表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居眠り卿と木漏れ日の姫  作者: 中里勇史
新たな任務
4/77

大公と大公女 その3

 「セレイス卿に尋ねたいことがあります」

 「な、何なりとお尋ねください、大公女殿下」

 「ナルファスト公はどんなお方ですか?」

 ここでいうナルファスト公とは、ロンセーク伯レーネットのことである。彼はせんだってスハロートの死を公表した後、正式にナルファスト公を継承した。

 「ナルファスト公は知勇に優れたお方です。必ずや英明な君主として名を残すことでしょう」

 だが、アトラミエが聞いているのはこんなことではない気がした。少し考え込んだウィンを、アトラミエは黙って見つめている。

 「彼は道理を重んじ軽輩に驕ることなく、誰とでも親しく接します。そして家族をことのほか大切にするお方です。それだけに、父と弟を亡くし、妹と弟も所在不明とあって、つらい思いをしていらっしゃるでしょう」

 レーネットはまた家族で暮らしたいと言っていた。だが、ウリセファとリルフェットは行方不明のままであり、義母のアトストフェイエが戻ってきただけだという。

 ウィンがナルファストを去ってからについてはレーネットから書簡を受け取っており、ウィンも知っている。レーネットからの書簡は事実だけを淡々とつづったものだった。彼が今どう感じているのかは、書いていなかったので分からない。書いていない、というところが彼の心境を物語っているのではないか。ウィンが帝都に帰還する直前、レーネットがことさら明るく振る舞っていたことを思い出した。

 アトラミエは、ウィンの短い説明と表情から何を得たのだろうか。彼女は首をわずかに傾けて少し考えるそぶりを見せた後、「そう、分かりました。ありがとう」と言って、かすかにほほ笑んでから去っていった。


 アトラミエに遭遇したことは何度かあるが、話し掛けられたことはない。彼女の水色の瞳にウィンなど見えていないのではないか。そんな仮説を立ててみたこともあったが、どうやら見えていたらしい。ひょっとすると、ウィンなど居ないかのように振る舞う多くの大貴族も、実はウィンが見えているのかもしれない。「これは大発見だ」とつぶやいて、わははと笑った。

 それにしても、アトラミエのあの質問の意図はなんだったのだろうか。なぜナルファスト公のことを知りたがったのだろうか。


 それが分かったのは3カ月後だった。

 帝国歴222年1月、ナルファスト公レーネットと大公女アトラミエの婚約が発表された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ