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『ARGUS ――匿名を裁く神』  作者: ソウヤ・カエル
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第4話 揺らぐ絆

薄曇りの朝日が大学キャンパスの校舎に柔らかく差し込む中、蒼真はいつものように重い足取りで講義室へと歩を進めていた。

彼の心はどこか遠く、今この瞬間も頭の片隅で闇バイトの黒幕と呼ばれる存在の影が揺れている。


「NOAH……あいつの本当の顔を、俺はまだ知らない」


その思いが胸を締め付ける。高校時代、かつて固い友情で結ばれた二人。だが、今は互いに疑念を抱きながら探り合う関係に変わってしまった。


キャンパスの隅、木陰のベンチに座る椎名雫は、蒼真の背中を静かに見つめていた。

彼女の瞳は優しくも心配に満ちている。


「蒼真先輩、そんなに背負い込まないで。私たち、みんなで支えます」


蒼真は振り返り、少しだけ笑みを浮かべた。


「ありがとう、雫。でもこれは俺の戦いだ。逃げられない」


一方、警察本部の一室ではNOAHがパソコンの前で沈思黙考していた。

彼の机の上には蒼真との昔の写真や、闇バイト関連の資料が散らばる。


「蒼真は……もう止められないのかもしれない」


電話の向こうから同僚の声が聞こえる。


「動きは要注意だ。捜査を強化しろ」


NOAHは決意の眼差しでパソコン画面を見つめた。


その日の夕暮れ。


蒼真は大学の図書館で古い新聞記事を読み漁っていた。

彼の手には、過去の闇バイト事件を詳述したスクラップブックがあった。


「過去の事件、あの時の惨劇……全部繋がっている」


目の前にある断片を必死に組み合わせる。

その横顔は険しく、闇に立ち向かう覚悟が滲んでいた。


校舎の裏庭で椎名雫と再び話す蒼真。


「先輩、時には誰かを信じてください」


雫の声は静かだが、強い説得力を持っていた。


「……俺には、信じられる相手がいない」


その言葉に雫は涙をこらえた。


その夜。


闇バイトのチャットルームは緊迫した空気に包まれていた。

参加者の目は光り、冷たい殺気が満ちる。


「ARGUS、もう逃げ場はない」


蒼真は冷静に打ち返す。


「お前たちが闇に沈む。俺は光になる」


翌朝、大学の廊下。


蒼真とNOAHは偶然すれ違う。

お互いに言葉は交わさず、ただ鋭い視線を交わす。


そこには、かつての友情の影と今の対立が混じり合っていた。


蒼真の携帯に新たなメッセージが届く。


《真実は揺らぐ。でも、闇は深まるばかり》


彼は画面を見つめ、固く拳を握った。


「揺らぐ絆……俺は負けない」


その日から、二人の運命は再び交錯し始める。

過去の秘密、そしてこれから待ち受ける試練に備えながら。

蒼真の部屋には、夜の静けさが重く降りていた。

彼はパソコンの画面の前に座り込み、手元の資料とチャットログを睨みつけていた。


「ここまで来た……闇バイトの本当の姿は、一体どこにあるのか」


数ヶ月前に消えた親友・悠真の顔が脳裏に浮かぶ。

あの夏の日、蒼真が気づけなかった小さな異変。

彼の笑顔の裏に隠された深い闇。


蒼真はふと顔を上げ、窓の外を見つめた。

夜空に輝く星々が、まるで自分の胸の奥底の葛藤を映すかのように瞬いている。


「もしあの時、もっと気づいてやれていたら……」


その思いに、胸が締めつけられた。


回想――高校時代の蒼真と悠真は、誰よりも親しい親友同士だった。

しかし、悠真は突然、蒼真に一言だけ残して姿を消した。


「蒼真、俺のことは何も言わないでくれ……お願いだ」


その言葉は呪いのように蒼真の心に残り、真実を追い求める原動力となった。


現実に戻り、蒼真は深いため息をつく。

彼の戦いは、単なる復讐や正義の追求ではなく、

消えた親友への約束でもあったのだ。


翌朝、大学のカフェで蒼真は椎名雫と向き合っていた。

雫の瞳は真剣で、どこか儚さを帯びている。


「先輩が抱えるものが大きいと、改めて感じました」


蒼真はその言葉に軽くうなずき、やや疲れた笑みを浮かべた。


「ありがとう、雫。お前たちがいなければ、とっくに潰れていたかもしれない」


彼女は黙って頷き、二人の間に静かな絆が生まれた。


その日の夕方、蒼真のスマホに知らない番号から着信が入った。

画面には「匿名」とだけ表示されている。


蒼真は迷いなく応答した。


「ARGUS、君の居場所はすでに割れている」


低く冷たい声が告げる。


「どんな手を使っても、君を止める」


蒼真は静かに答えた。


「ならば、俺はそれでも進み続ける」


通話が切れた後、彼は深呼吸をし、闇の世界への覚悟を新たにした。


警察本部。


NOAHはデスクに座り込み、捜査資料を精査していた。

彼の瞳は冷たく鋭く、どこか遠くを見つめているようだった。


「蒼真……あいつを止めるためには、全てを明かすしかない」


彼はそう呟き、秘めたる覚悟を胸に秘めていた。


その夜、蒼真は闇バイトのチャットルームへと再び潜入した。

参加者たちの発言は殺気立ち、互いを牽制しあう。


「ARGUS、最後通告だ」


挑発的な言葉に、蒼真は冷静に反論した。


「俺がこの戦いを終わらせる。お前たちは闇に沈め」


その瞬間、画面に新たなメッセージが浮かんだ。


「NOAHも真実を知っている。彼の秘密も暴かれるだろう」


蒼真は言葉の重みを感じ、胸の奥がざわついた。


その翌日、蒼真は大学の廊下でNOAHとすれ違った。

二人の視線が交差する。


一瞬、昔の友情が顔を覗かせたが、すぐに冷え切った疑念が戻った。


互いに言葉はなかった。


蒼真はスマホの画面を見つめながら、静かに拳を握りしめた。


《真実は揺らぐ。でも、闇は深まるばかり》


彼は自分に言い聞かせるように呟いた。


「揺らぐ絆……だが、俺は負けない」


闇の中で揺れ動く二人の絆。

やがて明らかになる、過去の秘密と未来への決断。


物語は深淵へと向かい、激しい運命の波が押し寄せる。


続く、第5話では二人の過去の絆と、親友を奪った真実がついに動き出す。

第4話をお読みいただき、誠にありがとうございます。


今回は蒼真の心の葛藤や、闇バイトの闇の深さを描くことに力を入れました。

彼の過去に隠された秘密が徐々に明らかになり、物語はより複雑で切実なものへと深化しています。


また、NOAHとの微妙な関係も、物語の緊張感を高める大きなポイントです。

互いに探り合い、時に心を揺らしながらも、それぞれの信念のために戦う二人の姿を楽しんでいただけたら幸いです。


この作品は、皆さまの応援があってこそ成り立っています。

もし物語やキャラクターに共感いただけましたら、ぜひ【ブックマーク】や感想コメントで応援していただけると励みになります。


今後も謎と人間ドラマを織り交ぜた緊迫のストーリーをお届けしますので、どうぞ最後までお付き合いください。


次回、第5話もお楽しみに。

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