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婚約者様は大変お素敵でございます  作者: ましろ


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39.『いつか』の未来

この一年は、長かったのか短かったのか。


事業は順調に進み、公爵家の仕事を覚えつつ、式の準備もあり。大変ながらも一つずつ熟(こな)すたびに、自分がキングスコート家の一員になれてきてる気がした。


そして今日。やっとイーディス様が望んでくださった『いつか』の日を迎えることができた。



お父様に手を引かれ、ゆっくりと歩む。大好きなハミルトン家を出たとき、私は十七歳だった。それなのに、結婚まで随分と遠回りしてしまったわね。お父様達に申し訳なくもあり、でも、それも大切な経験だったと思っている。


ああ、ブライアンが笑っている。ずっと私を待っていてくれた優しい人。ようやくあなたの隣に立つことができるのね。


「娘をよろしく頼むよ」

「はい、もちろんです」


お父様からブライアンに私の手は移り、安心させるかのように少しだけきゅっと握られた。


大丈夫。私はキングスコートの人間になるけれど、お父様達だってずっと私の家族だもの。

こうやって大切なものが増えていくのだわ。


神父様の言葉を聞きながら、誓いを立てる。

神様よりも誰よりもあなたに。もし、何か困難に出会っても私はもう絶対に逃げることはないだろう。

喜びも悲しみも、その全てを二人で乗り越えていきたいと、心から願った。


参列者を見ると、お義父様とカルヴァンが涙目になっている。お義母様、やっぱりお義母様の思った通り嬉し泣きしてくれていますわ。


嬉しかったのは孤児院の子達がお祝いに来てくれたことだ。貴族の参列者の多さに圧倒されただろうに、それでも皆で祝福の歌を歌ってくれた。とっても可愛らしくて思わず涙が出てしまった。


披露宴では、職業訓練校の生徒達が給仕の手伝いをしてくれた。ただし失敗があるといけないので親族席のみだけれど、いいアピールの場になったとニヤ付いてしまった。ブライアンに脇腹を小突かれた。


本当に幸せな一日だった。




◇◇◇




「「今日はお疲れ様」」


二人で乾杯をする。ようやく二人きりになれた。


「なんだか凄かったわね」

「何が?」

「あんなに沢山の人に祝ってもらえるって」

「ああ、そうだね」

「絶対に幸せになろうって思ったわ」

「うん」


なぜかしら。幸福感で飽和状態なのかな?

なんだかふわふわした気分だわ。


「ブライアン」

「ん?」

「だいすき」

「もう酔ってる?」

「うん。幸せに酔ってるかも」

「そうか。幸せだと思ってくれてよかった。私こそ好きだよ。幸せ過ぎて泣くかと思った」


ブライアンが私の手を握った。いつもより少し体温が高い。


「怖い?」

「……少しだけ」

「うん、我慢しないで言ってくれ」

「大丈夫。あなたの側ほど安心できる場所はないのよ。ここが、私の一番の特等席なの」

「ありがとう、シェリー。大切にするから」


それから。ブライアンは本当に優しく、大切そうに私に触れた。私を怖がらせないように何度も愛の言葉と大丈夫かと声をかけてくれた。

自分だって苦しそうなのに、汗を滴らせ、必死に我慢する姿に胸が熱くなった。


「大丈夫、いいの、我慢しないで?」

「駄目……、本当に、君が大切なんだっ」


そうやって、優しさと愛で私はとろとろに溶かされていった。


好きだよ、ああ……やっとだ。


『やっと』


その呟きに目を開く。


そうね。やっとここまで来た。やっと本当に夫婦になれた。やっと、やっと、やっと……。


「ブライアン、うれしい……すき、すきよ」


思わず感極まって両手でギュッと抱きついた。


「……煽らないで……暴走しそうだから」


してもいいのに。そう呟くと、首元に軽く歯を当てられた。緩く噛まれて驚く。


「嬉しいけど、駄目だから」


さすがは自制の男ブライアン。

この夜、私は甘く甘く溶かされていった。






が。ちょっと調子に乗り過ぎたようだ。


ひと月後。私の煽り過ぎにとうとうプツンときたブライアンに思いっきり本気で抱かれた。もちろん乱暴にはされていない。甘々なのもいつもと同じ。でも……。

煽るのは絶対に控えようと心に誓った。


そうしてその時に、しっかりと子どもを授かってしまったようで、嬉しいけれど少し恥ずかしかった。




◇◇◇




「そろそろ行きましょうか」

「おばあちゃまにあいにいくのですか?」

「そうよ。ようやくクリスをお外に連れていけるから、お祖母様にご挨拶しなきゃ」

「クリスとおでかけ? うれしいです!」


長男のアーサーはブライアンにそっくりの男の子だ。顔よりも中身が似過ぎている。

そんなアーサーは、ただいま弟のクリスを溺愛中だ。きっとクリスもカルヴァンの様にお兄ちゃん子になるのだろうと思うと楽しみで仕方がない。


「あら? お父様は?」

「さっきおじいさまとおはなししてました」

「そう? 王都のお話かしら」


私達が出産のために領地に戻って来てずいぶん経つ。ブライアンは何度か王都と行き来しているけれど、そろそろカルヴァンだけでは大変になって来たのだろう。


「おうと? もどるのですか?」

「そうねぇ。別邸に向かうかもしれないわね」

「べってい、だいすきです」

「お母様もよ」


私とブライアンの関係は別邸からようやく進んだのよね。ある意味学園の次の始まりの場所だ。


「お祖母様も別邸が大好きだったのよ」

「おなじです! くりすもきっとすきになります!」

「そうね」


うちの子はやっぱり可愛い。何時間でも見ていられるわ。


「お父様達を迎えに行きましょうか」

「はーい! くりすもいこうね」


お義母様、見てください。アーサーは今日もいい子です。クリスも嬉しいのかしら。元気に手足を動かしていますよ。


「シェリー、待たせたな」

「いいえ」

「そろそろ戻ってきてほしいとカルヴァンから手紙が来ていてね」

「やっぱり。たぶんそうだと思って、アーサーとお話していたんです。アーサーは喜んでいたわ」

「よかった。まあ、これは後で話そう。そろそろ行こうか」

「そうね」


ブライアンは今も変わらず、優しく穏やかで、素敵な夫であり、息子が尊敬する父でもあります。

お義父様も二人をとても可愛がってくれています。優しくて、ときどき厳しい素敵なお祖父様ですわ。

しばらくしたら別邸に向かえそうです。

そうしたらまた、内緒話をいたしましょう。


「シェリー、手を」

「ありがとう。本当にいいお天気ね。王都に戻る前にピクニックに行きましょうか」

「ああ、いいね」

「ぴくにっく! くりすも?」

「もちろんよ。お祖父様もお誘いしましょうね」

「はーい!」


そしてこれからも幸せな日々。






【end】





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― 新着の感想 ―
いい結婚式でしたね。 2人の過去を幸せのリボンで結んで、未来への希望も一緒に、来てくれた人たちに見せることができて本当にいいお式でした。 ラスト、描かれていないけれど晴れた空の下でイーディス様に会い…
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