再会 その2
2人でとりとめもない話をしていると、侍従長が現れた。
「セレイス卿にお客人がお見えです」
「客?」
玄関広間に行くと、ベルウェンが居た。
「あれ、ベルウェン。こんなところで何してるの?」
「てめぇ、言うに事欠いてなんだそれは!」
「えっ? 何? 何で怒ってんの?」
「人がてめぇのこと探して右往左往してる間に、てめぇは美女とのほほんとしてやがって。無事なら連絡ぐらいしろ!」
「いや、いろいろすっかり忘れててね」
「忘れてただと? この野郎」
「や、そういう忘れてたじゃなくて……」
アルリフィーアはベルウェンの剣幕に驚いたようだが、初めて聞く言葉遣いに興味があるようで、真剣に聞いている。彼女には何が刺さるのか、全く予想がつかない。
「まあ、こんなところで立ち話もなんだから、場所を変えよう。あ、私の宮殿じゃないけど」
一同は応接室に移動した。
ベルウェンは、スソンリエト伯に会ってきたことを語った。スソンリエト城を監視していると3騎、10騎と兵が集まってきたという。ベルウェンらが偽監察使として乗り込んだためかと思ったが、それにしては早過ぎる。招集はそれ以前にかけていたはずだ。
「それはいつ頃のことだい?」
「俺らがスソンリエト城を監視してたのは9月1日から4日ってとこだ」
「ふむ」
何やらやたらと肥えた貴族もスソンリエト城に入っていった。これは服装や馬具から考えてそこいらの領主とは格が違う。これも不審だった。
きな臭くなってきたのでベルウェンらはスソンリエト伯領から離脱し、ダルテマイア街道に戻った。相変わらずウィンの手掛かりはつかめていない。何か見落としがある。聞き込みをしながら北上することにした。
ダルテマイア街道は大して往来がないため、目撃する人間自体が少ない。だが、カデトルン街道は主要街道なので人の往来が多い。カデトルン街道を横切る姿を見たものがいるかもしれない。この可能性に賭けてみることにした。いつごろ横断したのかが分かれば、探し方も変わってくる。
手分けして聞き込みを続けると、ついに目撃者が見つかった。
「豪華な馬具を付けた馬なら見たよ。カデトルン街道を西に向かって歩いてたぜ」
「何だって?」
カデトルン街道だって?
カデトルン街道は大きく見れば東西を一直線に結んでいるが、ダルテマイア街道と交差する付近はなぜかやや蛇行しており、ダルテマイア街道を北上しつつカデトルン街道を西に曲がるとすると少し南に戻るような感じになる。直角よりも鋭角に曲がっているのだ。その後、カデトルン街道は北に向かって少しうねっている。どこの馬鹿が作ったのかは知らないが、当時は何か湾曲させなければならない事情があったのかもしれない。何百年も前のことなのでベルウェンが知る由もない。
ともかく、ダルテマイア街道からカデトルン街道に入って西に向かうとすると、かなり意図的に馬を操る必要がある。ウィンは何でまた、帝都に直行せずにカデトルン街道に入ったのか。
「あの居眠り卿め、何考えてやがる」




