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居眠り卿と木漏れ日の姫  作者: 中里勇史
新たな任務

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任務 その1

 帝国歴222年7月下旬、ウィンに新たな命令が下った。帝国内陸部にあるスソンリエト伯領の監査である。

 公然の秘密だが、帝国は諸侯領の多くに密偵を放っている。スソンリエト伯の館にも、使用人として帝国の息が掛かった密偵が入り込んでいる。その密偵からの報告によると、スソンリエト伯がどこかと密使を頻繁にやりとりしているという。

 文書としては何も残しておらず、人払いも徹底しているため内容は全く不明。問題は、そこまで秘密保持を徹底していることだった。よからぬことを企てていると勘繰られても文句は言えない。

 そこで、監察使を派遣することになった。尻尾をつかめればそれもよし。証拠を押さえられなかったとしても、「帝国が疑いを持っている」と知らしめるだけでも牽制になる。目的は罰することではなく、不穏な動きを未然に抑えることだ。帝国の意思をちらつかせることで不逞な企てを断念させることができれば成功なのである。

 戦闘は意図していないとはいえ、多少の威圧感は必要だ。ウィン1人でのこのこ出かける、というわけにはいかない。護衛という建前で傭兵を連れて行くことにする。


 帝都には、傭兵隊長ベルウェン・ストルムに渡りを付けられる場所が複数ある。平民街の一画にある、ごくありふれた酒場もその一つだ。

 酒場の店主に、ベルウェン配下の人間に連絡を取りたいと伝える。ベルウェン本人はナルファスト公国でダウファディア要塞包囲軍に参加しているが、傭兵の手配を代行できる人間を帝都にも残しているはずだった。

 しばらく待っていると、ベルウェンの右腕であるラゲルス・ユーストがやって来た。

 「旦那、久しぶりですな」

 「ラゲルスじゃないか。帝都に戻っていたのかい?」

 ラゲルスもベルウェンと共にダウファディア要塞攻めに参加していたはずだ。

 「あっちはそろそろ片付きそうでね。所用もあるんで一足先に帰ってきたんですわ。で、旦那は傭兵が入り用だそうで?」

 「監察使として出ることになった。30人ほど手配してほしい」

 「いつまでに?」

 「8月早々には帝都を出たい」

 「では8月1日に南門の外でお待ちしてます。また日の出の頃、ってことでいいですかい?」

 「うん、よろしく」

 ラゲルスが居たので、傭兵の手配は思ったよりも早く片付いた。他に必要な物は……文官は、不要か。後は自分用の馬だ。

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