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居眠り卿と木漏れ日の姫  作者: 中里勇史
カーリルン公領統一戦争

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47/55

危機

 ウィンの前に引き出されたデベルロントとトンゾロントはぼうぜんとしていた。いつの間にか帝国の敵になる寸前だったのだ。


「デベルロント、あの傭兵軍をどうやって集めた。そんなカネがどこから湧いた?」

「……」

「ふむ。じゃあラゲルス、拷問の準備を」

「ご、拷問!?」

「何だ、しゃべれるじゃないか。指が一〇本そろっているうちに答えた方がいいよ」

 デベルロントはウィンの目を見て震え上がった。デベルロントには、冷酷無情な目に映ったのだ。単にやる気がないだけなのだが。


「カルロンジ宮内伯が……」

「え、何?」

「カルロンジ宮内伯がカネを出す、と」

「続けて」

「このカネで傭兵を集めてザロントムを解放しろ、と。そうすればカーリルン公を降伏させられる。代わりに、領内の権益の一部をカルロンジ宮内伯に提供することになっていた」

「ほう。それを証明するものは?」

「覚書が……」

「上出来だ」


 やっと物証を手に入れた。

 だが、まだ納得いかない。この決断力に欠けた気弱な貴族に、ちょいとカネを貸し付けただけでカーリルン公への明確な敵対行為をさせることが可能なのか。勝利を確信させる要素が他にもあるのではないか。

「詳しいことは知らない。後はメンエロントとカルロンジ宮内伯がどうにかする、と」

「メンエロントも傭兵を集めているのか?」

 それについては、「それはないな」とラゲルスが否定した。

「デベルロントだけならともかく、メンエロントまで傭兵を何千も集めてるとなれば噂になる。傭兵だって無限じゃねぇ。限りある傭兵が大量に動けば俺らの耳にも入ってくる」

 となると、メンエロントが握っているのは当初の三〇〇〇程度ということになる。たったの三〇〇〇で何をするというのか。宮廷工作? アルリフィーアのカーリルン公位は揺るがないというのに?

「あ……」

「旦那、どうした?」

「またやられた」

 ウィンが青ざめた。確信があるわけではない。だが最悪の筋書きは見えた。

「スソンリエト伯だ」

「俺ぁ頭が悪いんだ。分かるように言ってくれよ」

「スソンリエト伯がメンエロント領を通ってカーンティーエを突くつもりだ」

「何だって!?」

「ベルウェンが言っていた。スソンリエト伯が領内で動員をかけていたと。スソンリエト伯なら一万は動かせる。デベルロントとトンゾロントは捨て駒だ。この方面に公爵軍を集めて、その隙にカーリルン公を倒すつもりなんだ。継承順だの勅許状だのは関係ない。カーリルン公が死ねばスソンリエト伯の手にカーリルン公位が転がり込む。カーンティーエが……危ない」

「他の諸侯領に兵を入れるのは御法度だろう。スソンリエト伯がカーリルン公領に入ったらお取り潰しじゃねぇのか」

「あくまでもメンエロント軍として行動するのさ。スソンリエト伯領とメンエロント領は隣接している。メンエロント領に入った時点でメンエロント軍ということにする。メンエロント領を自由に動けるようにするために、メンエロント領が戦場になるのを避けていたんだ」

「ってことは……」

「メンエロント軍に偽装したスソンリエト伯軍は、我々がザロントムで戦っている間に北上を開始していたはずだ。ガウェイトス卿の一五〇〇では防ぎ切れない」

「ベントリアが抜かれるとカーンティーエが丸裸じゃねぇですか」

「ニレロティス卿とベルウェンを呼んでくれ。戻るぞ」


 スソンリエト伯の計略は常に先を行っている。彼に追いつけるのか? ウィンは焦燥感を抑えるように手を握り締めた。

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