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居眠り卿と木漏れ日の姫  作者: 中里勇史
カーリルン公領統一戦争

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激怒

 アルリフィーアは半ばぼうぜんとしたまま近くの街に宿泊すると、涙と鼻水と汗と血でグチャグチャの顔を洗って整えた。

 何が何だか分からないうちに、何やら解決してしまった。

 村長は、反乱を起こした他の村の説得は任せてほしいと請け負った。逃散した村人の行方も知っているから、必ず連れ戻すという。アルリフィーアは、「よろしく頼む」と答えた。

 北東部の問題は解決しそうだった。


 号泣したので頭が痛い。頭全体ががんがんする。頭は派手に出血するので大怪我に見えるが、傷は大したことない。皮膚がちょっと切れた程度だ。髪が密集しているところだから傷は目立たない。

 大声を出したので喉もいたい。涙は洗い流したが、泣き過ぎたせいで目の周りが腫れている。古代人が作ったという、目玉が飛び出した土人形みたいだ。

 宿が出してくれた茶を飲んだら、少し落ち着いた。思考能力が徐々に戻ってきた。

 思考能力が戻ってくるにつれ、だんだん腹が立ってきた。腹立たしいなどという次元ではない。ウィンがここにいたら、3回くらい殴り殺さねば気が済まない。だがウィンはどこかに逃げてしまったので、代わりに枕を10回ほど絞め殺した。それでも気が済まない。枕を壁にたたきつけて、「ウィンのたわけ!」と叫んだ。

 「何じゃあの茶番は。ふざけおって。ワシは真剣じゃというのに、『ずらかりますよ』じゃと? あのたわけが。絶対許さん。今度こそ許さん。思い出すだけではらわたが煮えくり返る」

 「覚えてやがれ」というのがまた腹立たしい。思い出すだけでこめかみに青筋が浮かぶ。


 深呼吸したら少し落ち着いた。

 先ほどまで自分が虐待の限りを尽くした枕を拾い上げると、ポフポフと整えて元の場所に戻した。寝台にどさっと倒れ込んで天井を見上げた。

 「でも、ワシに村人を説得できたじゃろうか……」

 石を投げられ、怒号に囲まれ、正直怖かった。殺されるのではないかと思った。足がすくんで、立っているのがやっとだった。気丈に振る舞っていたが、本当は怖くて逃げ出したかった。

 ウィンたちが来てくれなかったらどうなっていたか。

 アルリフィーアが踏みとどまって説得を続けていたら、もしかしたら治まったかもしれない。だが、恐怖に負けて逃げていたらどうなっていたか。興奮した村人たちは追ってきただろう。そして捕まって……取り返しが付かない事態になっていたかもしれない。

 これも覚悟の問題なのだ。自分には、踏みとどまるほどの覚悟ができていたとは言えない。

 ウィンには感謝せ……いや、やはりムカつく。特にあのふざけた逃げ方が許せない。

 「あんなやつ、嫌いじゃ……」

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