピンと張る。掘り進めると少しづつ縄が降ろされていく。5mに達した時点で水が噴出した。慌てて縄が引き上げられる。


「あとはせんせいに頼んでね。井戸いっこで足りる?」


「あー…皆が一気に汲みに来るって考えるとあと1個は欲しいかなあ」


「じゃあもういっこほるね」


 お互いが邪魔にならずに井戸から汲めるよう、少し離れた場所で水脈の×印を書く。もう一度同じように作業を手伝って貰い、2つ目の井戸が掘れた。生徒たちの歓声が上がる。


 先生達も集まってきて、滑車式の水汲み桶をいくつ設置出来るか話し合っている。


 そっと家庭科の先生が近づいてきた。


「いつも本当に…今回も本当にありがとう、貴方には助けられてばかりだわ。こんなものくらいしか用意出来ないのだけど、石鹸と、シャンプーなの。原始的な作り方をしているからシャンプーは泡立ったりはしないけれど、汚れは落ちるわ。こんなものでも精一杯だったのよ。貰ってくれないかしら」


 原始的、という事は植物油にスクラブを加えたものだろう。


「今、お酢を作っているの。上手くいけば石鹸と酢リンスの方がスッキリするかも知れないわね。その時には貰ってね」


 まだ数も少ないだろうに私に分けてくれる。その気持ちだけで嬉しくて仕方なかった。


「ありがとう!今まで水でふくくらいしかできなかったからうれしい!」


 洗剤が手に入った。螺旋光も使いこなせるようになった。ならば風呂を作るしかない。


 シェラドさんは、量が多すぎてまだまだ掛かりそうだったので、暫し其処で先生方と歓談した。


 結果、どうしても嫉妬が酷い生徒が3人程居るらしく、今後私が来た時には校舎から出さないと言ってくれる。


 かなりの時間を掛け、漸く最後のキャベツをシェラドさんが持ってきてくれる。腰に2玉ぶら下がっているのは多分私の分なのだろう。


「また群生していれば持ってきてやろう」


 シェラドさんがそう言うと、皆の目が期待に輝く。


 手を振って、学園を後にする。私を担いで走るシェラドさんの足は本当に速い。とはいえ、もう夕方だ。走りっぱなしのシェラドさんの体力には驚くばかりだ。



 手早く食事を済ませた後、私はおねだりして少し小さめの部屋を増設して貰う。


 今日の所は簡易的な作りになったが、明日ちゃんとした部屋にしてくれるという。水浸しになると話すと、排水出来る様、部屋の外までいくつも溝を掘ってくれた。そして鉄製の入れ物に薪を用意して貰う。大きめの石もいくつか拾って綺麗にしておく。


 大きい岩を外で見繕って螺旋の光で削り、バスタブ程のカタチに形成し、シェラドさんに部屋の中央まで運んで貰った。


 其処に水を汲み入れ、焼いた石を投下する。丁度いい温度になったところで止めて貰い、一緒に風呂に入ろうと提案した。


 床でバスタブから湯を汲んで、布を塗らして石鹸をつける。今まで石鹸で洗われた事のないシェラドさんの身体から泡が立つには何度もお湯で濯ぎ直さないと無理だった。


 漸く泡が立って少しほっとする。白い泡に包まれていく自分の体を、シェラドさんは驚いたように見守っている。股間だけは自分で洗ってもらった。


 シェラドさんの頭も湯で濡らして貰ったシャンプーで洗う。頭皮から油脂が剥がれて行くのが解る。こっちも心配だったので3度洗った。顔も石鹸で5回洗って漸く泡立った。


 全身流して、湯船に入って居て貰う。


 私も長いこと水で拭いていただけだったので全部2回づつ洗う。2回目にはちゃんと泡立ってほっとする。湯船に入ると、骨の芯まで沁みるような心地良さが襲う。


「このフロ、というのはいいな。気持ちがいい」


「できればまいにち入りたいの」


「そうか。お前がワガママを言うのは初めてだからな。構わない」


「シェラドさんもちゃんと綺麗にするの」


「……俺もか?」


「うん」


「……わかった、付き合う」


 バスタブの水を捨て、自分の体を布で拭く。シェラドさんの肌は浅黒いと思っていたのだが、実は然程ではない事が判明した。汚れで黒くなっていたようだ。自分の肌を見てシェラドさんが吃驚している。


「俺の肌は本当はこんな色だったのか」


「うん、今まできたなかっただけだったみたいだね」


「……フロには入るようにする」


 綺麗になった身体で布団に入ると余程気持ちよかったのか、ふう、と満足気な溜息が漏れている。


 それが少しおかしくて、小さく笑いながら私も布団へと潜り込んだ。


シェラドさんはイケオジの心算で書いてたのですが、風呂に入ってなかったので実は汚かったという…。

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