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居眠り卿と木漏れ日の姫  作者: 中里勇史
カーリルン公領統一戦争

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宮内伯襲来 その1

 宮内伯のカルロンジがカーリルン公領を訪れたのは9月20日のことだった。宮内伯が諸侯領に下向するのは異例のことである。

 アルリフィーアが緊張した面持ちで謁見の間に入ると、ヴァル・カルロンジ・サルナーガはわざとらしく最敬礼した。

 「麗しきカーリルン公、ご機嫌よろしゅう」

 公爵の椅子に座ったアルリフィーアは、「遠路はるばるご苦労である。顔を上げられよ」と答えつつ相手を観察した。頭には1本たりとも髪の毛がない。つるつるだ。体はぶくぶくと締まりなく太っており、丸い。坂道で蹴り飛ばしたらどこまでも転がっていきそうだ。贅肉で突き出た腹をものともせずに礼をする器用さに、少し感心した。

 顔を上げたカルロンジは、好色そうな目でアルリフィーアを舐めるように見つめてニチャリと笑った。アルリフィーアは、この男を嫌いになることに決定した。

 「して、こたびは何用か」

 「カーリルン公領はいささか混乱されていると伺いました」

 いきなり痛い所を衝かれて、アルリフィーアは顔をしかめた。もう帝国に知れてしまったのか。アルリフィーアの斜め後ろに控えているベルロントも、心の中で舌打ちした。

 「領民の反乱が起こっているとか。宮廷内でも嘲笑の……失礼、噂になっております」

 「帝国には迷惑を掛けぬゆえ、安心されよ」

 「しかしどうでしょう。やはりうら若き女性に公爵の荷は重過ぎるのではないか。このような重荷を背負わせるのは酷ではないのか。そう申す者も多くおります。わたくしもカーリルン公の心境を思うと胸が痛みます」

 「ご心配いただいたこと、痛みいる。しかしてよき家臣の支えもあるゆえ、責務を全うする所存じゃ。心安んじて帝都にお戻りあれ」

 「領主との対立も深まっているとか。帝国としても皇帝陛下としても、帝都からほど近い諸侯領がこうも不安定ではいささか……。その点をいかがお考えか」

 「公爵はあらゆる手段をもって領内の安定に尽力されている。ご心配には及ばぬとの公爵のお言葉をお聞きいただけませなんだか?」

 さすがに看過できず、ベルロントが割って入った。

 「ふむ、どうもご理解いただけぬようだ。では単刀直入に申しましょう。領主との対立やこたびの領民反乱によって、帝国はカーリルン公の統治能力に疑問を抱いておる。早急に対処できない場合は公位の返上を勧告せざるを得ぬ、ということです」

 アルリフィーアとベルロントは言葉を失った。事態がここまで悪化していたとは。

 「今対処しておると申したはずじゃが」

 「遅過ぎるのではありますまいか? 何をされている? どうされるおつもりか?」

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