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居眠り卿と木漏れ日の姫  作者: 中里勇史
カーリルン公領統一戦争

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対南部3郡作戦 その1

 ウィンはアルリフィーア、ベルロント、ニレロティス、ベルフェンらを集めて、カーリルン公領南部3郡の中央を領するトンゾロントを次の標的とすることを提案した。南部3郡を分断するのが狙いである。中央を制圧して南東部と南西部の連絡を絶てば、各個撃破が容易になる。


 机の上に地図を広げ、部隊を表す駒を置いて、軍事に疎いアルリフィーアにも分かるように説明する。

 「戦略としては良いと思うのだが、北部と同じ手は使えまい。3郡が連合すれば兵力はほぼ互角。かなりの損害を覚悟する必要があるのではないか」

 南部の各領主の軍を1つの駒に見立てて、3つを並べて配置した。その正面に公爵軍を示す駒を3つ並べながら、ニレロティスが疑問点を挙げた。反論ではなく、質問の形でウィン案が解決すべき課題をアルリフィーアに説明したのである。

 ベルロントも続く。

 「3郡が別行動を取った場合も面倒ですな。その場合、こちらも兵を3つに分けねばならん」

 地図上に敵と味方の駒を3つずつ置き、1対1で対応させる。

 南北から挟撃される心配がなくなったとはいえ、カーリルン公領の統一にはまだ多くの壁があった。

 「まさにお2人のおっしゃる通り。この状況下で中央をいかに楽に取るかが課題です」とウィンは同意した。

 「まずは全兵力で一気に中央をたたき潰す。この場合、カーリルン公の勢力圏とフロンリオンががら空きになる。フロンリオンに2000ほど残せばフロンリオンは簡単には落とされねぇが、8000の兵が3郡の連合軍に包囲される恐れがある。西と東に2000ずつ張り付けて牽制しつつ、6000の兵で中央を取る、ってのが手堅いところか」

 ベルウェンが駒を使って兵の展開例を一つ一つ示す。アルリフィーアが「おお」と言って感心した。


 「最後の作戦を、もっと楽に片付けよう」

 「あん?」

 「3郡にそれぞれ出頭命令を出して、1500の兵を領地の境界に展開するんだ」

 ウィンの案に、ニレロティスが眉をひそめた。「北部と同じ手を使うというのか。その手口は割れている。居城を固く守るのではないか?」

 「そうしてほしいんですよ。領地の奥深くに閉じこもってもらいましょう」

 顎を手でさすりながら、ふむ、とベルロントが得心したという顔をする。

 「なるほど。北部にやった策であると警戒させるのか。その意図を読まれたとしても、やつらに居城をがら空きにする度胸はあるまい」

 「城への奇襲を防ぎつつ公爵軍にも対応する、となれば3000の兵を割るしかない。より少数の兵で東西を押さえ込める」

 「これで、中央に対して7000使える。3000対7000なら、降伏勧告に応じるかもしれない。東西が領地深くに閉じこもるなら、牽制用の1500の兵を侵攻させてもいい。この際だから横領地を奪還して、そこの小領主をこちらに取り込む、という展開も期待できます」


 これを受けてニレロティスの目が輝いた。

 「デベルロントが動かなければ、デレール川までは安全に押し出せるだろう。前線をここまで南下させれば、南西部をかなり圧迫できる。南東部はベントリアという街を押さえたい。ここが公爵側に付けばメンエロントの北上を大幅に制限できる」

 ウィンの戦略によって、ニレロティスらの本来の能力が発揮されつつあった。

 ニレロティスもベルロントも無能ではない。ウィンの意図をすぐに理解したことが何よりの証拠だ。もしかしたら、彼らも何かの拍子にウィンと同じ戦略を思い付いたかもしれない。だが、3年にわたる閉塞感と先入観で思考の幅が狭まっていた。ウィンは単に3年間の呪縛から自由だったに過ぎない。

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